穏やかな心は「上機嫌」から。怒りやイライラを募らせても、いいことはなにもない

小林弘幸先生×齋藤孝先生「上機嫌でいることの大切さ」01

「時代の流れが加速度的に増している」とも言われるいま、ビジネスシーンにおいては、誰も考えもしなかったビジネスモデルが一気に広まることもあれば、思いがけない出来事によってこれまでのビジネスモデルが崩壊するようなこともあります。先が見えないこの現状を生きていくなかでは、さまざまなストレスがともなうものです。

でも、「ストレスにさらされて怒りやイライラを募らせても、いいことはなにもない」と異口同音に語るのが、順天堂大学医学部教授の小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生明治大学教育学部教授の齋藤孝(さいとう・たかし)先生。共著『心穏やかに。 人生100年時代を歩む知恵』(プレジデント社)を上梓したふたりが、それぞれの立場から「上機嫌」でいることの大切さを教えてくれます。

構成/岩川悟・清家茂樹 写真/川しまゆうこ・塚原孝顕

小林弘幸先生
不快なときこそ笑顔で乗りきる

小林弘幸先生×齋藤孝先生「上機嫌でいることの大切さ」02

私たちの生命活動を支えているもの――それが自律神経です。自律神経とは、簡単に言えば、内臓器官のすべてを支え、特に血流をコントロールしている神経。私たちが意識せずとも心臓が動き、呼吸ができるのも、自律神経の働きのおかげです。

この自律神経は、アクセルの働きをする交感神経とブレーキの働きをする副交感神経で構成されています。交感神経が優位になれば、血管が収縮して血圧が上昇し、気分までアグレッシブになる。一方、副交感神経が優位になれば、血管が適度に緩んで血圧が低下し、体は穏やかなリラックス状態になります。心身の健康にとっては、これらふたつの自律神経が高いレベルで活動しながら、同時にバランスがとれていることが大切です。

ところが、普段から眉間にシワを寄せていたり、知らぬ間にあごに力を入れて歯をかみ締めたりしている人はいませんか?

顔をこわばらせていると、交感神経の働きが上がって血流が悪くなり、呼吸が浅くなることで余計に緊張状態が増します。そして、脳に血流が十分に行き渡らないため、頭の働きも鈍くなってしまいます。

これとは逆の状態を普段から心がけていれば、気分が落ち着いて頭もさえてきます。具体的には、まず「口角をしっかり上げて笑顔をつくる」こと。よく気分が悪いからしかめっ面になると思いがちですが、しかめっ面をしているから気分が悪くなっていくのです。気分を悪くするきっかけはほかにもあるでしょうが、不機嫌な表情をしていると余計にイライラが募ってしまいます

気分を変えるよりも表情を変えるほうが数段簡単。口角を上げて笑顔でいることを習慣にするだけで、気分が落ち着いて心が穏やかになります。そして、人生がいい方向へと進んでいくことでしょう。

30分の余裕を持って、不快な出来事を回避する

ただし、静かな怒りやイライラが晴れない日もあります。自律神経を乱さないために気をつけたいのが、まさにそんな「怒り」です。

怒りの感情は一瞬で湧き上がりますが、それによって乱れた自律神経は3時間はもとに戻りません。そして、血管が収縮して心拍数が上がり、ドロドロになった血流が全身の臓器に悪影響を与えます。しかも、そんな怒りが朝に起こったら、最も集中力が高まる貴重な午前中に交感神経が異常に優位になってしまい、大切な時間が台無しです。

通勤電車に代表されるように、朝はそうした怒りを引き起こす機会に満ちてもいます。たとえ自分が怒らないようにしていても、他人とぶつかって怒鳴られたり、舌打ちをされたりして心を乱されることもあるでしょう。

しかし、そんな他人の言動を変えることはできません。そこで私の場合は、いつも30分の余裕を持ってゆっくりと行動し、不快なことがあったときはさっと下車して、次の電車に乗り換えるようにしています。

とにかく、怒っていいことはなにひとつありません

自分の健康のためにも、「怒らない」習慣をつけていきましょう。

齋藤孝先生
「上機嫌」でいることが身を守る

小林弘幸先生×齋藤孝先生「上機嫌でいることの大切さ」03

子どもの頃はなかなか自分の気持ちをコントロールすることはできないかもしれません。ただ、ある程度の年齢になったら、毎日を「上機嫌」で過ごすべきだと私は考えています。

笑顔で機嫌よくしているというのは、「人の資質」ではなく、もはや「マナー」だととらえています。

じつは、上機嫌でいようとすることはストレスになりません。上機嫌にしている人は余計な危害を加えられにくくなり、自分の身を守るセーフティネットにもなります。上機嫌でいるほうが安全なのです。

そのうえで、人と感じよく雑談ができれば、さらに楽しく毎日を過ごせるようになります。話すのが苦手だと思い込んでいる人も多いのですが、なにも難しいことではありません。相手の「好きなもの」について話していれば必ず盛り上がるし、次に会ったときにも同じように話題にするだけで、「よく覚えていてくれたね!」となるはずです。

私は、勤務する大学で1年に2回ほどしか会わないのにすごく仲良しの先生がいます。なぜなら、その先生は山登りが大好きなので、「今年はどこに登りましたか?」と聞くだけで、おもしろい話をたくさんしてくれるからです。私自身は特に山登りが好きなわけではありません。でも、その先生の話を聞くのは非常におもしろい。それこそ、相手が「これさえあれば大丈夫」と思って打ち込んでいることなら、話も本格的だし興味が尽きません。

日々の雑談を心がける人が、「人生のプロ」

そのようにして人間関係がよくなると、もしなにかあったときにも、その人が「大丈夫、僕が代わりにやっておくから」などと援護射撃をしてくれます。

そんな良好な人間関係をつくるために私がやったことは、単なる雑談だけです。機嫌よく、「心穏やか」に楽しく話しただけで、特別なことはなにもしていません。

そうして雑談をしていると、その人のミスを許せるようにもなります。いま雑談したばかりの人がミスをしたら、思わずフォローしたくなるから不思議なものです。

ただし、もしメンバーが10人いたとしたら、それぞれと雑談するネタをひとつでいいのでもっておく必要があります。相手の好きなものについて10人分知っておけばいいのです。相手が犬好きなら犬、スポーツ好きならスポーツ、音楽好きなら音楽、スイーツ好きならスイーツという具合に。もし相手がアイドルの大ファンなら、そのアイドルの話題を振るだけで毎回かなり盛り上がるでしょう。

そのように、相手の好きなものに興味をもって、日々雑談することを心がけるのが人生のプロなのだと私は思います。

なぜなら、それがセーフティネットとなって仕事や人間関係を円滑にし、ストレスが少ない環境を自分で生み出していくからです。笑顔で雑談できる時間と人的環境を自分でつくりながら、自分だけでなくお互いの心を穏やかにしていくこと――。

本来、人間関係はそのくらいシンプルなものでいいのではないでしょうか。

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小林先生は自律神経研究を専門とする医師の立場から、そして齋藤先生は自身の経験をベースに、「上機嫌」でいることが「人生をよりよくする」と教えてくれました。いま、ビジネスシーンにおいても、自分の怒りをコントロールするアンガーマネジメントが注目されています。自分の人生をよりよくするため、怒りをコントロールし、上機嫌でいるためのメソッドを学んでいきましょう。

小林弘幸先生×齋藤孝先生「上機嫌でいることの大切さ」04

※今コラムは、小林弘幸・齋藤孝 著『心穏やかに。 人生100年時代を歩む知恵』(プレジデント社)をアレンジしたものです。

【小林弘幸先生×齋藤孝先生 ほかの記事はこちら】
「記憶を操る」というアプローチで自律神経を整える。心を穏やかにする、過去への向き合い方

心穏やかに。――人生100年時代を歩む知恵

心穏やかに。――人生100年時代を歩む知恵

 

【プロフィール】
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1960年、埼玉県に生まれる。順天堂大学医学部卒業後、1992年に同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。国内における自律神経研究の第一人者として、アーティスト、プロスポーツ選手、文化人へのコンディショニングやパフォーマンス向上指導を行う。著書には、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『不摂生でも病気にならない人の習慣 なぜ自律神経の名医は超こってりラーメンを食べ続けても健康なのか?』(小学館)、『最後の日まで笑って歩ける ため息スクワット』(集英社)などがある。

【プロフィール】
齋藤孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授。1960年、静岡県に生まれる。東京大学法学部卒業後、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現職に至る。『身体感覚を取り戻す』(NHK 出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞トップテン、草思社)がシリーズ累計260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書には、『読書力』『コミュニケーション力』『新しい学力』(すべて岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』『話すチカラ』(ともにダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SB クリエィティブ)などがある。TBS テレビ「新・情報7days ニュースキャスター」など、テレビ出演も多数。NHK E テレ「にほんごであそぼ」の総合指導も行っている。著書累計出版部数は1000 万部を超える。 

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