仕事ができる人になるためにぜひ身につけておきたいのが「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」です。
株式会社イー・キュー・ジャパン設立者でEQに詳しい高山直氏は、「EQは人のOSである」と述べています。EQは人というデバイスを動かす重要能力だということ。どんなに優れたアプリ(=知識や能力)をもっていても、OSが壊れていたら宝の持ち腐れなのです。(参考およびカギカッコ内引用元:高山直(2016),『EQ「感じる力」の磨き方―自分を変え、人生の質を高める』, 東洋経済新報社.)
つまり、ただ頭がいいだけでは、仕事ができる人になるのは不可能なわけです。ビジネスパーソンとして成功するため、「EQとは何か」「EQが高い人にはどんな特徴があるのか」を本記事で学び、日々の仕事に取り入れていきましょう。
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。
- EQとは?
- EQが高い人の特徴1. 失敗を受け止められる
- EQが高い人の特徴2. 寛容である
- EQが高い人の特徴3.「人間通」で関係構築がうまい
- EQが高い人の特徴4.「感情をつくる」能力がある
- EQが高い人の特徴5. 決断力がある
高山直(2016),『EQ「感じる力」の磨き方―自分を変え、人生の質を高める』, 東洋経済新報社.
リクナビNEXTジャーナル|EQとは?ビジネスで注目される理由と高める方法を解説
@DIME|人生も仕事も充実!感情知能「EQ」が高い人に共通する特徴
上村光典, 松下信武(2018),『EQコーチングのスキル』, エンパワーリング.
ログミーBiz|「判断」はIQ、「決断」はEQ EQ理論の第一人者が語る、意思決定と判断の違い
EQとは?
EQとは、一般的に “心の知能指数” と訳される概念。よく知られているIQ=“知能指数” の心バージョンとお考えください。
では、そんな心の知能指数=EQがなぜ、仕事ができる人になるために重要なのでしょうか。それは、EQが高ければ、自分や他者の心の動きについて深く理解し、自分の感情をうまくコントロールできるから。すると、職場の対人関係において適切な振る舞いを選ぶことができ、結果的に仕事で成功を収められる可能性も高くなるのです。(参考:前出の『EQ「感じる力」の磨き方』)
高山氏は次のように解説しています。
EQは、感情と思考を統合する働きがあります。その働きをうまく使えば、人生の選択肢も増え、あらゆる可能性が広がっていきます。(中略)感情をうまく使う能力であるEQは、人生の質を決めるといっても過言ではありません。
(引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
また、株式会社グロースウェル代表取締役でEQカウンセラーの大芝義信氏は、EQとは「自分の感情を適切にコントロールし、とるべき行動のために自分を動かす力」であるとしたうえで、EQを下記の3段階に分類しています。
- 感情を「知る」
→「自分や自分以外人の感情を知って、なぜその感情が発生しているのかを自覚」する - 感情を「選ぶ」
→「自分の感情を認知して適切に判断し、より良い行動、やろうと思うことを意図的に選択」する - 感情を「活かす」
→「選択した行動を活かし、目的意識を持って次につながる関係を築く」
(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|EQとは?ビジネスで注目される理由と高める方法を解説)
EQが高い人は、この「知る」→「選ぶ」→「活かす」の流れで自分の感情を管理し、活かせるから、仕事や人間関係などがうまくいきやすいのです。
たとえば、同僚から急に声をかけられて思わずイライラしたとしたら、まずは「どうしてイライラしたのだろう」と考えます。仕事をさえぎられたから? ほかに考えたいことがあったから? という具合に自分の感情を知るのです。
次に、イライラしながら同僚と会話を続けるのか、正直に「相談事であればあとにしてほしい」と伝えるのか、適切だと思う行動を選びます。もし仕事をさえぎられたくなかったのなら後者を選び、同僚に「○分後には終わるから」と言う――といった具合です。
そうして選んだ行動を活かすとしたら、「デスクワーク中の相談事には応じられないこともあるので、あらかじめご了承を」と伝えておくことが考えられます。そうすれば、この先自分も同僚も気持ちよくコミュニケーションをとりやすくなるはず。
では、EQが高い人になるには、具体的にどのような特徴を備えたらいいのでしょうか。EQの専門家たちが挙げる、EQが高い人の特徴のうち5つをご紹介します。いまのあなたには当てはまっているか、これから身につけたいのはどれか、考えながら読み進めてみてください。
EQが高い人の特徴1. 失敗を受け止められる
大芝氏は、EQが高い人の特徴として「失敗を冷静に受け止めることができる」点を挙げています。「失敗しても感情的になったり動揺したり、いつまでもくよくよして思い悩んだりすること」なく、冷静に「次に活かす行動を取る」のだそう。(カギカッコ内引用元:@DIME|人生も仕事も充実!感情知能「EQ」が高い人に共通する特徴)
たとえば、
- 不測の事態が起きても動じず、次に同じことが起きたときのために対策を考えられる人
- 仕事でミスをしても落ち込みすぎることなく、ミスをしないためにはどうすればいいか前向きに考えられる人
そんな人はEQが高いと考えられます。
EQが高い人の特徴2. 寛容である
大芝氏は、「寛容」さもEQが高い人の特徴と述べています。彼らは「自己認識能力が高」く、「自分の価値観とは異なる意見に対しても偏見をもたない」、「相手を受け入れながら、自分の考えを伝えることが可能」なのだそう。(カギカッコ内引用元:同上)
たとえば、
こんな寛容な態度をもって他者に接すれば、あなたへの信頼や人望は厚くなるでしょう。
EQが高い人の特徴3.「人間通」で関係構築がうまい
コミュニケーションなどをテーマに講演・研修活動を行なう上村光典氏によると、EQが高い人は「人間通」であるとのこと。
あの人ならこう考えるだろう。きっとこう動くだろう――というように他者の感情や行動パターンを推測し、ひいては組織全体の動向について敏感に予測する力に長けているというのです。
また同じく上村氏によれば、「EQが発達している人」は「大勢の人たちとうまく人間関係をつく」るのが得意なのだそう。
(カギカッコ内引用元:上村光典, 松下信武(2018),『EQコーチングのスキル』, エンパワーリング.)
たとえば、
- いつも気が利いて、一歩先回りして仕事を進める
- 場の空気を読むのが得意でうまく立ち回り、社内で自分のポジションを確立している
- 取引先や他部署の人などとも初対面ですぐに打ち解けられる
そんな人は高いEQをもっていると言えそうです。
EQが高い人の特徴4.「感情をつくる」能力がある
感情を “コントロール” するとはいえ、感情をただ抑制することばかりが大切なのではありません。
前出の高山氏によれば、「求められる場面で、求められる行動をするために必要な感情をつく」る能力も、EQが高い人がもつ特徴のひとつ。(カギカッコ内引用元:前出の『EQ「感じる力」の磨き方』))
- 厳しく抗議すべき場面だから、ビシッと怒りの感情を出そう。
- 部下がノルマを達成したので、大喜びでほめよう。
- 帰宅したのでゆっくり休みたい。リラックスモードになろう。
こんな具合に、EQが高い人はあたかも役者のように自分の感情を自在にコントロールできるのです。
EQが高い人の特徴5. 決断力がある
高山氏は、物事の「決断」にはEQが関わるとも述べています。
髙山:僕は、判断とは「成功確率の高いほうに舵を切ること」だと思っています。「メリット・デメリット・分析・リスク」を全部出して、「こっちのほうがいいね」って成功確率の高いほうを選ぶこと。これが判断。
よく「決断」という言葉も使われると思うんですけど、「決断はEQ」なんですよ。覚悟。これは「退路を断ち切る」という意味ですからね。
(カギカッコ内および枠内引用元:ログミーBiz|「判断」はIQ、「決断」はEQ EQ理論の第一人者が語る、意思決定と判断の違い)
このように、物事を合理的に考えた「判断」はIQの仕事。しかし、IQによる判断を行動に移すための「決断」には、感情が必要です。自分の感情を理解・管理できる高いEQをもっていてこそ、決断に踏みきれるのです。
- プロジェクトリーダーをやってみないかと打診されたけれど、自信がない……。でも引き受けてみようかな。
- 温めていた企画を提案してみるか迷う……。よし、思いきって提案してみよう!
そんな決断ができるかどうかは、あなたのEQの高さにかかっているのかもしれません。
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仕事や人生のあらゆる場面で問われる「EQ」。今回の記事を参考に、EQの高い人の振る舞い方を理解し、ご自分のEQを磨いてみてはいかがでしょうか?