「黒字でも倒産」を経験しかけた元経営者が『学び直し』を激しくすすめる理由。

ビジネスパーソンが大学や専門学校に通い直したり、通信教育やオンライン講座を受けたり、書籍を使って独学したり——「学び直し」という言葉が最近のトレンドになってきています。

では、実際に学び直しをできている人はどれくらいいるのでしょう。「人生100年時代、今のままだと将来が危ぶまれる……」「新しい知識やスキルを身につけたい……」とは思っているものの、重たい腰がなかなか上がらない方も多いのではないでしょうか。それでも私たちは絶対に学び直しをするべきなのです

今回は、グロービスのEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める鳥潟幸志(とりがた・こうじ)さんにお話をうかがいました。経営者時代に「黒字でも倒産」を経験しかけた鳥潟さんが、ビジネスパーソンに「学び直し」を激しくすすめる理由とは——

「AIに仕事を奪われる」は虚言ではない

編集部・S
そもそも「学び直し」という言葉が最近トレンド的に注目されるようになったのはなぜなのでしょう?(調べてみたら『SPA!が選ぶ「2018年の裏流行語大賞」(サラリーマン編)』でも4位にランクインしているようです)
鳥潟さん
最も大きな背景としては、技術革新がものすごいスピードで進み、実ビジネスの作業レベルにまで浸透してきている、ということが挙げられます。よく「あと10年20年もすれば、今の仕事の半分はテクノロジーに置き換わる」なんて話も聞きますよね。
編集部・S
それって実際のところ本当に起こることなのでしょうか? 単なるホラーストーリーのような気がしてならないのですが……。
鳥潟さん
私は、本当に起こると確信しています。むしろ、現在進行形で進んでいるのではないかと
編集部・S
すでにテクノロジーに侵食されつつあると……?
鳥潟さん
実際に、アメリカの弁護士の仕事は完全に二分されつつあると聞きます。訴訟における戦略をしっかり立案できる一部の “エリート弁護士” と、AIによる作業をただダブルチェックするだけの “その他の弁護士” というふうに。

編集部・S
たしかに、これまでの訴訟結果をすべて記憶できるAIにかかれば、これまで弁護士たちが時間をかけて人力で行なっていた “過去の判例を調べ出す” なんて作業も一瞬にして終わりますからね。AIに代替された結果、あぶれる弁護士が出てくるのも納得です。
鳥潟さん
昔は、およそ100年単位というスパンで職業が入れ替わっていく、そういう時代でした。ところが今は、一生のなかで3回職業が入れ替わるぐらいのスピード感になってきている。それに、会社が一生キャリアの面倒を見てくれて仕事も与えてくれる、なんて時代も終わりましたよね。「時代の流れに合わせて自分自身が変わりながら、どんどん外に出ていく」くらいの覚悟を持っておかないと、将来は確実に厳しくなると思います。

「私も必死に努力しております(笑)」と鳥潟さん。

なぜ「学び直し」をするべきなのか?

編集部・S
普通に日々の仕事をこなしていれば、自然と身についていく能力もあると思います。経験も自ずと積み重なっていきますし、営業の人を例に取れば「交渉力」や「トーク力」といったスキルも少なからず磨かれていきます。でもやはり、自分からプラスアルファで何かを学んでいくことは必要なのでしょうか?
鳥潟さん
はい。まず短期的な視点で言えば、「いざというときに役立つ」というメリットがありますよね。
編集部・S
いざというとき……?
鳥潟さん
今の時代、仕事をしているといろんな球が飛んできませんか? それこそ営業職だったとしても、いきなり「新規企画を考えてほしい」とか「プロダクト設計を一緒に見てほしい」とか振られたり……。
編集部・S
(自分にも覚えがあります)
鳥潟さん
その都度ゼロベースで学んでいくのでは、時間がかかって非効率ですよね。それよりは、空いた時間を使って、事業戦略やマーケティングやファイナンスなどの知識を身につけておいたほうが、急に飛んできた球をうまく打ち返すことができるというわけです。
編集部・S
なるほど、それが短期的な視点でのメリットというわけですね。
鳥潟さん
そして中期的な視点で考えると、「主体的にキャリアを作っていける」。例えば「転職したい」と考えたときに、一番つらいのは「選択肢がない」という状況ではないでしょうか。でも自ら学ぶことは、それ自体が選択肢を広げる行為だし、実績だって作ることも可能です

編集部・S
短期的、中期的と来れば、長期的な視点でのメリットもあるのでしょうか?
鳥潟さん
究極ですが、「どういう人生を歩んでいきたいか」という話になります。最期に死ぬ前に、やっぱり「すごく充実した人生だったな」って振り返りたいですよね。正直やりたくない仕事をやり続けて人生を終えていくのって、ちょっと寂しいと思うのです。年収を上げたりキャリアアップに奔走したりするのも大事ですが、その先にあるものが虚しいとつらいじゃないですか。「自分が何を成し遂げるためにこれから生きていくのか」について真剣に向き合い、人生を考える、良いきっかけになるのではないかと思います。
編集部・S
(私も「我が人生に一片の悔いなし」なんて言って人生を終えられたら最高です)

「黒字でも倒産」を経験しかけた過去

編集部・S
鳥潟さんご自身にも、学び直しの重要性を実感したリアルな経験はありますか?
鳥潟さん
私は新卒でサイバーエージェントに入社したのち、友人と共同で会社を創業し、23歳から10年間経営全般に携わりました。当初3人だった組織は10年で70人ぐらいにまで大きくなりましたが、正直、ビジネスや経営を全然知らない若造が会社を動かしていたので、いろいろ地雷を踏みましたね……。
編集部・S
その地雷の話、詳しく聞きたいです(笑)

いろいろな「地雷」の話をしてくれました。

鳥潟さん
例えば、組織が拡大していくときによく起こる問題ってありますよね。まだ小さいうちはひとりやふたりで全体を見渡せていたのが、しっかり役割分担をしないと全然回らなくなってくる……。そこに気づけず、社内の不協和音が広がっていきました。また、「黒字でも倒産する」を経験しかけたことも……。
編集部・S
なんだか衝撃的なフレーズが出てきました。
鳥潟さん
1年間の利益が確定し、税金の支払いでちょうどキャッシュが底をついたのです。そのタイミングで大きな取引先からの支払いが遅延し、本当にキャッシュがない状況に……。実際の話です。
編集部・S
そのときはどうしたんですか?
鳥潟さん
1日単位の資金繰り表を作って、「この支払いが遅れたら役員報酬は全部ストップしよう」とか、ハラハラドキドキしていましたね。今になって振り返れば、ビジネスをもっと体系的に学んでいたら防げた失敗が数えきれないほどありました

体系的・網羅的にビジネスを学ぶ重要性

編集部・S
先ほど「体系的に」という言葉がありました。それまでの鳥潟さんは、どういう学び方をしていたのですか?
鳥潟さん
当時は、“何か問題が起きたら” 学ぶ、ということを繰り返していましたね。
編集部・S
場当たり的な学びだったのですね。
鳥潟さん
ところが、グロービスでMBAを学んで初めて、ビジネスを網羅的に学んでおくことの大切さに気付いたのです。つまり、経営やビジネスの全体像が把握できていると、いま起きている問題の根本原因や、次にどんな問題が起こるのかなんてこともわかるようになってくる

鳥潟さんが自身の経験をもとに作成した「経営における全体像」のスライド。

鳥潟さん
私が事業リーダーを務める『グロービス学び放題』も立ち上げから3年ほど経過し、いまや70人ぐらいの組織になりましたが、変な地雷は踏んでいないつもりです(笑)。体系的・網羅的にビジネスを知っているとだいぶ違うなと実感しています。

動画本数2,000本以上。ビジネススキル動画が見放題の『グロービス学び放題』は、サービス立ち上げから3年で累計受講者数6万人を突破した。

編集部・S
網羅的にビジネスを学ぶ——まさに鳥潟さんがいま手がけている『グロービス学び放題』が可能にしてくれることですね。
鳥潟さん
基本的な思考のフレームワークはもちろん、組織・リーダーシップや戦略・マーケティング、会計・財務に至るまで200を超えるコースがあり、それぞれがうまく紐づいているので、ビジネスの全体像を学ぶうえでは非常に優れていますね。また、動画サービスでもあるので、例えばプレゼンテーション術や交渉術といったテクニックを学ぶうえでも、映像を通してイメージがつかみやすいという良さもあります。
編集部・S
ビジネスパーソンにとっての学びといえば、「本を読む」ことが最も一般的なものかなと思っていたのですが……新しい学びの形だと感じました。
鳥潟さん
書籍は1冊につきテーマがひとつというのが基本なので、本だけで網羅しようとすると、それこそ100冊や200冊といった単位で必要になる。これはちょっと大変なので、こういったサービスは非常に役に立つのではないかと。一方で書籍には、ある領域をかなり深掘りできるというメリットもあります。『グロービス学び放題』で重要な部分を網羅的に学び、書籍を使ってさらに深く学んでいく。そういう使い分けもしてみれば、ビジネスパーソンの学びもぐんと効率化するのではないかと思います

【『グロービス学び放題』を詳しく知りたい方はこちら】 https://hodai.globis.co.jp/

【鳥潟幸志さん ほかのインタビュー記事はこちら】 「時間がない」は錯覚に過ぎなかった。1日 “たった10分” の勉強も、積み上がればすごいことになる。

【プロフィール】 鳥潟幸志(とりがた・こうじ) 埼玉大学教育学部卒業 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了 学位:MBA サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。 現在は、社内のEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行う。

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