「いろいろなことが気になって、仕事・勉強に集中できない」
「忙しく過ごしているのに、やるべきことができていない」
「自分は集中力が足りないと感じる」
このように、仕事や勉強を頑張りたいという意思はあるにもかかわらず、1日の終わりに「今日も達成感がなかったな……」と感じてしまう人は、計画の立て方に工夫が必要かもしれません。
今回は、こういった悩みを解決するのにオススメの効率化メソッド「アイビー・リー・メソッド」をご紹介しましょう。
アイビー・リー・メソッドとは
アイビー・リー・メソッドの起源は、なんと20世紀前半。当時、アメリカ最大の鉄銅会社であったベツレヘム・スチール・コーポレーションの社長チャールズ・M・シュワブ氏は、会社の効率を改善するため、コンサルタントのアイビー・リー氏を雇いました。シュワブ氏は、経営の効率化のコンサルティングをリー氏に依頼します。そこで、リー氏が考案したメソッドが、アイビー・リー・メソッドです。
ポイントは次の通り。
- 夜、紙に「明日やるべきこと」を6つメモします
- その6つの項目を重要だと思う順に番号を振ります
- 翌日、メモの順番に沿って仕事(勉強)を進めましょう
- 全部できなかった場合は、悔やむことなく忘れましょう
- その日の夜も、明日のための6項目を新しくメモします
- 1〜6を毎日行ないます
リー氏のメソッドを自ら実践したシュワブ氏は、その効果を実感し、従業員らにアイビー・リー・メソッドを広めたのだとか。
アイビー・リー・メソッドのメリット1:決断の回数を減らせる
アイビー・リー・メソッドのメリットのひとつは、あえて選択肢を6つに狭めることで、集中力を上げられるという点です。
選択肢が多いというだけで、人は「決断のエネルギーを消費してしまう」ことをご存知ですか? コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授は、著書『選択の科学』で次のような実験を紹介しています。
あるスーパーの試食コーナーで、24種類のジャムを揃えた週末と、6種類のジャムを揃えた週末の売り上げを比較した。
すると、ジャムの種類が多い週末のほうが、多くのお客さんが立ち寄ったものの、最終的にジャムを購入したお客さんの数は、種類が少なかった週末のほうが10倍ほど多かった。
多すぎる選択肢は、人のエネルギーを奪い、決断できなくしてしまうのです。
スティーブ・ジョブズ氏は、洋服選びに決断のエネルギーを使わないため、毎日同じ服を着ていたことで有名です。多くの従業員を束ね、ヒット商品を生み出したジョブス氏も、選択肢を増やさない努力をしていたのですね。
エネルギーは、タスクを選ぶことではなく、仕事のタスクを達成することや、勉強のノルマを達成することで使いたいところです。今日やるべき6つのタスクが、朝起きた段階ですでに決まっていれば、決断疲れをなくすことができ、そのぶん目の前のことに集中できるようになるでしょう。
アイビー・リー・メソッドのメリット2:優先順位が決められている
もうひとつのポイントは、事前に番号を振ることで、優先順位が決められていること。皆さんのなかには、常に頭の中に複数の「やるべきことリスト」があったり、いくつかのToDoを同時にこなそうとしていたりする人も多いことでしょう。このようにマルチタスクを実践すると、一見複数の事柄を同時に進められて効率が良いように思えるかもしれませんが、じつはそれは間違い。マルチタスクは、本当は非常に効率の悪い行為なのです。
ミシガン大学の心理学教授らは、マルチタスクをする人たちは、タスクをひとつずつこなす人たちよりも、40パーセントも生産性が低いという研究結果を発表しています。
脳は、タスクを実行する際に【1. ゴールを決める作業(ひとつのことから、別の仕事に移る際の「やることを決める」プロセス)】と【2. 活動を開始する作業(前に行なっていたタスクから新しいタスクに移る際、新しい方の「進め方を決める」プロセス)】のふたつを瞬時に行なっているそう。マルチタスクをしている人は、この作業を何度も繰り返しており、これがタイムロスにつながるのだとか。
仕事を早く終わらせたい人ほど、マルチタスクよりも、ひとつひとつのタスクに集中して終わらせるべきなのです。
実際にやってみた
実際に、筆者がアイビー・リー・メソッドを実践してみました。まずは夜間に、明日やるべきことを6つに絞って書き出します。
優先順位を考え、重要な順に番号を振ります。
翌日、1番から順番にタスクを達成していき、終わったものには横線を引きます。その日は5番と6番が終わらなかったので、翌日に持ち越すことにしました。
実際にやってみて印象的だったのは、リストがあるだけで安心感があったことです。普段は、やるべきことがたくさんあると、つい焦ってしまうのですが、タスクが1〜6まで書き出してあることによって、ガイダンスがあるように感じられて安心しました。
また、ひとつのタスクを実行しているときに、ついほかのタスクが気になってしまっても、事前に番号を振っているため「順番を守ってタスクをこなそう」という気になり、マルチタスクに陥ることがなかったのも良かったです。「タスクが完了したら横線を引く」というのも達成感がありました。
前日に重要なタスクを洗い出しておくことで、やるべきことを忘れる心配がなかったのもメリットのひとつだと感じました。学生ならば、試験勉強にも応用できそうだと思います。ビジネスパーソンの場合は、同僚に話しかけられたり、会議があったりと、タスクを中断せざるを得ない場面が多いかもしれませんが、そういう人こそリストを作っておいたほうが、席に戻った際、すぐにやるべきことに取りかかれて効率的ではないでしょうか。
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マルチタスクに陥りがちな人や、仕事や勉強で確実にステップアップしたい人には特に、アイビー・リー・メソッドがおすすめです。ぜひ、試してみてくださいね。
(参考)
BUSINESS INSIDER|100年の歴史を持つ“生産性向上”メソッド「アイビー・リー・メソッド」とは
DaiGo(2017),『自分を操る超集中力』,かんき出版
シーナ・アイエンガー(2010),『選択の科学』, 文藝春秋.
Very Well Mind|How Multitasking Affects Productivity and Brain Health
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。