「作業スピードを上げるべく、いろいろ試しているが効果が出ない」
「定時に仕事を終わらせようと頑張って手を動かすものの、残業もしばしば」
このように仕事が遅くて悩んでいるなら、効率低下につながる “あること” をやめてみましょう。じつは、コミュニケーションやチームの作業が円滑に進むよう、よかれと思ってやっていることが、逆にあなた自身の作業効率を下げているかもしれないのです。
そこで今回は、気を使いすぎるせいで仕事がなかなか終わらないあなたが「やめる」べき4つの行動を紹介します。
【1】割り込み仕事にすぐ対応するのをやめる
「あ、〇〇さん、書類を整理しておいてくれる?」
「急ぎなんだけど、アンケート結果を集計しておいてくれる?」
こうした「割り込み仕事」が発生したとき、「時間がかからなさそうだから」「急ぎだと言われたから」となんにでもすぐに対応するのが習慣になっていませんか?
『「段取りが良い人」と「段取りが悪い人」の習慣』著者でビジネスインストラクターの鈴木真理子氏は、すべての割り込み仕事に「即対応」するのはNGだと言います。
というのも、それまで進めていた作業を一度中断すると集中力が切れてしまうからです。『最高の脳で働く方法』著者でコンサルタントのデイビッド・ロック氏いわく、いったん集中が途切れたあと、もとの作業へまた完全に集中するまでには、25分もかかるそう。当然、仕事のスピードは落ちてしまいます。
とはいえ、割り込み仕事は避けられないもの。対応策として鈴木氏は、割り込み仕事を振られたら、そのつど優先順位を精査することを挙げています。「至急」や「今日中に」と急かされた場合でも、優先順位の精査を忘れてはいけないと鈴木氏。「いまは会議資料を作成中ですが、どちらを先に進めましょうか?」と、相手に優先順位を確認するのも効果的だそうですよ。
割り込み仕事にすぐ対応するのはやめ、本来の業務とどちらを優先すべきかを考えるようにしましょう。そうすれば、仕事の効率を下げずにすむはずです。
【2】困っている人にすぐ手を差し伸べるのをやめる
同僚の元気がないと、優しい人ほど「どうしたのだろう?」と気になってしまうもの。しかし、仕事を早く進めるには、「必要以上に」他人を気にかける言動はNGだと、『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』著者でコミュニケーションデザイナーの吉田幸弘氏は言います。
なぜなら、相手にじっくり寄り添いすぎた結果、自分の仕事が滞ってしまう可能性があるからです。相手が実務に関して困っているのでなければ、手を差し伸べる必要はないと吉田氏。
たとえば、チーム内に欠勤者が出たため、ひとりで電話応対をすることになり困っている人がいるなら、その人のことは助けたほうがよいでしょう。
一方で、部下がため息をついているのを単に見かけただけの場合は、自分の仕事を止めてまであえて声をかける必要はありません。業務上の不安があるのか、プライベートのことで悩んでいるのか判断できないからです。
また、ため息の理由が業務上の不安であったとしても、仕事で乗り越えるべき壁にぶつかっている部下に対して、すぐ助け舟を出さなくていいと吉田氏。部下が同じ壁にぶつかるたびに、助けなければならなくなると言います。
たとえ、午前中に終えるべきデータ入力が終わらず部下が困っているのだとしても、手助けは不要。仕方がないと手伝ったら、部下はスキルを上げるチャンスを失います。次も手伝ってもらえるだろうと思われてしまう可能性も。
困っている人を放っておけない優しさがあるのは、決して悪いことではありません。しかしそのせいで自分の仕事が滞っているのなら考えものです。すぐに手を差し伸べるのはやめましょう。
【3】丁寧すぎるメール対応をやめる
仕事関連で送るメールの文面に気を使うのは大切なこと。でも、大量のメールを処理する場合は返信だけで多くの時間がかかるので、割りきりも必要だと、税理士で『「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」の習慣』著者の山本憲明氏は言います。
「仕事が遅い人は、丁寧すぎるメールを送っている」と説く山本氏。同様の意見を述べる前出の鈴木氏は、特に社内メールを短く書くことをすすめています。理由は、社内メールの主な目的は、報告・連絡・相談だから。 “身内” に送るメールには、丁寧さはそこまで求められないということです。
社内メールを手短に済ませるには、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』著者の石川和男氏が挙げる以下の方法が参考になるでしょう。
メールは原則5行以内にする
例)会議の日程を知らせる場合
人事部の○○です。(1)
会議の日程が決まりましたので、ご連絡いたします。(2)
日時:△月×日 13:00〜14:00(3)
場所:会議室A(4)
ご都合が悪い場合は日程を再調整しますので、お知らせください。(5)
内容はひとつのメールにひとつだけ入れる
例)企画書の修正版を確認してほしい場合
企画部アシスタントの○○です。
キャンペーン企画書を修正しましたので、お送りします。
お手数ですが、ご確認よろしくお願いいたします。
結論→理由→詳細の順で書く
例)勉強会に誘われたが断る場合
今回の勉強会は、残念ながら参加を見合わせます。(結論)
今週は業務が立て込んでおり、残業続きになりそうです。(理由)
月末にコンペが控えているため、準備しなければいけません。(詳細)
また、丁寧にメール対応をしている人のなかには、メールが届いたらすぐに返信しなければと考える人もいるかもしれません。しかし、そのやり方では、常にメール対応をし続ける羽目になるもの。当然、本来やるべき仕事は進みません。
そこでたとえば、メールは基本的に1日4回(午前9時、13時、15時、終業時)チェックするなどのルールを決め、それ以外の時間は自分の仕事に集中するとよいと石川氏は言います。
仕事が遅い人は、丁寧すぎるメール対応をやめれば、無駄な時間を減らせて作業効率がアップしますよ。
【4】情報収集に時間をかけるのをやめる
「やり直しがないよう、プレゼン資料を作成するときは入念に下調べをする」
「新しい仕事をするときは、失敗しないようにハウツー本を熟読する」
こうしたやり方は一見すると、しっかり準備をしていて、仕事の成果をすぐ上げられそうに思えますが、じつはその逆。情報収集(=インプット)に必要以上の時間をとる人は、仕事が遅くなりがちだと、マーケティングコンサルタントで仕事術に詳しい上岡正明氏は言います。
なぜなら、不安を解消するためにインプットを繰り返していると、アウトプットまでに時間がかかって、タイムロスを生むからです。上岡氏は、仕事が遅い人は完璧主義者が多く、1回めのアウトプットから100点を目指しがちだと指摘しています。
インプットに時間をかけてひとりで悩むより、早めにアウトプットをして修正が必要なところは改善するほうが、結果的に早く仕事が終わると上岡氏。60点くらいの不完全な出来であっても、アウトプットしてしまったほうがよいそうです。
たとえば、30代男性をターゲットにした商品のプレゼン資料をつくる場合。すでにあるアンケート結果をもとに資料をつくると最初に決めたら、ひととおりデータをそろえたところで、すぐ資料作成に取りかかりましょう。
「新聞や雑誌にいい情報があるのでは?」「インターネットで検索して調べてみよう」と、ほかのデータまで気にしだしたらきりがありません。上司から指摘を受けたら、改善をすればいいのです。
仕事が遅い人は情報収集に時間をかけるのをやめ、「最初から完璧を目指さなくてもいい、失敗しても改善すればいい」と割りきって、早めにアウトプットするようにしましょう。
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作業効率を下げる4つの行動、あなたは当てはまりましたか? すでに習慣になっている人は、少しずつでもやめられるように意識してみましょう。
(参考)
Precious.jp|社内メールに時間をかけるのは時間の無駄!「仕事が遅い人」のNG習慣5選
デイビッド・ロック (2019), 『最高の脳で働く方法 −Your Brain at Work』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
プレジデントオンライン|メール確認は1日3回まで、根拠なき妄想…実行すると幸福度が上がる新習慣3つ 世界的IT企業が休メール日を設定
STUDY HACKER|「仕事が遅い人」がやりがちな5大NG行動。“優しすぎる” と仕事は全然進まない。
まいにちdoda|【いくつ当てはまる?】仕事が遅い人がやってしまっている4つの習慣
リクナビNEXTジャーナル|ムダなメール対応の時間をなくして、残業を減らす「12のルール」
プレジデントオンライン|「仕事が遅い」と思われている人が根本的に勘違いしていること 「コツコツ頑張る人」ほど損する時代
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。