新人研修と管理職研修だけでは会社全体の生産性は上がらない? いま必要なのは○○研修

話を聞くビジネスパーソン

みなさんが勤めている企業では、どのような研修が行なわれていますか?

新入社員研修はあるが、それ以外の研修は行なわれていない。全マネージャーに、管理職研修が必修で課されている――など、企業によってさまざまでしょう。

このように研修は “階層別” に行なわれることが多くあります。種類は大きく分けて4つ。じつはこの階層別研修には、ある問題点が。

本記事では、階層別研修の問題点と解消のヒントを解説していきます。

  • 自社の人材開発予算が適正なのかわからない
  • 新入社員向け研修に多くの予算を割いているので、その他の社員に予算を回すことができない
  • 社員全体の生産性を研修によって高めたいが、どんな研修を実施すればいいかわからない

などとお悩みの経営層の方や、研修を導入する人事担当者、部門リーダーなど、幅広い方におすすめの記事となっております。当てはまる方は、ぜひ読み進めてみてください。

(参考)

小林祐児(2023),『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』, 光文社.
小林祐児(2024),『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』, 集英社.
産労総合研究所|2023年度 教育研修費用の実態調査
パーソル総合研究所|企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)

階層別研修とは

企業の階層別研修とは、従業員のキャリアステージや職位に応じてカスタマイズされた研修プログラムを指します。主に「新入社員研修」「中堅社員研修」「管理職研修」そして「経営層研修」の4カテゴリーに分けられます。

ひとつずつ見ていきましょう。

新入社員研修

名前のとおり、その企業に入社したての若手を対象に、職場へスムーズになじめるように行なう研修です。企業文化の理解、基本的なビジネスマナーの習得、コミュニケーションスキルの向上などを目的とします。

企業によって実施方法は異なりますが、多くの新入社員を受け入れる企業では、本社や大きな施設で集中的に行なうのが一般的です。コロナ禍以降では、オンラインで新入社員研修を行なうケースも増えてきました。

新入社員研修後は、それぞれの配属先でのOJT研修に移行する企業が多いようです。

中堅社員研修

入社数年から管理職になる手前の社員を対象に実施する、リーダーシップの基礎、チームマネジメント、プロジェクト管理など、より高度なスキルの習得を目的とした研修です。

管理職研修に組み込んでしまうケースもあり、新入社員研修や管理職研修に比べて実施している企業は多くないようです。

管理職研修

これから管理職になる社員、または管理職になった社員を対象に、戦略的思考、リーダーシップ、意思決定、マネジメントなど、チームを率いるためのスキルを強化するために行ないます。受講する社員たちは、ワークショップや企業に合わせたケーススタディを通して、管理職としてのスキルを身につけていきます。

主任・係長クラス向け、課長・部長クラス向けというように、近い階層でまとめて研修をする企業もあるようです。課長研修はあるが係長研修はない、などのように対象とする管理職は企業によってさまざま。

新入社員研修後は数年間社内研修がなく、次はいきなり管理職研修という企業も珍しくありません。

経営層研修

経営層になる候補者、あるいは経営層に着任した社員を対象に行ないます。

企業全体のビジョンの策定、戦略的計画、経営危機管理、イノベーション推進など、企業の長期的な成功に必要なスキルや知識が提供されます。

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階層別研修の問題点

階層別研修は主に4つのカテゴリーに分けられますが、企業の人材開発予算がこの4つに平等に配分されているわけではありません。

パーソル総合研究所の2020年の調査によると、企業の人材開発予算は「新卒入社者」に最も多く当てられています。その比率は34.5%と群を抜いており、次いで「中途入社者」に20.2%、「管理職」に17.1%、「幹部候補層」に11.9%の予算が割り当てられています。(参照:パーソル総合研究所|企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)

この数字からは、新入社員、中途入社者、管理職社員には手厚い研修が行なわれているものの、それ以外の中堅社員には人材開発の予算が十分に割かれていないことが読み取れます。

つまり、新卒入社時・中途入社時の研修が終わると、その後の研修の機会は管理職になるまでない会社が多いのです。管理職 or 非管理職で如実に線引きがされていますね。一般社員には十分な教育が行なわれず、「あとは実務で頑張ってね」と現場任せになっているのでしょう。

パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏によると、実際、企業の人材開発予算が減っていて「教育訓練の対象外」になっている社員が増加しているのだそうです。

(参考:小林祐児(2023),『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』, 光文社.)

階層別研修の問題点解消のヒント

日本企業の階層別研修の問題点を把握できましたね。この問題を解消するための2つの方法をご紹介します。

人材開発予算を見直す

初めに、自社の人材開発予算とその配分を見直しましょう。

人材開発にどの程度の費用をかけ、どのように配分するべきか――これは会社の規模、業種によって異なるため、一概に「これが適正」と言える値はありません。下記の2つのデータを、現在の予算や配分を見直すきっかけにしましょう。

見直し方1.「従業員1人あたりの研修費用」を比較する

産労総合研究所が約3,000社を対象に2023年に実施した調査によると、従業員1人あたりの研修費用の平均は32,412円だったそうです。(参照:産労総合研究所|2023年度 教育研修費用の実態調査

自社の研修費用が適切か知りたい場合は、この産労総合研究所が出しているデータと、自社のデータを比較しましょう。

自社のほうが費用が少ない場合は、もう少しかけてもいいという目安になります。一方、自社のほうが費用が多い場合は、もう少し抑えたほうがいいと考えられるでしょう。

ただし注意点があります。コロナ禍では研修費用が落ち込み、2023年の調査時点で回復傾向にありましたが、従業員1人あたり研修費用の平均はコロナ禍前の数値には戻っていないとのこと。コロナ禍以前の研修費用の動向も調べるとよいでしょう。

見直し方2.「予算配分」を比較する

次は、人材開発予算の一般的な配分割合と、自社の予算配分の割合を比べます。ここで、先ほどご紹介したパーソル総合研究所の調査データをあらためて見てみましょう。

人材開発予算の配分割合

  • 新卒入社者:34.5%
  • 中途入社者:20.2%
  • 管理職:17.1%
  • 幹部候補層:11.9%
  • 高齢社員:6.3%
  • その他:10.0%

(参照:パーソル総合研究所|企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)

パーソル総合研究所の上記のデータと、自社の割合のデータを比較して、自社が費用をかけすぎているところ、または費用を抑えすぎているところを確認してみましょう。

費用をかけすぎている場合は、抑えることを検討してもいいかもしれません。逆に、費用をあまりかけていないところに関しては、必要な研修が十分に行なえていない可能性があります。その部分の予算配分を厚くして、研修の充実化を考えましょう。

たとえば、新入社員研修にかける予算を抑えたいなら、部分的にオンライン研修を取り入れるという方法があります。オンライン研修は、対面での研修に比べ安価に行なうことが可能です。現在の研修方法を見直し、人材開発予算をほかの社員に回すことも検討してみましょう。

非管理職を対象とした研修を実施する

人材開発予算や配分を見直したあとは、非管理職へも研修の門戸を開きましょう。2030年問題」と言われる人材不足問題を抱える時代を前に、いまや非管理職のスキルアップは不可欠。これから労働人口が縮小していく日本では、採用がこれまで以上に難しくなります。職位にかからわらず、いまいる社員のスキルアップをしていく必要があるのです。

では、非管理職の社員に対してどういった研修を実施していけばいいのでしょうか。前出の小林氏は、下記のような領域の研修をすすめています。

ITスキルのようなオペレーションスキルではなく、対人関係やコミュニケーション、部下育成といった領域、つまり「ピープル・マネジメント」の領域

(引用元:小林祐児(2024),『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』, 集英社.)

いま流行りのDXスキルではなく、人間関係の構築法や、コミュニケーションテクニック、部下の育て方についての研修を行なうべきだというのです。なぜでしょうか? 小林氏はこう続けます。

ピープル・マネジメントの問題は「管理職向けの、対人スキル・トレーニング」へと偏っていきます。

(引用元:同上)

一般社員が「ピープル・マネジメントの問題」、つまりコミュニケーションや信頼関係構築のところで問題を抱えてしまうと、管理職の社員たちが部下とのコミュニケーションで頭を悩ませることになるということです。

しかし本来コミュニケーションは、双方向で伝達し合うものです。管理職側だけに研修を受けさせるのでなく、部下である非管理職にも同様の研修を受けさせるべきだと小林氏は伝えています。

たしかに、これは目から鱗の視点ですよね。

管理職も非管理職も同じ前提に立って仕事をすると、円滑に業務を進めることができそうです。

上司と部下

***
本記事では、階層別研修の問題点と解消方法のヒントをご紹介しました。

これまでは新入社員や管理職向けの研修しか実施していなかった場合でも、一般社員向けの研修を行なえば、確実にメリットがあります。

一般社員がコミュニケーションスキルを向上させられるように研修を行なえば、上司部下間の円滑な意思疎通が可能となり、上司が部下をよりスムーズに育成していけるようになるのです。

なかなかそこまで予算がとれない……という場合は、管理職に対して実施しているピープルマネジメント研修の内容を非管理職へも共有することを視野に入れるといいでしょう。自社が実施している階層別研修の問題点を解消し、会社全体の生産性を高めていってくださいね。

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