仕事の効率アップを図ろうと思った場合、「前日のうちにやるべきタスクをリストアップすべき」というふうに、「こうすべきだ」という思考にとらわれてしまいがち。その一方で、「こうしてはいけない」というNG事項もあるはずです。
そこで、著書『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』(あさ出版)が話題のコミュニケーションデザイナー・吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さんに、仕事効率アップのために重要となる「してはいけないこと」を挙げてもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)
【NG1】他人の悪いところ探しをしてしまう
人のいいところと悪いところでは、どちらが目につきますか? その相手との関係性によっても違うかもしれませんが、悪いところのほうが目につきやすいはず。
これが仕事の効率にどう関わるのかについては、部下に仕事を任せる状況を想像してもらえるとわかりやすいでしょう。部下の悪いところばかりを見ている人は、「あいつに任せていて大丈夫かな」といらぬ心配をしてしまう。そうして自分の仕事に集中できなくなるのです。
そういう事態を避けるためには、逆に人のいいところを見つけてあげればいい。人の長所と短所は表裏一体ということが多いものです。たとえば、「チャレンジ精神がない」ように見える人は、見方を変えれば「慎重」とも言えます。
そうしていいところを見つけて、むやみに他人を心配することがなくなれば、自分の仕事に集中でき、効率が上がっていくというわけです。
【NG2】困っている人を助けようとしてしまう
困っている人を助けようとしない――こう言うと、とても薄情な人に思えるかもしれませんが、そうではありません。もちろん、誰かが急に休んだために、普段はふたりでやっている仕事をひとりでやることになって困っているような人がいれば、当然助けてあげるべきです。
ここでの困っている人とは、実務に関して困っている人ではありません。たとえば、朝からどうも元気がない人がいたとします。優しい人ほど、「どうしたのかな」と気になってしまうものでしょう。
でも、よくよく聞いてみると、プライベートでちょっとした悩みがあるとか、ただ前日に飲みすぎて体調が悪いというような、「大したことではないじゃないか」というのもよくある話。必要以上に他人を気にかけて、自分の仕事を滞らせるようなことがないようにしたいものです。
あるいは、仕事で乗り越えるべき壁にぶつかっている部下や後輩も、困っている人と言えるでしょう。その場合も、本当に助けが必要なとき以外は助ける必要はありません。
その壁は、部下や後輩が成長するために必要な壁なのですから、そこで大きく成長してもらったほうが、将来的にチーム全体のパフォーマンスが上がるからです。そこで必要以上に手を差し伸べてしまうと、部下や後輩が次にまた同じ壁にぶつかるたびに助けなければならなくなってしまいます。
【NG3】「嫌われたくない精神」を持ってしまう
「嫌われたくない精神」を持たないというのは、協調性を大事にする日本人にとって苦手なことかもしれません。どうしても、多くの人が他人から嫌われたくないと思ってしまうものです。でも、その考え方は、仕事の効率化を図るためには大きな問題となります。
「嫌われたくない」と思っていると、相手の顔色をうかがうことになりますから、仕事を早く進めたり成果を出したりするために本当ならその人に頼みたいことも頼めないし、言いたいことも言えなくなってしまう。当然仕事は早く終わりませんし、成果も出ないということになるのです。
でも、「嫌われたくない」と思って長年生きてきた人は、いきなり「嫌われてもいい」とは思えないもの。そういう人は、しっかり「理由づけ」することを意識しましょう。
たとえば、会議が長引いて出席者が疲れてしまい、議論も停滞している状況があるとしましょう。嫌われたくない人の場合、上司に「疲れたか?」と聞かれても「いや、大丈夫です」なんて答えて無駄な時間を過ごしてしまいます。
でも、たとえ「嫌われてもいい」と思えなくとも、自分に対して「この状況では有意義な議論はできない」という理由づけをしてあげれば、「今日は次の議題で最後にして、残りの議題については後日にしましょう」というふうに提案できるのではないでしょうか。
【NG4】「二次感情=怒り」に振り回されてしまう
「一次感情」とは、何かが起きたときにまず湧いてきた感情のことを指します。信頼している部下に依頼していた企画書の提出が遅れた際に、「信頼していたのに残念だな、悲しい」と感じた。これが一次感情です。
そして「二次感情」とは、その一次感情から生まれる次の感情のこと。こういったケースでは、二次感情は「怒り」になることが多いものです。見方を変えれば、二次感情である怒りが、自分がいま現在抱いている感情となります。
すると、この例の場合なら、その怒りを部下にぶつけてしまう人も多いのです。でも、怒りをぶつけたところで企画書が上がってくるわけではありません。もっと言えば、部下との人間関係を壊してしまって、今後の仕事の効率を下げてしまうことにもなりかねません。
そういうときは、二次感情である怒りではなく、一次感情を伝えてみましょう。この例なら、「おまえのことを信頼していたのに、残念だし悲しいよ」と部下に伝えるのです。すると部下のほうも、怒りをぶつけられる場合とは違って、素直に「悪いことをしたな」と感じ、可能な限り早く企画書を上げてくれるはずです。
【NG5】不安を頭の中で片づけようとしてしまう
仕事をしていると、「来年以降の売上は大丈夫かな?」「いまの仕事、期日に間に合うかな?」というふうに、さまざまな不安がつきまとうものです。先に挙げた怒りもそうですが、不安やイライラなどネガティブな感情は、そのままではなかなか頭の中から消え去ってくれないものですよね。
そうであるなら、頭の中から自分で出してあげればいい。不安を抱えているなら、何が不安なのかと書き出してみるわけです。
そうして文字にしてみると、おもしろいもので、頭の中にあったときより小さいものだと感じることが多く、あっという間に気持ちが楽になって仕事に集中できるようになるのです。
【吉田幸弘さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「仕事が早く終わる人」3つの特徴。スタバ思考・コンドル思考・オーウェル思考って何のこと?
一流になりきれない二流リーダーは “この5つ” をしてしまっている。
【プロフィール】
吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)
1970年3月12日生まれ、東京都出身。コミュニケーションデザイナー。人材育成コンサルタント。上司向けコーチ。成城大学在学中は体育会ボート部に所属し、その頃からメンバーに対するリーダーシップ論を学ぶ。卒業後、大手旅行会社を経て学校法人へ転職。1年間で70件以上の新規開拓をして広報リーダーとなるも、自身の「怒ってばかりの不器用なコミュニケーション」によってチームを崩壊させてしまう。結果、職場を去ることとなり、外資系専門商社に転職。転職後も周囲のメンバーとうまくコミュニケーションが取れず、降格人事を経験してクビ寸前の状態となる。悩んだ揚げ句に体調を崩し入院。見舞いに来てくれた友人のすすめで学んだ交渉術を駆使して劇的に営業成績を改善し、マネージャーに再昇格。その後、社外での営業コンサルタント・コーチとしての活動を経て、2011年に独立。現在は経営者・中間管理職の人材に向けてコーチングの手法を使った人材育成、チームビルディング、売上改善法のコンサルティング活動を行う。また、営業力アップ、モチベーションアップ、褒め方・叱り方・伝え方をベースにしたコミュニケーション等の各種セミナーも開催している。著書に『部下に9割任せる!』(フォレスト出版)、『リーダーの「やってはいけない」』(PHP研究所)、『誰でもすぐ使える雑談術』(さくら舎)、『西郷どん式 リーダーの流儀』(扶桑社)、『リーダーの一流、二流、三流』(明日香出版社)、『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』(ダイヤモンド社)などがある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。