仕事をしている際、「コミュニケーションが大事だ!」と過剰に他人と話そうとしたり、みんなでわいわいアイデアを出すべきだと思ったりしてしまいがちなビジネスパーソンは多いのではないでしょうか?
じつは、コミュニケーションを取ることにこだわりすぎると、さまざまな弊害が生じることが明らかになっています。反対に、ひとりで過ごす時間によって創造力や生産性が上がるという事実もあるのです。
今回は、ひとりでじっくり思考することのメリットをご紹介します。
創造力の高い人は交流の時間を増やしすぎない
人とあまり交流しないことは、情報が限られてしまったり、孤独であることが健康に悪影響を与えたり、といった理由から悪とされてきました。しかし、最近の研究では、ひとりの時間を長く持っている人のほうが高い創造性を持つという結果が示されています。
バッファロー大学心理学部のジュリー・ボウカー教授によると、非社交的な人のほうがクリエイティブである可能性が高いのだそう。
Unsociable individuals may get just enough peer interaction so that when they are alone, they are able to enjoy that solitude. They're able to think creatively and develop new ideas — like an artist in a studio or the academic in his or her office.
(仲間との交流を程よい時間に抑えることで、ひとりの時間もしっかり楽しむことができる。それにより、クリエイティブな発想や、新しいアイデアを生む。スタジオにこもるアーティストや、オフィスにこもる研究者が良い例である。)
(引用元:Science Direct|How BIS/BAS and psycho-behavioral variables distinguish between social withdrawal subtypes during emerging adulthood※カッコ内の和訳は筆者が補った)
自分のための時間を十分に確保することも、クリエイティビティには必要不可欠なのですね。
コミュニケーションの取りすぎは、作業効率を下げる
コミュニケーションの取りすぎ、つまり、常に人に気を遣い、社交的でいる姿勢は、脳が緊張しつづけることを意味します。神経科学を専門とするマサチューセッツ工科大学のアール・ミラー教授によると「ひとつのことに集中したほうが、よっぽど生産性が高い」のだそうです。そもそもマルチタスク、すなわち人と話しながら仕事に集中することは「人間にとって不可能なこと」とまで述べられています。
逆に、ひとりでいる時間は、脳がリラックスして気が散らなくなるため、今やらなければならない事柄に集中しやすくなるということです。
話しすぎることの弊害と、ひとりで過ごすことのメリットを理解したところで、次は「自分のための時間」をいかにして増やすか考えていきましょう。
オンラインのコミュニケーションを工夫する
自分の時間を増やすといっても、家の中であれば融通が利きますが、チームワークを必要とする職場では難しいかもしれません。しかし、ちょっとした工夫で状況を改善していくことは可能です。
まずは対面だけでなく、見逃されがちなオンラインのコミュニケーションにも意識を向けましょう。ハーバード大学の教授であるロバート・ポーゼン氏は、自身の著書『Extreme Productivity(最高の生産性)』にて次のように述べています。
Ignore your instinct to check your phone every time it buzzes. Stopping your workflow every few minutes to read an email is a huge distraction and disrupts your process, so instead retrain yourself to look at your email every hour or two.
(通知が来るとつい見たくなってしまう衝動を抑えましょう。集中していた仕事を数分おきに止めてメールを読み、進行を遮ることはもったいないので、時間を決めて1〜2時間おきにメールチェックをしましょう。)
(引用元:Robert C. Pozen (2012), Extreme Productivity: Boost Your Results, Reduce Your Hours, United States, HarperBusiness. ※カッコ内の和訳は筆者が補った)
ポーゼン氏は著書の中で、メールの送り方のコツとして「必要最低限の人数しか宛先に入れないこと」を提唱しています。メールボックスが散らかっていると、生産性を高く保つことが難しくなります。自分自身が不要なメールのCCに入れられるのを避けるためにも、メール送信の際には、宛先から関係者以外を削除し、大量の返信(=気が散るもの)を減らす工夫をしましょう。
仕事場の人たちとは一定の距離を保つ
職場の人たちと良好な関係を築くことは大切ですが、必要以上に仲良くなるのも考えものです。市場調査などを手がける日経BPコンサルティングが3,299人を対象に実施したアンケートでは、仕事をするうえでストレスだと感じている要因のトップが「職場の人間関係」なのだそう。
嫌でも毎日出勤しなければならない職場で人間関係のもつれが発生すれば、逃れようがありません。人間関係がこじれるリスクを念頭に置いておけば、深入りしすぎることへの警戒心を持てるでしょう。
老年学に関するポートランド州立大学の研究によると、人間関係の衝突は健康に悪影響を与えるのだそう。650人以上の成人を2年間観察したところ、よりネガティブな人間関係(長期的または頻繁に対立している関係)を持つ人は、ネガティブな人間関係のない人よりも体調の悪さを感じており、実際の健康状態も悪いという結果が見られたようです。ストレスが免疫にダメージを与えることが原因だと考えられています。
具体的な対策としては、
- うわさ話や悪口を言わない
- うわさ話や悪口で盛り上がっている場では、積極的に会話に参加しない
- 個人情報を明かしすぎない
- 自分にとって面白い皮肉でも、ユーモアと捉えず不快に思う人もいるので、気をつける
などが挙げられます。ただでさえ時間に追われていたり結果を求められたりと、ストレスが増えやすい仕事場なのですから、人間関係によってもたらされるストレスを抑える工夫をしてみてはいかがでしょうか。
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ひとりで過ごす時間を増やすことで、創造力と作業効率を上げることができ、ひいては仕事や人生の質を向上することにつながります。コミュニケーションも大切ですが、人と交流しない時間も意識的につくり、毎日をより充実したものへと導いていきましょう。
(参考)
Bestlife Online|20 Reasons Spending Time Alone Is Essential for Your Health
Bestlife Online|60 Best 60-Second Productivity Hacks
Science Direct|How BIS/BAS and psycho-behavioral variables distinguish between social withdrawal subtypes during emerging adulthood
Robert C. Pozen (2012), Extreme Productivity: Boost Your Results, Reduce Your Hours, United States, HarperBusiness.
Very well mind|Effects of Conflict and Stress on Relationships
アデコ株式会社|あなたの仕事のストレスは何ですか?
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。