時間をかけていろいろ調べたし、たくさん検討もした。でも、いざ決断しようとすると、「もっとほかに、最良の選択があるのではないか?」と考え、決められなくなってしまう。
それでは、最良の選択をするどころか、物事を遅らせて損害を大きくしてしまうかもしれません。意思決定を先延ばしするクセから脱出するコツを紹介しましょう。
意思決定において重要なこと
経営学・情報技術を担当するバブソン大学の特別教授、トーマス・H・ダベンポート氏は、「意思決定の先延ばしは、深刻な損害につながる恐れがある」と述べています。
経営コンサルタントの斎藤広達氏も、思考が停止した状態で単に「決められない」と意思決定を先延ばしすることに否定的です。
ところが両者とも、意図的な意思決定の先延ばしは肯定しています。斎藤氏いわく、論理的な意思決定の先延ばしをしたほうが、賢明な場合もあるとのこと。たとえば「いまは待つが、タイミングが来たらすばやく動く」といったことです。
したがって、意思決定において重要なことは次のとおり。
- 戦略のない「意思決定の先延ばし」はしないこと
- 「意思決定の先延ばし」をする場合は、明確な意図があること
- 意思決定のタイミングが、的確であること
これらを踏まえつつ、専門家の教えをもとに、意思決定を先延ばしするクセから脱出するコツを4つまとめました。
1. 選択肢の数を減らす
比較検討する選択肢を30ほど並べて「ダメだ、決められない」を繰り返しているなら、選択肢を思い切って5つ程度に減らしてしまいましょう。
「そんなことをしたら、いい選択肢を失いかねない」と心配するよりも、肝心なタイミングを逃し、“決断疲れ”で間違った判断をする心配をしたほうが賢明かもしれません。
スワースモア大学の心理学者、バリー・シュワルツ氏は、「人はできる限り多くの選択肢を持つべきだ」という、誤った考えにとらわれていると述べます。“決断疲れ” は、重要な決定の質を落とす可能性があるとのこと。
選択肢の数を制限するのが得策でしょう。
- あっさり選択肢の数を減らす
なお、選択肢の絞り込みは、内容に応じて〇〇分以内にと、制限時間を設けて行なうことをおすすめします。絞り込む際の “決断疲れ” が軽減できるはずです。
2. 影響の小さい決断はクイックに
意思決定にかける時間を判断する第一の基準は「重要度」だと、ダベンポート氏は言います。「意思決定による影響の大きさ」を自分で考えるか、信頼できる誰かに聞いてみるかするのが有効なのだそう。
そうして重要度を判断できれば、あとは以下のとおり簡単です。
- 影響の小さい意思決定:時間をかけない
- 重要な意思決定:少し時間をかける
影響が小さい決断をサッサと済ませれば、そのぶん重要な意思決定のほうに時間をかけ、データを集めて分析し、熟考できます。何よりも、少し前進することができるでしょう。
ただし、その際にも決して長時間熟考する必要はなく、1日か一晩で十分とのこと。また、無意識下の思考を活かすために、いったんそこから離れて
- 遊ぶ
- 運動する
- 休憩する
- 瞑想する
- 散歩する
- シャワーを浴びる
といった行動をとることも、意思決定には有効とのことです。
ちなみに、ペンシルべニア大学の心理学者、アダム・グラント氏は、プロジェクトに着手するのを少し先延ばしにすることで、あらゆるアイデアが浮かび、独創的なものができあがると伝えています。
影響が大きい案件だけではなく、 創造性を要する案件も、意思決定に少し時間をかけてもいいかもしれません。
3. 頻度の高い意思決定だけ先延ばし
今後も同じ意思決定を行なう可能性があるのならば、分析するための時間やお金を投じる意味もあると、ダベンポート氏は述べます。たとえば価格設定や在庫の再注文、人事採用などです。
また、再発している問題であれば、一歩引いてみる、あるいは一段高いところから眺めてみることで、シンプルな解決策が見つかるかもしれません。その時間を確保するためであれば、意思決定の先延ばしは必要だといえます。
逆をいえば、頻度の低い・重要度の低い意思決定は、分析する時間も、熟考する時間も必要ないわけです。
いま迷っても、仕方のない意思決定も同じだといえます。たとえば、ほぼ同じ条件で、将来性が未知数であることも同じ新規の仕入れ先、A社・B社・C社・D社のなかから1社に絞ることなどです。
仕分けて考え、早くできる意思決定から片づけていきましょう。
- 頻度の低い、重要度の低い意思決定:時間をかけない
- 何度も意思決定する機会があるもの:分析のため時間をかける
- 再発している問題:俯瞰して解決策を考えるため時間をかける
ちなみに、2016年の心理学研究(「優柔不断尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 1」)では、優柔不断な人は最初こそ決定に時間をかけるものの、意思決定の方法が確定すると、悩まなくなる可能性があると示唆されました。
つまり、どんなに優柔不断な人でも、頻度の高い意思決定だけは先延ばしして、時間をかけて分析し、
「〇〇〇と△△△のポイントだけ押さえて判断する」
と決めてさえいれば、その後の意思決定におけるスピードや精度が格段に向上するわけです。
4. 意思決定の期限を定める
ダベンポート氏は、意思決定の最後の手段として、どうしても決断できなかったら、期限を区切るようすすめています。
- 意思決定の期限を設定し、あとは期限内に決めることだけを考える
「もう、いいや……、とにかく明日には決めちゃおう……」となってしまった経験はありませんか?
そんなふうに、結局は “決断疲れ” してしまうくらいなら、時間を無駄づかいせずに期限を決めて、早々に意思決定してしまいましょう!
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意思決定を先延ばしするクセから脱出するコツ4つを紹介しました。
- 選択肢の数を減らす
- 影響の小さい決断はクイックに
- 頻度の高い意思決定だけ先延ばし
- 意思決定の期限を定める
いいかたちで決定できるといいですね!
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|あれこれ考えるのをやめて、さっさと決断すべき時 優柔不断から抜け出す4つのステップ
BUSINESS INSIDER JAPAN|意思決定を楽にする6つの研究結果
斎藤聖子, 緑川晶(2016),「優柔不断尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 1」, 心理学研究, 日本心理学会, Vol.87, No.5, pp.535–545.
斎藤広達(2014),『図解 サラリーマンの決定力講座』, パンローリング株式会社.
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STUDY HACKER 編集部
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