「丁寧に本を読んだはずなのに、知識として身についていない気がする……」
「限られた時間のなかで、もっと効率的に本を読めるようになりたい……」
こんな悩みを持っている方はいませんか?

StudyHacker特別企画。超効率的な速読術『高速大量回転法(KTK法)』を生み出した宇都出雅巳(うつで・まさみ)さんをお迎えしてのインタビューの様子を、全2回にわたって皆さまにお届けします。

大学時代に読まれた速読術の本をきっかけに、以降30年間にわたって速読術や記憶術について実践研究されてきた宇都出さん。現在はトレスペクト教育研究所の代表として、速読術の講座はもちろん、勉強法の指導や企業研修など「学びのための支援」を幅広く実施されています。

そんな宇都出さんに、効率的な本の読み方について詳しくお話を伺いました。特別なテクニックは必要ない、目からウロコの読書術です。

“ゆっくり&じっくり” 読んではいけない

——本日はよろしくお願いいたします。今回は「読書術」というテーマでお話をお伺いしたいのですが、まずは、多くの人が陥りがちな “非効率的な本の読み方” を教えていただけますか?

宇都出さん:
今すぐわかろうとして止まってしまう。なんとか理解しようとゆっくりじっくり読んでしまう。多くの人が行なっている読み方ですが、じつはこれが一番非効率なんです。

丁寧にゆっくり読めばわかるようになると、私たちはどこかで思い込んでしまっているんですね。確かにゆっくり読んでいると、文章はすらすら読めるようになってきます。でも理解というのはそういうことではないんです。

これは認知科学の世界では「流暢性の幻想」と呼ばれています。文章をすらすら読めると、なんだかわかったような気になりますよね。でも実際には理解はしていません。ただ字面を追っているだけなんです。

多くの人は、読書とは “本から読み手への情報のダウンロード” だと思っています。情報を、本から自分のほうへと、どんどん持ってくるといったような。

でも実際に起こっているのは、“本と読み手とのコラボレーション” なのです。本と、読み手が持っている記憶——これをストックと私は呼んでいます——が反応するのが、読書経験なんです。だから、ストックが少ないなかで無理に情報を押し込めようとゆっくりじっくり読んでしまうのは、報われない努力なんです。

ただ、記憶は勝手に思い出されているので、そのことに多くの人は気づきません。なので、がんばってダウンロードするのです。

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ストックこそ命。そのための “ざっくり&繰り返し” 読み

——宇都出さんが提唱する “効率的な本の読み方” について、その理論を教えていただけますか?

宇都出さん:
本を効率的に読みたい。それって、単に「知っている内容の本を速く読みたい」というわけではありませんよね。それはそれでプラスになる部分もありますが、私たちが本当に求めているのって、知らなかったことを理解したり、新しい知識を獲得したり、といったことだと思うんです。そして記憶や理解というのは、自分が持っているストックと結びつかないと進んでいきません。

効率的な読み方を考えるうえで、ストックは外せません。ストックをいかに効率的に蓄えるかというのが、記憶や理解を求める速読には絶対に必要不可欠なポイントです。

知っている情報、なじみのある情報であれば、自分がすでに持っているストックと結びついて記憶になりますが、まったく知らない新しい情報は、結びつきようがありません。そういった情報は、「ワーキングメモリ」と呼ばれる、一時的に記憶ができる領域に保存されます。ただ、その容量が非常に小さいんです。このため、新しい情報を頑張って入れようとしても、ワーキングメモリからあふれた情報は、結局は流れていってしまってしまうのです。

だから、新しい情報を無駄なく蓄えるには、欲張らないことが大切。例えば、もくじや見出しにざっくり目を通す。情報量が少ないので、ワーキングメモリを圧迫しません。それを繰り返すなかでストックとなっていきますし、「この本は〇〇について書いてあるんだ」という大枠だけでも把握できれば、それもまた立派なストックになるというわけです。そのストックが土台になり、それに結びつく形でさらに細かい情報がストックとなっていきます。

また、自分がすでに持っているストックと結びつきやすいところを読むのも効果的です。例えば、ちょっと難しい本でも、「ここは知っている」「ここは自分が経験した分野だ」といった理由で読みやすい箇所ってあると思うんですよね。その部分を読めば、そこに関するストックがたまる。そうすると、さっきまではわからなかったけれども、新しいストックのおかげでちょっとは読めるようになるという箇所が、どんどん増えていくんです。

わからないところは積極的に飛ばしてかまいません。わかるところだけざっくりと読んで、ストックを蓄えてあげる。そのストックを使って読んで、また新しいストックを蓄える。この “ざっくり&繰り返し” のサイクルが最も効率的で、私は高速大量回転法(KTK法)と名づけています。

——速読というと「1冊を3分で一気に読む!」といったイメージが強いのですが、それとは違うのですね。

宇都出さん:
確かに、私の受講生の方にも「宇都出さんの速読って、速読じゃなくなっていますよね?」なんて言われたことはあります。「速読って、1回でいかに速く読むかでは?」「繰り返すと時間がかかるのでは?」なんて声もありますね。

いわゆる一般的な速読教室では、文字を読むスピードを速くするために「視点移動訓練」を行なったり、文字を認識する視野を拡大するために「視野拡大訓練」を行なったりします。そうすると一度に得られる情報量が増えるため、脳はなんとかそれを処理しようと頑張り、結果として “右脳がひらく” “脳が開発される” といった理論なんですね。

ただ、私自身も10以上の速読法の講座を学んだ経験がありますが、“右脳がひらく” “脳が開発される” なんてことは起こりませんでした。速く読めるようになったのって、結局はストックがたまっただけなんです。

“効率的に読む” ということを考えると、やっぱり “急がば回せ” なんですよ。“本と読み手とのコラボレーション” と述べた通り、本というのは結局のところストックで読むものなんです。ストックがない状態で速く読んでも理解できませんし、逆にゆっくりじっくり読んでも理解できるとは限らない。本当に速く理解して読もうと思ったら、この方法しかないと思っています。

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「物語・小説」と「知識を整理した本」では読み方が違う

——多くの人はゆっくりじっくり読むのが普通だと思っていますよね。なぜ、ざっくり繰り返す読み方が一般的になっていないのでしょうか?

宇都出さん:
ひとつは、ゆっくりじっくり読むほうが「読んだ」「読んでいる」という満足感が高いからでしょうね。先ほど紹介したワーキングメモリの働きで、一時的にせよ記憶したという実感は得られますし、「流暢性の幻想」で理解したつもりにもなれますから。

もうひとつは、子どものころからの読書習慣です。私たちはまず物語から本に親しみ始めますよね。この物語というのは、前から順番に話が流れていくので、読むときも前から順番に読むことが適しています。だから、ざっくり繰り返すよりも、ゆっくりじっくり読むようになっているんです。

一方、知識が体系的に整理された本では、ざっくり繰り返す読み方が効果的です。しかし、子どものころに物語で慣れ親しんだ読み方を引きずっているのです。

また、学校で使う教科書などは知識が体系的に整理された本なのですが、学校は基本的に集団授業です。みんながいっせいに進んでいくために、授業の進度に合わせて前から順番に、ゆっくりじっくり読むように訓練づけられてしまっているのです。

しかし、実際には、物語や小説は別として、ビジネス書にしても専門書にしても知識を扱っている本の場合、ざっくり繰り返して読むことが効果的なのです。これは知識の構造、本の構造を見てもらえばわかります。

知識をわかりやすく整理しようとすると、それは階層構造にならざるをえません。階層構造というのはピラミッド構造、ツリー構造とも表現されますが、大きな枠組みからそれがだんだんと細かく分かれていく構造です。ワーキングメモリが小容量であることから、わかりやすくしようとすると、どの知識も多かれ少なかれ、階層構造に整理されるのです。

そして、本の構造もこの階層構造になっています。章に分けられ、節に分けられ、そこにタイトル・見出しがつけられています。いわば、「ざっくり」とした形になっています。そして、製本されてパラパラと行ったり来たり繰り返しめくりやすい形にもなっています。

ざっくり繰り返し読む高速大量回転法(KTK法)は、階層構造に整理された知識をその構造に沿った形で読む方法であり、「本」という形を最大限活用する方法なのです。

【プロフィール】
宇都出雅巳(うつで・まさみ)
トレスペクト教育研究所代表。1967年生まれ。東京大学経済学部卒。
出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。30年にわたり、心理学や記憶術、速読を実践研究し、脳科学、認知科学の知見も積極的に取り入れた独自のコミュニケーション法・学習法を確立。企業研修やビジネスマン向けの講座・個別指導を行う。
主な著書に『どんな本でも大量に読める「速読の本」』(だいわ文庫)、『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)、『ゼロ秒勉強術』(大和書房)、『サクッと読めてアウトプット力を高める 集中読書術』(総合法令出版)などがある。

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ざっくり繰り返し読むほうが、知識の習得には効率的なのですね。次の第2回ではいよいよ、宇都出さんが開発された高速大量回転法の具体的なやり方を探ります。

■インタビュー第2回はこちら
読書にも勉強にも! “高速大量回転” のやり方とは?——「高速大量回転法」生みの親・宇都出雅巳さん特別インタビュー【第2回】

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サクッと読めてアウトプット力を高める 集中読書術

宇都出雅巳

総合法令出版 (2017)