仕事選びで絶対に避けるべき「7つのタブー」――“好きなこと” を仕事にしても意外と幸せになれない

科学的に正しい天職の見つけ方01

自分の興味関心とつながりがあったり、多くのお金を稼げたりする仕事は、みなさんも一度は憧れますよね。しかしその仕事、本当にあなたの「天職」でしょうか?

じつは、自分の天職を見つける “科学的な方法” があるのです。詳しくご紹介しましょう。

あなたの天職の探し方、本当に合ってる?

みなさんが考える天職の選び方には、どういったものがあるでしょうか? 「日本一の文献オタク」としての異名をもつ鈴木祐氏は、著書『科学的な適職』のなかで、仕事選びにおける7つのタブーを紹介しています。それらは以下の通り。

  1. 好きなこと
  2. 給料の多さ
  3. 職種や業種
  4. 仕事の楽さ
  5. 性格テスト
  6. 直感
  7. 適性

おそらく、ほとんどの人が上記の視点で仕事を選んでいるはず。なぜ、これら7つの視点で仕事を選ぶと天職にめぐり会えないのでしょうか。1つずつ理由を説明していきます。

【タブー1】「好きなこと」で選ぶ

好きなことを仕事にできれば仕事に対する満足度も上がる――普通はこう思うでしょう。しかし、実際はあまり関係ないようです。

オックスフォード大学は、労働者を次の3つのタイプに分類して調査を実施しました。

  • 「好きを仕事に」派:「自分はこの仕事が好き」と感じながら仕事するタイプ
  • 「情熱」派:「この仕事で社会貢献するのだ」と思いながら仕事するタイプ
  • 「割り切り」派:「仕事は仕事」と割り切って働くタイプ

すると、好きを仕事にした人よりも、仕事は仕事と割り切った人のほうが仕事に対する満足度は高かったのです。その理由は、仕事をしたくない気分だったり付き合いづらい人がいたりすると、仕事に対する幻滅の度合いが、割り切って考える人よりも高くなってしまうから。理想を追い求めすぎた矢先、少しでも嫌なことがあると受けるダメージが大きくなり、結果的に失敗だったと後悔してしまうのです。

【タブー2】「給料の多さ」で選ぶ

私たちの生活にはお金が必要不可欠ですから、給料を目安に仕事を決めるという人も多いはず。しかし、給料「だけ」を目安にしてしまうと少し危険かもしれません。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏は以前、「人生の幸福度は800万円でピークに達する」と述べました。カーネマン氏が示すところによれば、低い年収から平均的な水準まで上昇していく過程では、人生の満足度も上がり続けます。しかし、年収300〜500万円に達すると、満足度の上昇がにぶり始め、800〜900万円までいくと、ほぼ横ばいになるそうです。

また、1,000万円近く稼いでも満足度があがらない理由について、前出の鈴木氏は「ランク所得説」を紹介しています。ランク所得説とは、自分が百万長者になると、億万長者と自分を比べてしまうことで、みじめな感情を抱いてしまうという現象のこと。自分がどれだけお金を手にしてもまわりと比べてしまい、永遠に満足できないのです。

【タブー3】「職種や業種」で選ぶ

ペンシルバニア大学が1984年〜2003年にかけて実施した調査では、およそ250人もの研究者や評論家、経済学者らが集まり、3〜5年後に隆盛するであろう産業・業種を予想しました。すると、その精度はたった50%だったそうです。

学会で名のある研究者や著名な論客が全力を注いで将来がどうなるかを予想しても、コイントスと同じ確率で未来は決まっていきます。だとすると、みなさんがそういった情報に頼らず仕事を選んでも、結果はほとんど変わらないと言えるでしょう。

【タブー4】「仕事の楽さ」で選ぶ

なるべく楽をして仕事をしたいと思うかもしれません。しかし、あなたの幸福度を高めてくれているのは、じつは適度なストレスなのです。というのも、ストレスがかかる際に分泌される「コルチゾール」は、適切な量であれば仕事のあとの達成感を高めてくれるホルモンだから。この重要なホルモンを分泌するためにも、ある程度のストレスは仕事には必要不可欠なのです。

また、3万人もの公務員を対象としたイギリスの研究では、組織のなかでランクが最も低い人は、管理職や重要なポストについているランクの高い人に比べて死亡率が2倍も高かったという結果が出ています。これは、「楽すぎ」てコルチゾールが過剰分泌されたのが原因。ストレスがなさすぎる環境は、「ストレスがなさすぎる」という理由で、むしろさらなるストレスが降りかかるのです。「楽な仕事は楽しい」は間違いだということがわかるでしょう。

科学的に正しい天職の見つけ方02

【タブー5】「性格テスト」で選ぶ

みなさんは、性格テストの結果を100%信じているでしょうか? 性格テストでは、「はい」や「いいえ」で答えられるような質問ばかりが問われます。しかし、みなさんが日々考えていることは、もっと複雑な思考回路の上に成り立つものです。そこに科学的な客観性が保証されているわけではありません。

性格テストで適職とされた仕事は、問われたすべての条件がそろったうえでの天職です。究極の答えだとは思わないよう、注意してください。

【タブー6】「直感」で選ぶ

「なんとなくピンときた」「自分のことを呼んでいる気がした」など、直感で次の仕事を選ぶ人もいるのではないでしょうか。前出の鈴木氏によれば、このタイプの人には「自己正当化」、つまり「自分の選択が正しかった」と錯覚している人が多いそう。

加えて、「自分の選択が正しかった」と思っていても、「まわりからの評価は案外低い」場合が多いのだとか。天職にめぐり合うには、直感を過信せず、もう少し合理的・客観的に状況を考えるのも1つの手かもしれません。

【タブー7】「適性」で選ぶ

就職活動のとき、適性試験を受けた人はきっと多いはず。とはいえ、「適性」はあくまでもインターンシップやSPIなどのスキル評価で見えてくる指標であって、それが必ずしも天職につながるとは限りません。

また企業風土も、それぞれに異なる独特なものです。「適正があると診断されたから天職だ」と思い込んで乗っかるのも一案ですが、あまり気にしすぎるとかえってストレスになってしまうでしょう。

科学的に正しい天職の見つけ方03

自分の「天職」はこうやって見つける!

ここまで、仕事を選ぶときのタブーについて触れてきました。では、どうすれば科学的に自分の天職を見つけることができるのでしょうか。3つの方法をご紹介しましょう。

【方法1】「小さな成功体験を積み重ねていける仕事」を選ぶ

あなたの天職を見つける鍵は、「日々の小さな成功体験」にあるかもしれません。

経営学者テレサ・アマビール氏と心理学者のスティーブン・クレイマン氏は、共著論文『進捗の法則(The Progress Principle)』のなかで、日々の小さな成功体験が仕事の生産性を上げる重要な要素だと説いています。

これがなぜみなさんの天職選びに影響するかというと、仕事でのモチベーションアップにつながってくるから。たとえば、商談やプレゼンがうまくいったなど、小さな成功体験が積み上がっていけば、仕事を「楽しい」「今後も続けたい」と思えるようになりますよね。

また仮に、仕事で何か失敗をしても原因の分析ができれば、その日の収穫は大きなもの。言葉通りの成功はもちろん、こうした小さな成功体験すら得られないままでは、仕事に対するモチベーションはだんだんと下がり、天職から遠ざかってしまうでしょう。

【方法2】「他人への貢献度が高い仕事」を選ぶ

仕事を続けられるかどうかの要素のひとつに、「満足度・幸福度の高さ」があります。

シカゴ大学は2007年、過去30年間で5万人を対象にした調査の結果を報告。調査チームは、「高い満足度を得やすいのは、どんな職業か」を問いにリサーチを進めました。調査の結果、5位に「画家・彫刻家」、4位に「教育関係者」、3位は「消防員」、2位は「理学療法士」。そして1位は「聖職者」、つまり神父や司祭といった職種でした。これらは、他者への親切によって自尊心、親密感、自律性が育まれ、幸福度が上がるような職種ばかり。自分が貢献したという事実が可視化されやすい職業です。

研究チームのトム・W・スミス氏は、「満足度が高い仕事とは、他人を気づかい、他人に新たな知見を伝え、他人の人生を守る要素をもっている」と伝えています。満足感を高く感じられる職業は、働く人のモチベーションを高めてくれることが示されたのです。

【方法3】天職はそもそも選ぶものではなく「気づいたら得ているもの」

2014年、ドイツのロイファナ大学は、企業家たちを集めて「いまの仕事を天職だと考えているか」と尋ねる調査を行ないました。調査では、「仕事への熱量」や「毎日のワクワク度」などがポイントとしてチェックされ、結果は次のようなものでした。

  • いまの仕事に対する情熱の量は、前の週に注いだ努力の量に比例していた
  • 過去に注いできた努力の量が多くなるほど、現時点での情熱の量も増加した

なんと、調査の対象になった人で、最初からいまの仕事を「天職」だと考えていた人は少なかったそう。なんとなく仕事を始めたら、やっていくうちに、仕事に対する熱量がどんどん増えていったという人が多かったのです。

つまり、天職は運命的に最初から決まっている・見つけるものではないということ。とすれば、「天職」を「選ぼうとしている」時点で考えを見直す必要があるのではないでしょうか。

***
その仕事があなたにとって本当に天職かどうかは、単純な好みや性格テストだけではわかりません。大事なのは、達成感の積み重ね、周囲への貢献、それから「天職」に対する認識を変えてみること。もしみなさんが仕事選びで迷っているなら、ぜひ参考にしてみてください。

(参考)
鈴木祐(2019), 『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』, クロスメディア・パブリッシング.
MONEY PLUS|「好きを仕事に」は間違い?研究でわかった「天職」の見つけ方
SBCr|コルチゾールの無駄遣いを避けることが健康への近道
WIRED|偏見に満ち、非科学的な「心理テスト」の歴史──過去の遺物に潜む「美しさ」を見た
Harvard Business Review|Small Wins and Feeling Good

【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。

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