精神的なストレスは、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。仕事にストレスはつきものです。自分で予防・対処できるよう、ストレスの癒し方を知っておきましょう。精神疲労度チェックと、専門家が教える「癒しの戦略」を紹介します。
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ストレスによる労働力の損失は大きい
『産業医学ジャーナル』に掲載された1999年の論文によって、心の健康は仕事の質や生産性、労働コスト(労働に必要な経費)などと関係していることが明らかになりました。仕事上のストレスによる労働力の損失は、全労働コストの10~20%以上に達するのだとか。
皆さんはストレスを溜めていませんか? ストレスに関するアメリカの第一人者、ジョージア・ウィトキン(Georgia Witkin)博士によると、精神的にも肉体的にも一息つくことができず、自然に立ち直るための時間・エネルギーが残っていないように感じるのであれば、精神的な疲れがだいぶ溜まっているとのことです。あなたは当てはまっていないでしょうか。
精神疲労度チェック
【ウィトキン博士の精神疲労度チェック】
ウィトキン博士が「Psychology Today」で紹介している、精神疲労度チェックのための「8つの質問」を以下に挙げました。自分に当てはまるかどうか確認してみましょう。
- 以前は笑顔になれたような状況でも笑えない。
- 感覚が鈍り、おいしいと感じず、音楽に感動できず、マッサージが心地よくない。
- 寝つけない、眠り続ける、眠ることしか興味がないなど、睡眠に問題を抱えている。
- 人との交流が難しい。友人や家族と過ごしていても孤立していると感じる。 彼らの言葉に注意を払うことに苦労する。
- いつもビクビクしていて、声・騒音・動きなどに驚きやすい。
- 以前よりずっとイライラしている。特にインターネットや電話をしているとき。
- 不安レベルが以前より高く、人混みや交通渋滞では閉所恐怖症の感じがある。
- 特に映画や悲しいニュース、感傷的な物語を見ているとき、ハッピーエンドの番組でさえも、すぐ泣いてしまう。
【働く人用の疲労蓄積度セルフチェック】
厚生労働省が提供する、働く人専用の「疲労蓄積度セルフチェック」もあります。イライラや不安、睡眠や体調、集中力やモチベーション、仕事の状況などから、医学研究の結果などに基づいて疲労蓄積度を測定します。
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(厚生労働省)働く人の疲労蓄積度セルフチェック ――――――――――――――――――――――――
疲労の蓄積が見られれば、勤務状況の改善などについてアドバイスしてくれます。ただし、プライベートが原因の場合もあるので、まずは睡眠や休養を見直すことも大切とのことです。 よろしければ、チェックしてみてください。
次に、ウィトキン博士が教える「癒しの戦略」 を紹介していきます。
癒しの戦略
上で紹介したウィトキン博士の精神疲労度チェックに該当するのであれば、精神的に疲れきっているはず。当てはまった人は「感情的なエネルギーを節約するべき」だとウィトキン博士は説いています。自分をコントロールする感覚を取り戻すには、以下で挙げる4つの精神的な癒しの戦略が必要とのこと。
【癒しの戦略1】自分自身への期待値を下げる
「自分はもっとできる」と思い込んで頑張りすぎてはいませんか? これまで怠けていたならともかく、精神的に疲れている状態なのですから、「もっともっと頑張れる」と自分を追い込むばかりでは状況を悪くするだけです。
自分自身への期待値を下げる(underwhelm yourself )なんて、残酷だと思うかもしれません。しかしウィトキン博士は、自分自身に期待しすぎるのは決して立派なことではないと説明します。
家族や恋人、友人など、あなたの「愛する人のリスト」に自身も加えて、彼らと同じくらい自分自身も大事にしましょう。まずは自分を大事にしなければ、自分自身をコントロールする感覚は取り戻せません。
【癒しの戦略2】自分自身に休憩を与える
アメリカの医師で心臓専門医のハーバート・ベンソン(Herbert Benson)医学博士は、1日わずか20分の休息時間(downtime:活動停止時間)を設ければ、感情エネルギーの枯渇による症状を約50%減らせると強調しているそうです。
20分間まとめて休む必要はありません。たとえば朝5分間だけ本や雑誌を読み、仕事の合間に手を止めて5分間ボーっとしたり窓の外を眺めたり、昼食後に10分間だけ外に出て散歩したりすれば、downtimeの合計は20分になります。
瞑想や音楽鑑賞をしたり、雲を眺めたりして20分を過ごすのもよいですね。もちろん、20分以上休息をとっても全く問題ありません。
休息時間を持つことで、興奮作用のある脳内物質・アドレナリンの過剰分泌が防げるのだそう。また、現在に集中することができ、過去の嫌な記憶や、将来の心配ごとによるストレスを防ぐ効果もあるのだとか。疲れているなら、20分の休憩をとってください。
【癒しの戦略3】脳と体の「つながり」を利用する
ウィトキン博士によると、感情エネルギーの枯渇と戦うには、思考と行動の両方を「慎重に選ぶ」ことが必要なのだそう。たとえば「一歩一歩やろう」「大丈夫」といったポジティブな言葉を、自分に言い聞かせるように呟けば、思考もポジティブになれます。
「自分は、自分の感情を含めた全てをコントロールできている」と信じて、自分に語りかけてみてください。たとえほかの人の励ましを受け入れられなくても、自分自身からの励ましなら受け入れられるはず。ポジティブな言葉を脳にかければ、ストレルホルモンの働きが低下して、脳が休むことができますよ。
【癒しの戦略4】自分の「物の見方」について考える
自分が「物事をどう見ているか」について考えてみましょう。たとえ困難な出来事にぶつかったとしても、それはあなた個人に対する罰ではありません。
もし、「もっとああすればよかったのに」「あのときああしなかったから、今こんなに苦しいんだ。自分が悪いんだ」と後悔や自責に苦しんでいるのであれば、目の前の障害を「自分が失敗した結果」ではなく「ただの不都合なもの」と捉えなおしてみましょう。
ウィトキン博士によると、たとえ自分に責任があったのだとしても、自分を責めすぎてはいけないのだそう。自分を責めてばかりでは、心理的な負担は増す一方。それよりは過去の自分を許してあげ、問題の解決に全力を傾けましょう。
そして、遠慮せず周囲に助けを求めてください。信頼できる家族や友人に話してみるだけでも、思考が整理されたり、感情が楽になったりしますよ。
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ジョージア・ウィトキン博士が教えてくれた「癒しの戦略」を、かみ砕いて説明しました。
- 自分自身への期待値を下げる
- 自分自身に休憩を与える
- 脳と体の「つながり」を利用する
- 自分の「物の見方」について考える
上記の「戦略」を活用していくには、多少の練習が必要なのだそう。まだストレスの軽いうちに、少しずつ実践してみませんか?
(※個人の裁量では改善不可能な場合、症状が重い場合は、必ず周囲もしくは専門家にご相談ください)
(参考)
Psychology Today|8 Questions to Check If You're Emotionally Exhausted
こころの耳|働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用)
愛知県経営者協会|会報:職場のメンタルヘルスにおける事業者の役割とメンタルヘルスケアの実際
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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