社会生活をズムーズに送るためには、本音と建前の使い分けが必要だといいます。だからこそ、相手の気持ちが分からず、対応に悩むこともあるでしょう。
そこで今回は、相手の本音を引き出す「会話術」と、「微表情を読み取るポイント」を紹介します。
相手が本音で話してくれない原因
マイナビウーマンが2014年5月にWebアンケートを行なったところ、「周囲に“本音と建前が全く同じ(裏表がない)人”はどれくらいの割合でいるか?」という質問に対し、「0%(全くいない)」と答えた人が一番多かったそうです。その際、こんな意見があったそう。
・「うちの職場では仕事をスムーズに進めるために、嫌いな人とでも仲の良いふりをしてる人が多い」(27歳女性/医療・福祉/専門職) ・「全部言っていたら衝突するから」(31歳女性/金属・鉄鋼・化学/事務系専門職)
(引用元:ウーマンエキサイト|あなたが思う「建前と本音が全く同じ人」の特徴―「安易に同調しない」「竹を割ったような性格」(2014年5月31日))
一方で、ワーキングマザーのキャリア支援を行う株式会社MANABICIA代表の池原真佐子氏は、過去に本音を言って傷ついた経験があると、「また本音を言ったら否定されるんじゃないか? と思い込んでしまう」と話します。これは、同氏の経験なのだとか。
気が弱い性格の場合は、「嫌われるかもしれない」という不安で本音が言えないそう。
また、1000人以上の経営者へのインタビューを15年近く続けてきた藤沢久美氏によれば、優秀なリーダーほど繊細で傷つきやすい “気配りタイプ” が多く、本音を出さないのだそう。常に周囲や相手を気づかい、場や空気を読んで発言するからです。
それらを踏まえると、相手が本音で話してくれない原因として考えられるのはこちら。
・仕事をスムーズに進めるため ・相手との衝突を避けるため ・過去に本音を否定された経験がある ・相手に嫌われたくない ・忖度してしまう※ ※相手・周囲がどう思うか(どういって欲しいのか)推し量る
つまり、悪意なく本音を隠しているケースが多いということ。しかし、あまりにも建前ばかりで本音が見えないと、疑心暗鬼になって余計なことを考えたり、勘違いして間違った行動を起こしたりしかねません。ならば、ちょっとした会話術で、相手の本音を引き出してみましょう。
相手の本音を引き出す会話術
消費者インタビューやグループディスカッションのインタビュー、司会などを行なう「モデレーター」たちは、質問慣れしていない初対面の人々から限られた時間内に話を聞き出すテクニックを持っています。そこで、モデレーター養成講座を運営する株式会社シー・ユー代表取締役・早尾恭子氏の、「相手が話したくなる聞き方のコツ」を参考にした会話術を紹介します。
相手の本音を引き出す会話術1:限定せず漠然と聞く
物事を限定して質問すると、相手の答えも範囲が狭められてしまうそう。逆に質問が漠然としていると、相手の話題も広がるので、むしろ本音が見えてくるそうです。したがって、「ご提案させていただいた商品についてどう思われますか?」ではなく、「今回のご提案はいかがでしたか?」と聞くほうがいいわけです。
相手の本音を引き出す会話術2:話のひと区切りを待つ
警戒心を持っていたり、話をしながら思考をまとめていたりする場合があるので、相手の話がひと区切りするまでは、決して口を挟まずに、待ちましょう。そうすることで、本音につながる大事なキーワードが出てきやすくなるとのこと。
相手の本音を引き出す会話術3:大事なキーワードはオウム返し
ふいに相手から、本音につながる大事なキーワードが出てくる場合があります。そんなときは、すかさずオウム返ししてください。たとえば「実は〇〇に特化した製品を以前目にして……」という言葉に、「〇〇に特化した製品ですか」と興味深い面持ちでオウム返しするイメージです。すると相手は「受け入れられた」と感じ、リラックスできるので、さらに本音へと近づけるでしょう。
相手の本音を引き出す会話術4:話が横道にそれてもウエルカム
たとえ相手の答えが質問内容からズレていて、そのまま “あちこち” に行ってしまっても、決して「いや、すみません。さきほど質問したのは……」などと軌道修正するのは避けましょう。話が横道にそれた場合、その内容は相手が話したいことであり、なおかつ自分の言葉に触発され、次の話題に移っているはず。そこに本質が隠れているかもしれません。
相手の本音を引き出す会話術5:「そうなんだ!」の活用
聞いたことがある話だろうと、自分がよく知っている内容だろうと何だろうと、「へー、そうなんだ!」「そうなんですね!」「なるほど!」といった具合に、明るく元気に初めて聞いたかのように返答しましょう。それにより話が盛り上がり、相手が “話したい” という気持ちを高めてくれるはずです。
「微表情」から相手の本音を知るコツ
「会話術」だけではなく、「微表情を読み取るポイント」も知っておくと便利です。「微表情」は無意識下の表情変化なので、偽ることができないのだとか。
日本では数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーのひとり、清水健二氏の著書『微表情(0.2秒のホンネ)を見抜く技術』のなかから、ちょっとしたコツを教えてもらいます。
微表情を読み取るポイント1:シグナルを見分けよう
「嬉しい!」と目を見開いたときに上がったり、「うわ、その人ひどいねー!」などと怪訝な表情をした際には中央に寄って下がったりなど、驚きや困惑、怒りや悲しみなどを【派手】に示す眉の動きは「会話のシグナル」としてよく使われるそう。「会話のシグナル」とは、意識的に「伝えたくて見せている表情の変化」のこと。
逆に、本音を示す「感情のシグナル」は、その人物が悟られないようにしているため、【微細で瞬間的】なのだとか。
このシグナルを見分けることが、本音を見分けることになります。
微表情を読み取るポイント2:笑顔をチェックしよう
清水健二氏によれば、愛想笑いを見抜くためのチェックポイントは次のとおり
1.真の笑顔は左右対称 / 愛想笑いは非対称 2.真の笑顔は0.5秒~4秒 / 愛想笑いはそれ以上続くことも 3.真の笑顔は眼輪筋が使われる / 愛想笑いは眼輪筋を使わない 4.真の笑顔はゆっくり消える / 愛想笑いは突然あらわれ、突然消える 5.真の笑顔は目と口の動きがシンクロ / 愛想笑いは目と口の動きがズレる
なお、3番目はいわゆる「愛想笑いは目が笑っていない」ということ。眼輪筋を使い愛想笑いできるツワモノもいますが、その場合は真の笑顔に比べ、不自然に「笑いすぎている」傾向にあるそうです。
*** 相手の本音を引き出す「会話術」と「微表情を読み取るポイント」を紹介しました。相手の気持ちを察しながら、有意義な活用のために本音を引き出してみてくださいね。
(参考) ウーマンエキサイト|あなたが思う「建前と本音が全く同じ人」の特徴―「安易に同調しない」「竹を割ったような性格」(2014年5月31日) ログミー[o_O]|本音を言えないのは「否定された過去がくすぶっているから」 本心を隠しがちな人の背景を紐解く ダイヤモンド・オンライン|いいリーダーほど「本音」を言わない | 最高のリーダーは何もしない:内向型人間が最強のチームをつくる! grape [グレイプ]|「本音を言えない人」の特徴〜本音を言うことの怖さを知っているから? EL BORDE (エル・ボルデ) |変革のメソッド|【質問力特集:後編】聞き出すプロが伝授! 相手が話したくなる聞き方のコツとは? Career Supli|本音は0.2秒で見抜ける!微表情からホントのキモチを知る技術