「本質を見抜く力」はどうすれば磨けるのか? 洞察力アップに役立つ本、厳選3冊。

「本質を見抜く力」を養うためのおすすめ本3冊01

「顧客のニーズを読み取れず、売り上げをなかなか伸ばせない……」
「部下をうまくフォローできず、よい関係を築けない……」

このように、仕事で成果が出せなかったり、コミュニケーションが円滑に進まなかったりといった悩みがある人は本質を見抜く力を磨くとよいかもしれません。

「本質を見抜く力」とは、表面的な部分を注意深く見る「観察力」から一歩進んで、「見えていない部分」まで洞察できる能力のこと。ここでは、本質を見抜く力を磨くメリットと、この力を磨くために役立つ本を3冊ご紹介します。

「本質を見抜く力」を磨くメリット

本質を見抜く力を磨くメリットには、次のふたつがあります。

1. 問題解決能力が向上する

本質を見抜けると状況を正確に把握できるため、適切に判断したり効果的な改善策を考えたりできると、グロービス経営大学院・経営研究科副研究科長の村尾佳子氏は伝えています。つまり、問題解決能力が向上するのです。

また、慶應義塾大学総合政策学部教授で政策学者の印南一路氏は、意思決定の重要性が日々増しているなかでは、間違った判断をしないことが重要だと述べます。本質を見抜き、適切に問題を解決する力が、いま求められているということです。

たとえば商品の売り上げが伸びないとき。「商品に魅力がないから」で片づけるのではなく、「ターゲットに向けた適切な宣伝ができていないからだ」と問題の本質を見抜ければ、広告を差し替えるといった改善策を打ち立てられます。本質を見抜く力があるかないかで、仕事の成否は間違いなく左右されるのです。

2. コミュニケーション能力が向上する

また本質を見抜けるようになると、コミュニケーション能力もアップ。相手の本心や正確な意図を読み取って行動できるようになると、村尾氏は述べます。

たとえば、部下が落ち込んでいるときを考えてみましょう。「こんなやり方だったら、失敗するに決まっている」などの一方的な決めつけ言葉は禁句だ――そう説くのは、10社の経営に携わった経歴をもち「影の仕事人」とも称される、中央大学商学部客員講師の吉野哲氏(※「吉」は、上が土の「つちよし」が正しい表記)。

部下が落ち込んでいるときには悩みを聞いてフォローし、自信をもち始めたタイミングで新しい仕事を任せてモチベーションを高める……。本質を見抜く力を身につけると、こうして相手の心境に応じたコミュニケーションをとれるので、信頼関係を築きやすくなるのです。

「本質を見抜く力」を養うためのおすすめ本3冊02

村尾氏いわく、本質を見抜くには思い込みや先入観が邪魔となるため、まずそれらを捨てることが第一歩になるそうです。では、具体的にどうすればいいのか、教え導いてくれる3冊の本をご紹介しましょう。

1.『トップ1%に上り詰める人の頭の中身 必ず結果につながる「思考の習慣」』

研修講師・コンサルタントの鳥原隆志氏によると、本質を見抜く力は、意外にも生活習慣を変えることで磨けるそうです。その方法を説いているのが、トップ1%に上り詰める人の頭の中身 必ず結果につながる「思考の習慣」

鳥原氏は、思い込みや先入観を捨てて本質を見抜くには、複数の視点で物事をとらえる習慣をつけることが必要だと述べています。そのために、以下のような、今日から始められる方法が多数あるとのこと。

1. ニュースを複数のメディアで見て、さまざまな見解に触れる

鳥原氏いわく、いろいろな立場の意見に耳を傾ける癖をつけると、自身の先入観や思い込みに気づけるそう。自分以外の考えを受け入れられれば、相手の意図にも正確に気づくことができ、コミュニケーションが円滑に進むでしょう。

2. 外出の際は遅延や渋滞に備えて、複数のルートを用意しておく

これは、「いつもどおりで大丈夫」という先入観を捨てるトレーニングに効果的だと鳥原氏。日頃から「大丈夫」と過信せず、万が一に備える思考の癖をもつようにすれば、仕事においていざトラブルが起こったときも問題を解決することができます。

3. 週間・季節予報を確認する

天気をコントロールすることはできないため、私たちは自然と思い込みを捨てざるをえません。週間・季節予報を確認して「週末は天気が悪そうだ。なら、まだ晴れている今日のうちに買い出しを済ませたほうがいいかも」というように、先々の状況から問題を予測し行動することで、問題解決能力が高まります。また「寒いのでお気をつけてお越しください」のように、相手の状況を推測し、気遣いの言葉を前もって送るといったコミュニケーションにも役立ちますよ。

本書は、若者を主人公にした物語形式になっているため、本を読み慣れていない人でも内容を理解しやすい点も魅力的です。また、物語がひと区切りつくごとに「すぐにチャレンジ」という見出しで、具体的に何をすればいいのかを丁寧に説明してくれています。そのため、実践に移しやすいのもよいところ。読書に苦手意識があるけれど、本質を見抜く力を磨きたいという人の最初の一冊としておすすめです。

「本質を見抜く力」を養うためのおすすめ本3冊03

2.『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学』

すぐれた意思決定―判断と選択の心理学は、本質を見抜く力の磨き方をより実践的に学べる一冊。リーダー的立場にあって、意思決定する機会の多い方に特におすすめです。著者は、前出の印南氏。

本書では、先入観の原因となる心理的なバイアスに影響されず、公平な視点で情報を読み解く方法などを紹介しています。

たとえば、流行性ウイルス疾患の感染者数の統計データを見た場合。「先週は100人で今週は200人だから感染者が増えている」と考えるのではなく、検査数も調べて「検査数に対しての感染者数の割合は今週のほうが低い」というように、広い視野で変化について分析する必要があるとのこと。こういった実践的な例を用いて解説しています。

さらに、印南氏は、バイアスにとらわれることなく物事の本質をふまえて意思決定するための規範を、7つのステップで解説。そこで筆者も、ステップに沿って意思決定の方法を具体的に考えてみました。

テーマは、「プロジェクトリーダーの選定」。仮に本質を見抜けていないままプロジェクトリーダーを選ぼうとすると、「お気に入りの人を選ぶ」といったように、恣意的な判断をしてしまうかもしれません。でも、この7手順を踏めば、適切に選べます。

  1. 問題の定義
    決定しようとする問題を正確に定義する。
    例)問題テーマを「プロジェクトリーダーの選定」と定義する。
  2. 評価基準の発見
    選択肢をつくる準備として、選択肢を評価する基準を決める。
    例)リーダーの候補者を選ぶ基準を、将来性、コミュニケーション能力、業績にする
  3. 基準間の重みづけ
    2で決めた「選択肢を評価する基準」のなかで、どの基準を重視するのかという重みづけをする
    例)業績を最も重視して5割、コミュニケーション能力は2割、将来性は3割で判断する。
  4. 選択肢の生成
    選択肢をリストアップする。
    例)リーダーの候補者を5名挙げる。
  5. 基準に基づいた選択肢の評価
    評価基準に基づいて、選択肢を評価する。
    例)候補者の将来性、業績などを五段階評価で評価する。
  6. 最適な決定の計算
    3と5を組み合わせた計算をする。
    例)候補者Aの評価の将来性(重要度5割)が3点の場合、3×5で15点となる。同じ要領でほかの基準も計算する。
  7. 選択肢の選択
    最も点数が高いものを最適な選択肢として選ぶ。
    例)候補者Aが最高得点なのでプロジェクトリーダーとする。

個人の意思決定のみならず、集団での意思決定の思考モデルについても記載しているので、チーム全体の本質を見抜く力を底上げしたい人にもおすすめの一冊です。

「本質を見抜く力」を養うためのおすすめ本3冊04

3.『「よそ者リーダー」の教科書』

「よそ者リーダー」の教科書

「よそ者リーダー」の教科書

  • 作者:吉野 哲
  • ダイヤモンド社
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「よそ者リーダー」の教科書は、本質を見抜く力のなかでも「人を見る目」を養いたい人におすすめの一冊。著者は吉野氏です。

本書を読むと、ふたつの意味で人を見る目が養われます。ひとつは「人材の資質を見抜き、適切な部署に配置するには?」というように、組織内の人を見る目。もうひとつは、「顧客の動向をつかみ、マーケティング戦略を立てるには?」といった、市場の人の流れを見る目です。

異動先や転職先といったアウェイなコミュニティでリーダー職に就いた「よそ者リーダー」にとって、「人を見る目」の磨き方は悩みの種である、と吉野氏。もちろん、よそ者リーダーに該当しない人にも、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

本書では、思い込みで人を判断しないための方法を下記のように紹介。仕事の場面からプライベートの時間にできることまで、幅広く網羅しています。

  • 第一印象を引きずらない
  • 部下との面談は、8割の時間を「話を聞く」ために割く
  • 幅広いジャンルの本を読み、見識を広める
  • 悪い報告を徹底させ、現状を把握できるようにしておく

本書には、向こう3年間の計画を立てるのに役立つ書き込み式のロードマップや、洞察力を身につけるためのToDoリストもついているので、実践しやすいことでしょう。

***
本質を見抜く力を磨くのにぴったりな3冊。気になる本から、ぜひ手に取って始めてみてくださいね。

(参考)
グロービスキャリアノート|洞察力とは「本質」を見抜く力。高めるための5つの方法
ダイヤモンド・オンライン|何気ない一言で、誰もついてこなくなる。リーダーが言ってはいけない「NGワード」
鳥原隆志 (2016), 『トップ1%に上り詰める人の頭の中身 必ず結果につながる「思考の習慣」』, 大和書房.
印南一路 (2002), 『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学』, 中央公論新社.
吉野哲 (2021), 『「よそ者リーダー」の教科書』, ダイヤモンド社.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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