仕事のパフォーマンスが上がる「効率的で実践的で即効性のある学び」を得るためのシンプルなコツ

効率的で実践的で即効性のある学びに取り組むビジネスパーソンの手元

勉強の必要性は理解していても、忙しく仕事をこなす社会人にとって勉強時間を確保するのは容易ではありません。限られた時間のなかでいかに効率的に勉強するかは、社会人の大きな課題のひとつでしょう。

そこでアドバイスをお願いしたのは、武蔵野大学で起業家精神を育むアントレプレナーシップ学部の教授を務め、グロービス経営大学院でも講師を務めるなど、広く「社会人の学び」に関わる荒木博行さん。荒木さんがすすめるのは、「疑問主導型の学び」というものでした。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
荒木博行(あらき・ひろゆき)
住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て株式会社学びデザインを設立。株式会社フライヤーなどスタートアップのアドバイザーとして関わるほか、武蔵野大学、金沢工業大学大学院、グロービス経営大学院などで教員活動も行なう。音声メディアVoicy「荒木博行のbook cafe」、Podcast「超相対性理論」のパーソナリティーを務めるとともに、一般社団法人うらほろ樂舎のラーニング・デザイナー、株式会社COASにおけるホースコーチング・プログラムディレクターも務める。『自分の頭で考える読書』(日本実業出版社)、『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)、『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

「チキンナゲット症候群」に要注意

「効率よく学びたい」と考えるあまりに、多くの人がやってしまいがちな勉強の仕方があります。それは、なるべく手っ取り早く学ぼうと、「1日でわかる〇〇」といった内容の薄い本ばかりに手を出すということです。

もちろん、そういった本も、勉強の「入り口」としては効果的なものであるとは思います。その分野について「こういうものか」という全体像がわかり、そこから深い学びにつなげられることもあるからです。しかし、そうした本ばかりを読むのは考えものです。

僕は、そういう学びを「チキンナゲット症候群」と呼んでいます。チキンナゲットは手軽ですぐに食べられてとてもおいしいですよね。でも、誰かが鶏を処理して味つけをして揚げてくれたチキンナゲットばかり食べていると、ほかの料理を食べたり自ら調理をしたりする機会を失ってしまいます。チキンナゲットしか食べられない人になってしまうのです。

料理はもっと幅広く奥深いものです。最初は誰かがつくってくれたチキンナゲットから入ってもいいでしょう。そこでチキンナゲットに興味をもったら、自分でチキンナゲットをつくってみてもいいですよね。

あるいは、同じ鶏肉を使うのでも、煮込んでもいいしソテーにしてもいい。揚げ物でもナゲットではなくて唐揚げにしたっていい。そのように幅を広げることこそが、学びを広げていくことなのだと僕は認識しています。

「チキンナゲット症候群」について語る荒木博行さん

たとえ少しずつでも、「源流に近づいていく」学びを続ける

世のなかにはたくさんの加工食品があふれています。「1日でわかる〇〇」といった本は、まさしく加工食品に該当するものです。それはそれで便利なので一概に悪いとは言えませんが、学びが本当におもしろくなってくるのは、「源流に近づいていく」ときです。

たとえば「1日でわかる哲学」といった本で「哲学っておもしろそう」と感じたのなら、哲学の解説書を読み、入門書を読み、最終的には原書を読んでみる。そのフェーズではプラトンだとかアリストテレスの著書に行きつくのかもしれませんが、いずれにせよ、そのように上流に向かってさかのぼって行くことが本来の学びなのだと思います。

先に「1日でわかる〇〇」といった本を加工食品にたとえましたが、もうひとつ例えを挙げるなら、「薄められたカルピス」のようなものです。

「ビジネス書にはたいてい原液がある」とも言われます。僕たちが普段目にするビジネス書は、いわば原液を薄めたもの。時間が限られている読者のために、あるいはわかりやすく解説するために、扱う分野の内容を絞り、そして薄めたものなのです。

もちろん、多忙なビジネスパーソンとしては時間を意識することも大切でしょう。しかし、時間を意識するあまり、「薄められたカルピス」ばかりで学んだところで、学べることは頭打ちになってしまいます。

最終的には、たとえ少しずつであっても源流に近づいていく学びを続けたほうが、「1日でわかる〇〇」といった本を何冊も読みあさるよりもはるかに良質な学びになるのではないでしょうか。

源流に近づく学びについて語る荒木博行さん

仕事中に浮かぶ疑問こそ、学びの大きなきっかけ

そして、社会人が効率的に学ぶには、普段から「疑問主導型の学び」を実践することをおすすめします。なぜなら、仕事のなかにはいくつもの学びのきっかけが転がっているからです。

たとえば、仕事で誰かにインタビューをするとした場合、「どうすれば相手からパンチラインのような印象的な言葉を引き出せるのだろう?」という疑問をもったとします。でも、多くの人は、「いまはそんなことを考えている場合ではない」「とにかくインタビューを進めなければ」と、先に浮かんだ疑問を忘れ、せっかくの学びのきっかけを逸してしまうのです。

でも、そのような仕事中に浮かんだ疑問の答えを見いだすことができれば、仕事のパフォーマンス向上に即座に直結します。効率的で実践的で即効性のある学びになるのです。

ですから、仕事中になんらかの疑問が浮かんだときには、ノートの片隅に書き残すなどしてきちんとストックしておくようにしてみてください。そして、「今日はこんな疑問をもったぞ」「これを解決するにはどうすればいいだろう?」と、1日の終わりに振り返るのです。

忙しい人なら、振り返りは1週間に1回のペースでも十分です。いずれにせよ、せっかくの学びのきっかけを消してしまわないよう、疑問が浮かんだらストックし、定期的な振り返りを心がけてみましょう。なにしろ「効率的で実践的で即効性のある学び」につながるのですから、それをやるかどうかで今後の成長に大きな違いが生まれるはずです。

「効率的で実践的で即効性のある学び」を得るためのシンプルなコツについて語ってくださった荒木博行さん

【荒木博行さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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  • 作者:荒木 博行
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