たくさんの仕事に振り回されてミスも多く、上司に叱られてばかり……。デキる先輩にいつも助けてもらっていて申し訳ない……。そんな状況に悩むのは、段取りの悪さに原因があるかもしれません。
スマートに業務をこなしたいと思うものの、具体的に何をしたらいいのかわからない人もきっといるでしょう。そこで今回は、仕事の段取りをよくする「ほんのちょっとの工夫」を4つご紹介します。
【1】いつやるかを具体的に伝える
上司から仕事を頼まれたとき、あなたがもし反射的に「すぐやります!」と答えているなら、それは段取りが悪い証拠かも。「2日後にやります」のように具体的な時間を答えるほうが、仕事の段取りはずっとよくなります。
上記のように説くのは、企業研修などを提供する株式会社ヴィタミンM代表取締役で『「段取りが良い人」と「段取りが悪い人」の習慣』著者の鈴木真理子氏。「いつやるのか」を伝えるべき理由は、スケジュールを自ら把握し、上司にも認識してもらうのに必要だからです。
そもそも、段取りとは「物事を行なう順序や手順。また、その準備」のこと(『デジタル大辞泉』より)。仕事の場面で言えば「資料をつくるためにリサーチをして、Wordにまとめて……」のように完了までの筋道を立てたり、「午後からは取引先を訪問して会議に出席するから、午前中は膨大なメールへの返信よりも資料作成に時間を費やそう」のように優先順位を考えたりといった感じです。
頼まれた仕事を「すぐやります」と言うのは、そうした段取りを省いてしまっているということ。準備や検討をしなかったせいで、期日に間に合わなくなるといったトラブルにつながりかねません。また、上司に「頼んだ仕事はどうなっているの?」という不安を抱かせてしまう可能性も大。
だからこそ、自分がすでに抱えている仕事の状況を考えたうえで、たとえば「2日後までにやります」や「18時までにやります」のように、具体的な時間を添えることが大切です。こうすれば上司は、期限が来るまで余計な心配をせずにすみますし、状況次第では「それならほかの人に頼もう」と方針を変える判断もできる――そう鈴木氏は言います。
段取りをよくするには、安易に「すぐやる宣言」をせず、堅実に見通しを立てることが大切なのです。
【2】中間報告を挟む
上司から指示された仕事に取り組むなか、「作業全体をひととおり終えてから」上司に報告する、という人は多いでしょう。ですが、途中段階から報告を徹底することで、もっと段取りをよくすることができます。鈴木氏いわく、中間報告を行なうと、時間や労力のロスを抑えられるそうです。
たとえば資料作成を頼まれた際、100%完成させてから上司に確認すると「この情報を入れてほしかったし、方向性も違う」と言われ、最初からやり直しになることも。そうなると、最初の資料をつくった時間と労力が無駄になってしまいます。
一方で、方向性を考えた段階で一度上司に確認してもらえば、情報が足りなかったとしてもすぐに修正できるはず。結果的に手戻りが少なくなるのです。
コミュニケーション研修などを行なう株式会社ヒューマンテック代表取締役の濱田秀彦氏によれば、中間報告のタイミングとして、次の3つを意識するとよいそうです。
- 状況が変化したとき
例:営業先の担当者が変わったとき - 長期的な仕事に取り組むなかで、小さな区切りがついたとき
例:半年後に開催予定のイベントへ招くゲストが決まったとき - 終了のめどがついたとき
例:翌日にはデザインが完成しそうだとわかったとき
3つめの「終了のめどがついたとき」は、完了時の報告と似ているようで異なります。濱田氏いわく、上司へ終了のめどを事前に伝えておけば、確認や他部署との調整など、上司自身の段取りも立てやすくなるとのこと。チームや職場全体の仕事をスムーズに回すという意味でも、中間報告は重宝されるのです。
【3】タスクをほかの人へすばやく回す
「くまモン」など数多くのプロジェクトを手がけるクリエイティブディレクターの水野学氏は、仕事を段取りよく進める方法のひとつに、「タスクを自分のところで止めない」ことを挙げます。なぜなら、頭のなかに空白をつくることができるから。思考に余裕をもつことが、新しいアイデアを生み続けるには不可欠なのだそう。
大きな仕事を抱えて忙しい人ほど、毎日次々とタスクが発生するもの。そんなタスクを、「これもやらなきゃ。あれは明日やろう……」と自分のところでため込んでいては、ストレスがたまるうえ、いつまでも仕事が終わらなくなると水野氏。
そうではなく、たとえばクライアントに確認すべきことが出てきたら、「明日確認しよう」としないで、すぐに連絡をとる。忙しいときに上司から仕事を任されたら、「どうしよう……」と途方に暮れていないで、いさぎよく同僚に手伝ってもらう。
このように、タスクを抱え込まず、ほかの人へすばやく回すと、どんどん仕事は早くなります。自分のキャパシティに余裕が生まれ、大事な事柄についてじっくり考えることも可能に。結果的に、仕事の質を高めていけるのだと、水野氏は言います。
とはいえ、仕事を別の人に回すときの “伝え方” には注意しましょう。『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』著者の石川和男氏は、タスクをほかの人へ任せるときのポイントを3つ紹介しています。
- 具体的な期限を伝える
例:「4月10日の10時までにお願いできますか?」 - 優先順位を伝える
例:「外回りのあとでかまわないので」 - 途中経過を聞く
例:「このあいだの件、進捗いかがでしょうか?」
上記のポイントを押さえれば、相手は手探りで作業せずにすみ、段取りよく仕事を進められると石川氏。お願いするに至った経緯を伝えたり、途中経過を聞く際にお礼を言ったりすると、相手はより気持ちよく引き受けてくれそうですね。スマートに仕事を振って、段取りのよさをアップさせましょう。
【4】机の上を片づける
あなたの机の上は、たくさんの書類などが置かれて雑然としていませんか? もし当てはまるなら、段取りのいい人になるために、ぜひ片づけをしましょう。
ベストセラー『一流の育て方』『最強の働き方』著者で投資家のムーギー・キム氏は、机の上がきれいな人は仕事が早い傾向にあると述べています。その理由はふたつ。
ひとつめは、時間を無駄にロスしないからです。机の上が整理されていると、必要なものをすぐに取り出せますよね。すると「あの資料はどこだったっけ?」と探す無駄な時間がなくなり、タスクを次々と進められるのです。仕事に必要なものをいつでもすぐ取り出せるようにしておくことは、立派な段取りと言えます。
ふたつめの理由は、机と同時に情報も整理できるためです。キム氏は、デスクがきれいな人は頭のなかも整頓されていると述べます。たとえば「明日提出の企画書はすぐ手に取れる場所へ、来週使う会議資料はファイルにしまって引き出しへ」のように、片づけと仕事の情報整理が同時にできているのです。
さらにこれはデスクに限らず、カバンのなかやパソコンのデータにも共通しているとキム氏。使い終わった資料をカバンに入れたままにしたり、パソコンでファイルを無秩序に保存したりするのをやめて整理すれば、「これってなんの資料だっけ?」「締め切りはいつだったっけ?」といちいち悩むことなく、仕事をすばやくこなしていけるそう。
キム氏は、「整理整頓する力」は仕事能力のひとつだと断言しています。身のまわりを片づけて、段取りをよくしていきましょう。
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仕事の段取りは、簡単な取り組みにより改善できます。思うように業務を進められなくて悩んでいる方は、ぜひ今日から挑戦してみてください。
(参考)
STUDY HACKER|仕事の成果を下げる「段取りが悪い人の口癖」4選。言いがちなものがあったら要注意
goo辞書|段取り(だんどり) の意味
マネー現代|評価が急上昇する…上司から高評価の人がやっている「報連相」の新ルール
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【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。