生産性が低いのは○○できていないから。社員の生産性を上げるための “小さな習慣” とは

マルチタスクで仕事をしている男性

「社員の生産性を高めたいのに、なかなかうまくいかない……」
「仕事が終わらなくて残業ばかりしている。生産性を高めて効率よく働きたい……」

このように、仕事の生産性について悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

日本の一人あたりの労働生産性は、OECD加盟国38カ国中28位(参考:公益財団法人日本生産性本部|労働生産性の国際比較2021)。

社員ひとりひとりが生産性を向上させることは、言い換えると、短い時間で高い成果を挙げられるようになることです。残業の削減や業務負荷の軽減など、働きやすさの向上にも直結します。当然、企業の業績向上にもつながるでしょう。

ではどうすれば、社員ひとりひとりの生産性を高められるのでしょうか? その方法として、今回は「シングル・タスク」に焦点を当ててみましょう。

【この記事はこんな方におすすめ】

  • 毎日なかなか仕事が終わらずに苦労しているビジネスパーソン
  • 社員の残業時間が多く、対策を考えている企業の担当者
  • 会社の生産性をより上げたいと考えている企業の担当者
 

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

「マルチタスク」な現代の仕事

労働生産性が低い理由を考えた際、「長時間労働」や「デジタル化の遅れ」といった外部の要因にばかり目を向けている方は多いかもしれません。しかし、じつは社員個人が「いまの業務に集中できていない」ことも、生産性低下の大きな原因になりえます。

現代の仕事現場には、Eメール、オンライン会議、社内チャット……など、さまざまな連絡ツールが溢れています。リモートで仕事をしていれば頻繁に連絡が届き、出社すれば電話が鳴りほかのメンバーから話しかけられ——と、なかなか自分の仕事に集中できない方は多いのではないでしょうか。

このような環境では、複数の作業を同時に進める「マルチタスク」が効率的だと考える人もいるものです。メールの返信をしながら報告書を書く、会議の準備をしながら電話対応をするなど、当たり前のようにやっている人もいるかもしれません。

ですがじつは、その考えは間違い。コーネル大学のデボラ・ザック氏は「マルチタスク」の能率の悪さについて、こう主張しています。

マルチタスクをこなそうとする試みと能率の悪さには、相関関係がある。(中略)

本来、「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。

(引用元:デボラ・ザック著, 栗原さつき訳(2017),『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』, ダイヤモンド社.)

実際に「複数のタスクを同時進行してみたものの、一日が終わってみれば結局どのタスクも中途半端のまま……」なんて経験がある方もいるのではないでしょうか。それは、気が散ってどの仕事にも集中して取り組めていなかったということなのです。

ザック氏によると、マルチタスクで作業を進めている際、実際には脳のなかでせわしなくタスクを切り替える「タスク・スイッチング」を行なっているに過ぎないのだそうです。つまり、私たちはマルチタスクをしているのではなく、気を散らしつつ「脳のなかでタスクからタスクへとスイッチしていること」を、マルチタスクと勘違いしているということ。

ザック氏は著書のなかで、神経科学者の発言を引きながら「脳は一度に2つ以上のことに集中できない」と述べています。(カギカッコ内引用元:同上)

いろいろなことを「ながら」でこなしている現代の私たちからすると耳が痛い話ですよね。

マルチタスクで作業をしている様子

「シングル・タスク」が生産性を上げる

マルチタスクがかえって生産性を下げることがわかりました。そこで重要なのは「シングル・タスク」で仕事をすること。では、マルチタスクに慣れきった私たちは、どうすればシングル・タスクができるようになるのでしょうか。

ザック氏は、シングル・タスクを下記のように定義しています。

シングル・タスクとは、「『いまここ』にいること」「一度に1つの作業に没頭すること」

(引用元:同上)

つまり、「いまここでできる、この瞬間の作業に没頭すること」が生産性を高める秘訣ということですね。とはいえ、「それができたら苦労しない」と感じる方も多いことでしょう。

そこで「会社単位でできる、シングル・タスクを社員に根づかせる習慣」をご紹介しましょう。

目の前の作業に没頭する力がつく “一日15分の習慣”

弊社、株式会社スタディーハッカーでは、毎日夕方の決まった時間に社員が15分間読書をするという制度を設けています。ルールはいたってシンプル。

「PCを閉じて、15分間黙々と読書する」

これだけです。もちろん私語は厳禁。読む本は、基本的に各々が興味をもっている分野の書籍です。言語学、社会科学、実用書、小説……読んでいる本のジャンルはさまざま。

「たった15分の読書とマルチタスクになんの関係があるんだ」と疑問に思う方も多いことでしょう。もともとは自己研鑽のために導入した制度ではありましたが、制度が浸透するにつれて “マルチタスキングを是正するために効果的な時間” でもあることがわかってきたのです。

入社したての社員にとっては特に、この15分の読書タイムは落ち着かないようで、なかには、ついスマートフォンで時間を確認しているメンバーもいました。しかし、回数を重ねるにつれて、しだいにみなが15分間読書に没頭できるように。つまり、「15分の読書に没頭できるようになる」ことを通じて、「目の前のひとつの業務に没頭できる力」を身につけたということです。

入社試験で課されることが多い、「クレペリンテスト」と呼ばれるルーティング作業を測るテスト(一列に並ぶ一桁の数字を足し算していくテスト)では、集中力のピークは7分。その後は徐々に落ちていって、15分ほどで集中力が切れる傾向にあるそうです。(参照:朝日新聞EduA|勉強の集中力は“15分”が限界? 脳科学の専門家に聞く「集中」のコツ

人の集中力が続く限界は、たった15分。その限界まで集中できる力をつけるのに、“15分間の読書タイム” は有効なひとつの手段ではないでしょうか。15分間の読書に没頭できるようになれば、目の前のひとつの仕事に打ち込む力がついたと言えるはずです。

なお、弊社の読書タイムは、業務時間内に実施しています。ポイントは、任意ではなく強制的に、全員がすべての通知をOFFにして読書に没頭すること。15分という短い時間ですが、月にすると5時間、年間では60時間にもなります。

「勤務時間中、60時間分も読書をさせるなんて」と思う方もいるかもしれませんが、毎日7〜8時間フルスロットルで働いている人はまれなはず。どこかにふらっといなくなってしまったり、タバコ休憩に行ってしまったり……と、15分程度は非生産的な過ごし方をしている方も多いのではないでしょうか。

であれば、業務時間内に15分間だけ強制的にブロックして、目の前の作業に没頭する力——すなわち「シングル・タスク」のための集中力を養うほうが、会社としてもメリットが大きいはずです。

15分の読書という小さな習慣ではありますが、これによって弊社の社員からは「仕事にも集中しやすくなった」「生産性が上がった」という声があがっています。また、もともと残業が少ない会社ではありますが、おおむね定時で仕事を終えている社員が多く、どんなに多くとも30分の残業ですんでいるのも読書タイムの成果だと言えるでしょう。

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この記事では、社員の生産性を上げるための「シングル・タスク」について紹介しました。もちろん個人の作業でもシングル・タスクは有効です。

筆者もシングル・タスクを心がけるようになってから仕事を進めるスピードが速くなり、一日にこなせるタスクの量が劇的に増えました。ぜひみなさんも取り入れてみてくださいね。

(参考)

公益財団法人日本生産性本部|労働生産性の国際比較2021
デボラ・ザック著, 栗原さつき訳(2017),『SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる』, ダイヤモンド社.
朝日新聞EduA|勉強の集中力は“15分”が限界? 脳科学の専門家に聞く「集中」のコツ

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