レベルアップするために、読書をしたり資格の勉強をしたりと、毎日努力しているビジネスパーソンは多いでしょう。でも、成長したい方向性がしっかりと定まっている人ばかりではないはず。あなたにとって、どんな状態になれば「成長」したと言えますか? どんな取り組みをすれば、確実に「成長」することができるのでしょう?
それを知るために、“ビリギャル先生” で有名な教育者で起業家の坪田信貴氏が提案する、「成長の9段階」について学びましょう。
ビジネスパーソンの「成長の9段階」
成長の本質とは、昨日よりもよい自分になることだ――そう語る坪田氏は、ビジネスパーソンが成長するにはまず、自分の現時点での成長度合いを知ることが大切だと言います。
あなたは、上司や会社から指示された仕事にどう対応していますか? 以下に、坪田氏が説明する「ビジネスパーソンの成長の9段階」を図にしたものを示します。いまの自分はどの段階に当てはまるか、確認してみましょう。
ビジネスパーソンは成長するにつれ、より大きなレベルで仕事をしていくことになるもの。当然、求められるスキルも多様かつ高度になります。成長の9段階をひとつずつ登っていくために必要なことは、レベルに応じたスキルを得るために学び続けることだ、と坪田氏は述べます。
では、私たちはどのようなことを学べばよいのでしょう。日々仕事に邁進し、経験を積んできた読者のみなさんの多くは、上の図の「中堅」に位置していることと思います。ここからは、中堅ビジネスパーソンが学び、成長していくための方法をふたつ紹介します。
1.「精神的な成長」を遂げる
人財教育を手がけるキャリア・ポートレート・コンサルティング代表の村山昇氏は、成長とは「長けた仕事」を超え「豊かな仕事」ができるようになることだ、と述べます。
長けた仕事とは、上手にこなせる仕事のこと。豊かな仕事とは、その人でなければできない仕事のことです。たとえば、営業の仕事の場合、研修で教わったスクリプトをこなし、先輩の指示通りにちゃんと顧客と取引できるのであれば、長けた仕事ができている状態です。スクリプトにアレンジを加えたり、自分なりの提案で新しい取引に持ち込めたりするようになると、豊かな仕事ができるようになったと言えます。
ここで先ほどの図を思い出してください。新人・若手のうち最も上のレベルは、仕事を指示通りにこなせるようになった状態。ちょうど、村山氏の言う長けた仕事ができるようになった段階です。そして、仕事をひとりでやりきるだけでなく少しずつアレンジを加えていくのが、中堅のレベルです。つまり、新人と中堅の境目というのは、長けた仕事から豊かな仕事へ移行しつつある段階だと言えます。
村山氏によれば、新人・若手が長けた仕事をできるようになるには、研修や初歩的な業務などを通じ次第に処理がうまくなっていくという「技術的な成長」が必要です。そして、中堅が豊かな仕事をできるようになるには「精神的な成長」が求められるそう。
精神的な成長は、「自分の働きかけで仕事をよりよくしよう」といったような、仕事に対する自分なりの「意味」を見いだすことで達成できるのだとか。そしてそれは、「できるようになりたいことがうまくできない」という苦しい状況のなかでこそ育まれると言います。
営業の例を続けましょう。既存の商品で満足している顧客に新商品を導入してもらいたいとき。新商品への乗り換えに難色を示す先方を相手にこれまで通りの商談をしても、契約にはこぎつけられません。そんななか、先方に徹底的にヒアリングしたり自身で新たな論法を考えたりしてめでたく契約に至ることができたら、それは間違いなく仕事の喜びになるはずですよね。村山氏によると、苦境を乗り越えるなかで「この仕事をやった意味があった!」という喜びや自信を得ることが、精神的な成長につながるのだそう。
就職して数年経ち、もはや新人・若手とは呼ばれないビジネスパーソンのなかには、ひととおりのことはできるようになったからと満足している人もいるかもしれません。ですが、自分だけにしかできないことをすることで、仕事をよりよいものにしようとする姿勢は重要です。あなたは仕事にどんな意味を見いだしますか? ぜひ考えてみてください。
2.「巻き込み力」を高める
先の図では、中堅のうち下のレベルの人はアイデアを考えつくだけで実行まではできず、上のレベルになると周囲の賛同を得てアイデアを実行できるようになります。つまり、中堅のビジネスパーソンには、「周囲の人とともにアイデアを実行できる力」すなわち「巻き込み力」が必要だとわかります。
リクルートマネジメントスクールによれば、中堅社員=次世代のリーダー。中堅は、リーダーとしての力を身につけていく段階にあるのです。
企業研修を行なうリ・カレント株式会社の解説に基づくと、上司、同僚、後輩、他部署など周囲を巻き込みながら業務を遂行するには、第一に「主体性」が求められるそうです。主体性とは、当事者意識をもち、仕事を “自分事” 化すること。そうでなければ「自分はこう考える、だからこうしたい」という意思を伝えることはできません。
次に、リ・カレント社が挙げる必要ないくつかのスキルのうち、「関係性構築力」を紹介しましょう。これは、何を言っても否定せず相手と尊敬し合える共感型のコミュニケーションを行なう能力。ここでは非言語のコミュニケーションが重要になるそうです。メラビアンの法則によれば、人が話をするとき相手に与える影響のうち、最も大きな割合を占めるのが、ジェスチャーやアイコンタクトといった非言語の視覚情報。温かな言葉で伝えたつもりでも、態度や表情が冷たいと、雰囲気が悪くなりチームの実行力が下がるのだとか。
たとえば、若者向けに売り出していた商品を、会社の方針でミドル世代向けに新展開することになったとします。中堅として巻き込み力を発揮するのにまず必要なのは「主体性」。会社の方針だから、ではなく当事者意識をもって、「私は、ミドル世代の○○というニーズにより合致させるために△△という改良を加えたいと考えます」といった具合に意思を示します。そして、議論を重ねるなかでたとえ周囲が反対意見を述べた場合でも、突っぱねない姿勢で話し合うといいでしょう。
このように、中堅が学ぶべきことは、いかにして巻き込み力を身につけるかということ。それによりあなたは、リーダーへと成長していくはずです。
レベルが頭打ちになったと感じたら
成長の段階を上がろうとするなかで、できそうもないことを早々に諦めたり、現状で満足してこれ以上は求めなくていいやと考えたりすることもあるでしょう。しかし、そんな状態に陥ると成長はそこで終わってしまうと坪田氏は言います。
自分より優秀な人と比べて「もう自分はこのへんでいい」と考えることを、坪田氏は「トラウマ」と呼びます。このトラウマを解消するために坪田氏がやるべきだと提案するのは、新しい成功体験を味わうことです。
大学受験に失敗した経験があるなら、資格試験に合格することで成功体験を手にするのもあり。組織のITの弱さを感じるのであれば、プログラミングを独学して会社に貢献するのもありだ、と坪田氏。成功体験を重ねることで、あなたの成長意欲は上向いていくのです。
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成長したいと思っても、自分がいまどのレベルにあるのかがわからなければ、何を目指して成長すればいいかわからないものです。今回の記事で、みなさんのそうした疑問を少しでも解決し、成長の後押しができたら嬉しいです。
(参考)
THE21オンライン|日本人の9割が「バカ」を隠している
GLOBIS 知見録|「成長とは何か」を自分の言葉で定義せよ
GLOBIS 知見録|技術的成長と精神的成長の相互作用
リクルートマネジメントスクール|中堅社員研修
リ・カレント|「他人事な中堅社員」を「巻き込み型リーダー」に変える! ~組織の未来を切り拓く巻き込み型リーダーシップ育成の4つの力~
【ライタープロフィール】
渡部泰弘
大阪桐蔭高校出身。テンプル大学で経済学を専攻。外出時は常にPodcastとradikoを愛用するヘビーリスナー。