新入社員の入社日が近づくと、社内では受け入れや研修のための準備が忙しくなるもの。新人研修を任された人や、自分の部署に新入社員を迎える予定の人のなかには、これから入社する後輩たちにいったい何から教えたらいいのか、戸惑っている方もいるかもしれません。
それなら、新入社員にはまず「タスク管理」について教えるとよいでしょう。その理由と、おすすめのタスク管理法をご紹介します。
【この記事はこんな方におすすめ】
- 新入社員に、社会人として仕事を円滑に進める方法を教えたい
- 新入社員の育成を効果的に行ないたい
- 漠然とタスク管理はしているが、もっとシンプルで効果的な方法を知りたい
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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最初にタスク管理を教えるメリット
新入社員が部署に配属されたが、何から教えていいのかわからない。まずはマニュアルを読んでもらう? 研修を受けてもらう? いろいろ教えてあげたいけど、自分にも通常業務があって忙しいし……。
このように戸惑っている方におすすめなのが、最初に「タスク管理」を教えることです。タスク管理からOJTを始めると、教える側である上司やメンバーにとって、以下のようなメリットがあります。
- 「仕事には期限がある」ことを理解させやすい
- どの業務から教えればいいか整理できる
- 通常業務に支障が出にくい
- 振り返りや共有がしやすい
簡単にひとつずつ見ていきましょう。
1:「仕事には期限がある」ことを理解させやすい
新入社員の多くは、社会人としての経験がないもの。そんな彼らには、まず仕事における期限の重要性を実感してもらうことが大切です。
よく言われるように、“仕事” と “そうでないもの” を分ける境界線は、「期限」があるかないか。タスク管理を教えれば、仕事の基本を新入社員に理解させることができます。
2:どの業務から教えればいいか整理できる
タスク管理からOJTを始めれば、タスク管理をしながら、OJTで教える内容を整理できます。
新入社員にタスク管理を教えながら、
「これはあとで教えればいい。これはすぐに必要になる知識だから先に教えよう」
「明日はこの取引先に行くから、まずはこの資料を読んでもらおう」
などと教えるべき内容を整理することができます。
3:通常業務に支障が出にくい
教える側にとって新入社員研修で頭が痛い問題のひとつが、研修に時間をとられて通常業務に支障が出てしまうこと。つきっきりで教えていたら、自分のタスクを進められないまま何時間も経ってしまった……なんて経験がある方は少なくないかもしれませんね。
しかし、新入社員にまずタスク管理をマスターさせたうえで、一日のタスクを朝のうちに与えれば、彼らはそれを着実に遂行するように動いてくれます。新入社員たちがタスクに取り組んでいるあいだ、教える側はリソースをとられることなく、通常業務を進めることができるのです。
4:振り返りや共有がしやすい
タスク管理から教えれば、新入社員のタスクを可視化できます。完了したもの・進行中のもの・未着手のもの……とひとめで把握することができるので、一日の終わりにその日の業務を一緒に振り返り、翌日の業務へとつなげることができるでしょう。
また、部署内のメンバーとタスクを共有すると、新入社員ができるようになったこと・まだできないことをチームメンバー全員で把握できます。
「タスクシュート」でタスク管理をする方法
みなさんは、どのようにタスク管理をしているでしょうか。一日のタスクをノートに書き出して終わったものにチェックを入れていく人もいれば、PCでタスク管理したり、自分宛にメールを送ったりしている人もいることでしょう。
タスク管理にはさまざまな方法がありますが、新入社員におすすめすべきタスク管理法は「タスクシュート」というものです。
タスクシュートは、実業家の大橋悦夫氏によって考案された、時間とタスクを同時に管理できるメソッド。そのルールはいたってシンプル。
①1日の初めに今日やることを決める
②1日の終わりにその中で先送りしたものの数を数える
③1分でも手をつけたら「先送り」とはしない
(引用元:jMatsuzaki著, 佐々木正悟著(2024), 『先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術』, 技術評論社.)
それでは、実際に新入社員に教えることを前提としてタスクシュートの方法をご紹介しましょう。
1:一日の初めに今日やることを決める
最初に、「今日やること」を決めます。このステップは、上司やチームメンバーがサポートしましょう。一緒に考えることも大切ですが、まずはやることをある程度決めてあげるとスムーズです。
たとえば、以下のように決めることができるでしょう。
【例】今日やること
- オンライン研修としてビジネスマナーの動画を観る
- 明日訪問する取引先の営業資料に目を通す
- 部署内のマニュアルを読む
最初は、できるだけ少ないタスクから始めるのがおすすめです。
2:タスクを進めたら、ログ(記録)をつける
新入社員に、開始時刻と終了時刻のログ(記録)をつけてもらいましょう。
【例】今日やること
- オンライン研修としてビジネスマナーの動画を観る
→開始時刻10:00、終了時刻12:00 - 明日訪問する取引先の営業資料に目を通す
→開始時刻13:00、終了時刻 15:00 - 部署内のマニュアルを読む
→開始時刻15:00、終了時刻 17:00
時間に関しては厳密でなくてもかまいません。記録をし忘れた場合は、あとで振り返っておおまかな開始時刻と終了時刻を記入させましょう。タスクに着手するたび、実績を記録します。
17時までの設定で3つのタスクを組んでいましたが、「部署内のマニュアルを読む」という作業は終わりませんでした。では、終わらなかったタスクはどうすればいいのでしょうか?
3:一日の終わりに「先送り」してしまったものを数える
一日の終わりに、「先送り」となったタスクの数を数えましょう。タスクシュートの考え方のひとつがこちらです。
1分でも着手したら「先送り」とはしない
(引用元:同上)
つまり、1分でも行なえば、“タスクを先送りにはしなかった” と判定するということですね。新入社員には、“先送りしないことの重要性” と “1分でも実施したらログに記録する” ことを伝えましょう。
今回の例であれば、「部署内のマニュアルを読む」というタスクを完了することはできませんでしたが、着手したこととして明確に記録します。
しかし、たった1分ではタスクは終わらないですよね。そこで、次のルーチンという考え方が役立ちます。
4:明日以降も繰り返し実行するものは「ルーチン」として扱う
タスクシュートでは、「先送りはしなかったけれど、ログを記録できたもの」のうち、明日以降も継続的に実行するものを「ルーチン」として扱います。
終わらなかったタスクは、周期と時間帯を決め、明日以降の「今日やること」にルーチンとして組み込むのです。
ここまでの説明で「ルーチンって最初からタスクに入れておけばいいんじゃないの?」と思った方もいるのではないでしょうか。そこが、一般的なタスク管理とタスクシュートの考え方と違う点です。
タスクシュートでは、前日に記録したログからルーチンを作成して、明日のタスクプランに組み込んでいきます。この、ログからルーチンを作成するメリットについて、タスクシュートについて詳しく解説している『先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術』では、以下のように述べられています。
- 一息には終わらせられないプロジェクトに少しずつ取り組むことが可能
- 管理の負担と着手する負荷の両方を抑えられる
(引用元:同上)
先の例で言えば、新入社員が膨大なマニュアルを読み込むには時間がかかり、1日ではとうてい終わりません。このように大きなプロジェクトに少しずつ取り組む際に、この方法は非常に有効なのです。
また、ルーチンが増えていけば、一日のプランが自動的に作成できるようになります。最初は、その日のタスクについてつど指示を受ける必要があった新入社員も、自分で一日のプランを作成できるようになります。しだいに、自分自身で仕事の管理をできるようになるでしょう。
上司や先輩という教える側として大切なのは、定点的に新入社員のタスク状況を確認し、適宜調整してあげることです。しばらくは、日報や社内チャットでタスクを共有するよう、彼らに促すといいでしょう。
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この記事では、 “新入社員に最初に教えること” として「タスク管理」を取り上げました。タスクシュートという方法をマスターできれば、新入社員が自分でタスクを管理できるようになるはずですよ。
もちろん、新入社員だけではなく、多くのビジネスパーソンにとっても有効なメソッドです。ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
jMatsuzaki著, 佐々木正悟著(2024), 『先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術』, 技術評論社.