雑談や世間話は苦手。深くて意義のある会話のほうが好き。集団のなかにいると自分の考えがわからなくなり、意見を言えなくなる……。
そんなあなたはHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる、人一倍「繊細で敏感な人」かもしれません。今回は、そんなHSPさんの会話をスムーズにする4つのヒントを紹介します。
HSPはなぜ雑談や世間話が苦手なのか?
HSPは感覚処理感受性の測定値が高い人――つまり中枢神経系の感度が高く、認知処理(情報を記憶し、推理や判断を加えて処理すること)が深い人のことです。
HSPの概念を提唱したアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によれば、以下4つすべてに当てはまる、あるいは1つでも飛びぬけて当てはまる場合はHSPの可能性が高いとのこと。
- とても深く物事を考える
- 過剰に刺激を受けやすい
- 共感力がとても高い
- 些細な刺激をすぐ察知する
では、なぜHSPは雑談や世間話が苦手なのでしょう?
■ 「もっと深い話がしたい」
HSP専門カウンセラーの武田友紀氏は、HSPが雑談を苦手だと感じる理由のひとつとして、深い話をしたい気持ちが強いことを挙げています。無意識のうちに膨大な情報を拾っては深く考える性質なので、気楽な会話はあまり得意ではないのです。
■ 「どうせ理解されない」
育った環境で「理解されなかった」「否定された」などの経験が多いと、「話しても理解してもらえない」という考え方になってしまうのだとか。
HSP関連の著書を多くもつ精神科医の長沼睦雄氏によれば、育った環境やトラウマ体験などがHSPの感じやすく傷つきやすい気質(生まれつきの部分)に加わると、より過敏になる傾向があるとのこと。
HSPはなぜ話せなくなってしまうのか?
また、前出の長沼氏は、敏感すぎる人が話せなくなってしまう原因を次のように説明しています。
■ 「本当の自分」を見かけませんでしたか?
HSPは表情やしぐさから相手の感情を読み取ることが得意で、自分より他人を優先しがちなので(=過剰同調性が強い)、無意識のうちに相手が望む役柄を演じてしまうそうです。だから、いざ自分の意見を聞かれたときに本当の自分が出てこられず、言葉が出なくなってしまうのだとか。
■ ボーっと見えるけど「ただいま処理中です」
HSPは物事を感じ取る量が膨大なうえ細かいので、目の前のトピックに関する言葉や思考ですぐ頭のなかがいっぱいになります。
そこで脳内にあふれたアイデアやイメージの連想に没頭していると、周囲はいつの間にか次の話題に移ってしまうのです。つまり、話したいことがありすぎて話すタイミングを逃すということ。
ちなみに、そのときHSPさんが「ボーっとしている」ように見えても、脳内はキャパオーバー状態でフル回転しています。
■ どうしても他人が「気になるんです」
繊細で敏感なHSPさんは、相手が「腹を立てたのではないか」「誤解したのではないか」などと、ついつい他人がどう思うか気になってしまいます。
そして「こう言ったら変じゃないか」「こんなことを言えば浮くのではないか」などと考えすぎてしまい、恐怖心で話し出せなくなることがあります。しかも、気をつかいすぎてヘトヘトです。
HSPの会話をスムーズにする4つのヒント
そんなHSPさんが少しでもスムーズに会話できるよう、4つのヒントを紹介しましょう。
1. 前もってシミュレーション
心理療法士のイルセ・サン氏は敏感すぎる人に対し、大事な話をする前はあらかじめ会話の流れを想定しておくことをアドバイスしています。
考え抜くことや想像はHSPさんの得意技。「こうきたら、こう言おう」「こんな傷つくことを言われるかも」などと前もって相手との会話を徹底的にシュミレーションしておけば、双方に有益ではない発言の回避や、言葉による痛手を最小限に食い止めることなどに役立ちます。
2. 頭に浮かんだら伝えてみる
HSP専門カウンセラーの武田氏によれば、「話したところで理解してもらえない」と感じている人が雑談の場にいるときは、むしろ頭に浮かんだことを話してみるといいのだとか。
オチのないどうでもいいようなことでも、「とにかく口に出してみれば意外と受け止めてもらえるものだ」という感覚が育つと、徐々に雑談を楽しめるようになるそうです。
3. 相手の意図を探り時間稼ぎ
サン氏によるとHSPは、相手にすばやく礼儀正しく、しかも正直に返答すべきだと考えてしまうため、焦って返事をしてしては後悔することがあるのだとか。
たとえば「週末はバーベキュー楽しかったなー。Aさんはどこか行った?」と聞かれたら、みなの前で答えたくもないのに「あー、家でひとり、ずっと映画を観ていた」などと正直に答えてしまいます。
そんなときは、なぜ知りたいのか聞き返すといいのだとか。角が立たないよう「えー、私の週末なんてどうして知りたいのぉ?」などと朗らかに返すといいかもしれません。
それにより相手の意図を探ることができ、返答を考えるための時間稼ぎもできます。単に「週末楽しんだ自慢」なら相手は言葉に詰まるだろうし、「今度誘いたいなーと思って……」とモジモジされたら、たとえ “バーベキューでワイワイ” が苦手でも悪い気はしませんよね。
4. ちゃっかり意見を入れちゃう
HSPさんは人と争うことが苦手です。しかし、自分を押し殺してばかりでは精神衛生上よくありません。だからサン氏の「堂々と争いから降りる方法」を参考に、認識や意見がかみ合わない人とはこう会話してみてはいかがでしょう。
「なるほど、私は〇〇だと思うけど、たしかにその考え方は正解かもね! 」
自らの権利を放棄してエネルギーを節約しつつ、しっかりと自分の気持ちも伝えることができますよ。
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精神科医の長沼氏は、自分の気持ちにフタをしていると自己肯定感が下がってしまうと警鐘を鳴らします。人に好かれようと疲弊するのではなく、嫌われる勇気で自由になる心構えが大切とのこと。会話が成功すればそれでよし。失敗したら「これで自由だ!」と開き直ってみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|話題のHSP専門カウンセラーが教える!「雑談が苦手な繊細さん」が過ごしやすくなる方法
PR TIMES|敏感な人や内向的な人が生きやすくなるヒントが満載。20カ国で翻訳された『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』著者最新作発売!
髙橋亜希(2016),「Highly Sensitive Person Scale 日本版 (HSPS-J19) の作成」, 感情心理学研究, 第23巻, 第2号, pp.68-77.
長沼睦雄(2019),『敏感すぎるあなたがうまく話せる本 今日からスーッとラクになる』, KADOKAWA.
イルセ・サン 著, 枇谷玲子 訳(2018),『敏感な人や内向的な人がラクに生きるヒント』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
株式会社トータルブレインケア|認知機能の見える化プロジェクト|認知機能とは
NHKラジオ らじる★らじる|長沼睦雄さん HSPってなんだろう
Wikipedia|Sensory processing sensitivity
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