「〇〇の件どうしよう」「〇〇にいろいろ書いてあるらしい」「そういえばネットで読んだ記事が……」「あ、LINE通知が……」「えー! これは耳寄りな情報だ!」
そんな毎日を過ごすあなたの脳にある情報の中で、いったい何割が有効活用されているでしょう。頭の中で情報が散らかりすぎて、必要なものを取り出すことができなくなってはいませんか?
もしも、記憶力が低下した、アイデアが浮かばなくなった、頭がスッキリしないと感じたり、ある問題について長く情報収集を行ない、ずっと考えているのに、
- 解決できない
- 考えがまとまらない
と感じたりする場合は、頭の中で「ゴミ化」した情報を断捨離してしまいましょう。筆者も実践してみます。
わたしたちの脳は今、オーバーフロー状態
分子古生物学者の更科功氏によると、4万年前に絶滅したネアンデルタール人や、1万年前にさかのぼるヒトの祖先のほうが、現代人よりも脳の容量や活動量が勝っていたそうです。
それなのに、今わたしたちは、酸素のように存在する情報を大量に吸い込み続けています。酸素なら二酸化炭素と交換され、体外へと吐き出されますが、「情報」となるとそうもいきません。
マーケティング・エージェンシーLEWIS社のCEOを務める傍ら、各界の大物にコーチングを行なうクリス・ルイス氏は、“情報洪水の中でわたしたちの創造性は確実に削がれている” と問題意識を持ち、『TOO FAST TO THINK なぜ、あなたはいつも忙しくて頭がまわらないのか』を著したそうです。
多くの現代人が肌身離さず持ち歩くスマートフォンからは、文字や映像などの膨大な情報が絶え間なく発信され、わたしたちの脳に流入し続けています。 そのため、現在は多くの医師が「脳過労」という概念を認識しているのだとか。脳神経外科医の天野惠市氏は、脳が情報だらけの状況を仮に「オーバーフロー脳」と名づけているそう。
この状態を長く放置していると、脳の情報処理が追いつかなくなり、もの忘れが激しくなって、判断力や意欲までも低下してしまうといいます。
いらない情報は捨ててしまおう
株式会社ショーケース代表取締役社長の永田豊志氏は、頭がモヤモヤするなら「頭の片づけ」を行なうよう、以前からすすめています。不用となりゴミ化した情報は、日常生活で生まれるゴミ同様に、わたしたちにとってマイナスな存在になっているからです。
たとえば、「Aを解決したいS君」が――
――とします。
ただでさえ情報にあふれた現代で、意図して情報をたくさんインプットしたS君の頭の中に、余分な情報が入りすぎているのは明らかです。
永田氏によれば、不要な情報はノイズとなるため、成果の妨げになってしまうとのこと。そうしたことから同氏は、情報をインプットする際に、
- 自分のキーワード
- 自分のテーマ
を常に「しっかりと」意識しながら行なうようすすめています。そうすれば、不要な情報は勝手にこぼれ落ちてくれるので、情報のゴミ化も防げるとのことです。
しかし、もしもS君のように、たくさんの情報をインプットしてしまい、頭の中がゴチャゴチャになって物事を判断しにくくなってしまった場合は、ゴミ化した情報の断捨離が必要です。
それには、メタ認知が役立つはずですよ。
メタ認知で、頭の中を見える化
メタ認知とは、自分を客観的に把握し、コントロールする能力のこと。アメリカの心理学者 ジョン・H・フラベル氏が 1970 年代に提唱した概念です。
- 認知=「知覚・記憶・学習・言語・思考」など
- メタ=「高い次元の」
- メタ認知=「自己の認知活動を、より高い視点から認識し、制御すること」
なぜ、ゴミ情報の断捨離にメタ認知が役立つかといえば、理由はとても単純で、客観的になると頭の中の情報を並べたり、仕分けたりしやすくなるから。メタ認知で、自分の頭の中にある「情報・感情・考え」などを、同等のエレメントとして淡々と扱ってしまうのです。
加えて今回は、頭の中をフラットに見える化するために、「ハニカム構造」を活用してみます。
頭の中の「見える化&断捨離」をやってみた:1
「ハニカム構造」とは、ハチの巣のように六角形を並べた構造のこと。
この構造を選んだ理由は、属性を気にせず、関連する情報をフラットに並べられるからです。
PowerPointやWordのSmartArt(図を作成するツール) には、「蜂の巣状の六角形」や「左右交替積み上げ六角形」といった、相互に関連した内容を入れていく「ハニカム構造」のレイアウトがあるので、こちらをアレンジしながら活用するのもひとつの手です。
次の例を用いて、SmartArtを活用したバージョンで実践してみましょう。
S君は、1人暮らしの住まいを東京都内で探しています。すでに、あらゆるメディアや周囲の人々から、さまざまなエリア情報を大量に仕入れている状態です。しかし、情報が多すぎて、いったいどこから探していけばいいのか、わからなくなってしまいました。
S君の頭の中をフラットに見える化するべく、
- 中央にテーマを書く
- 隣の六角形と相互に関する「情報・感情・考え」を書いていく
といったシンプルな手順で、S君の頭の中を「ハニカム構造」で見える化してみると、こんな感じになります。
このように、頭の中をフラットにしてみると、不必要な情報(あきらかに不可能・それほど望んでいない・特になくていい)が見えてくるはず。
あとは、手書きならマル・バツ印を、パソコンでつくったなら【要】を「イエロー」、【不用】を「グレー」、【よくわからない】は「白」といった具合に、色分けしてしまえばいいだけです。
頭がモヤモヤしたら、こうして「仕分けて→断捨離する」を行なっていけば、必要なことが見えてきて、妥協点も見つけやすくなるはずです。
S君は憧れのエリアと、現実的なエリアとの妥協点が見えたかもしれません。
頭の中の「見える化&断捨離」をやってみた:2
では、筆者もやってみます。今度は手書きにしてみましょう。
手書きの場合は六角形を書くのは少し面倒なので、「ハニカム構造」の代用として「ダイヤ柄」にします。フラット化の効果は問題ないはず。
じつは今、仕事のパフォーマンスを低下させる大きな問題として、筆者が解決しなければならないのは「頭痛」です。世の中に莫大なヘルスケア情報があふれているなか、筆者自身もこれまで多くの健康情報を意図的にインプットしてきたのですから、なかには改善に導く有力な情報があるはず。
そのためにも、頭の中(情報・感情・考え)をフラットに見える化して→仕分け→断捨離してみます。
ひととおり書いてみると、こんな感じ。
あとは【要】【不用】【よくわからない】を、手持ちのペンでマル・バツをつけたり、二重に丸をつけたり、濃くしたり、星印をつけたりして、仕分けていきます。
ゴミ情報というわけでもありませんが、現時点で必要のない情報は、気にせず「×」をつけていきます。
すると思いのほか、かなり役立ちそうな習慣を導き出してくれました。
やってみた感想
頭の中を見える化して、いらない情報を断捨離してみたら、「頭の中にあったのに、役立てていなかった情報」に気づくことができました。
少し前に、高山病予防は酸素を多く取り込み、ゆっくり呼吸することであり、高山病といえば、第一に起こるのが頭痛だとテレビで観ていたのです。まずここで、仕事中に呼吸が浅くなっていることに気づきました。
また、そこから自然つながりで近所に河川敷(手書きの『河原』は誤り)があることを思い出し、肩こりの原因となる重い荷物を持たず、窮屈ではない服装で、毎朝ほんの短い時間だけでも河川敷を散歩し、ゆっくり呼吸する習慣を取り入れよう、と思い立ったわけです。
結果として、その心地よく爽快な習慣が少し楽しみになり、快適な気分もあいまって、頭痛が少し軽減したように感じています。
何よりも、「この頭痛をどうしよう」といったモヤモヤ感が減ったので、仕事に集中しやすくなったことが大きいかもしれません。
なぜ、これほど単純でいいアイデアを思いつかなかったのか、今となっては不思議なほどです。それもこれも、頭の中にゴミが散乱していたからなのですね……。
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何かお困りですか?
ならば、ぜひとも頭の中の情報の断捨離をしてみてください。 問題を解決できないのは、 アイデアが浮かんでこないのは、 情報が足りないからではなく、情報が多すぎて重要なことを見つけにくいからかもしれませんよ。
(参考)
東洋経済オンライン|ヒトが「ネアンデルタール人」を絶滅させた
CANVAS|あなたの創造性を殺しているのは、半径50cm内にある便利な道具たち!?
NHK クローズアップ現代+|“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!?
ITmedia エンタープライズ|頭の片付けルールその1:必要な情報だけ以外を「捨てる」
カオナビ人事用語集|メタ認知とは? 意味、重要性、具体例、高める方法について【メタって何?】
奈良教育大学|メタ認知に関心のある方へ
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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