SNSを活用した「新しい読書習慣」。次に読む本がすぐに見つかる方法

次に読む本をSNSでリサーチしているイメージ

「スマホ依存」「SNS依存」という言葉があるように、スマホやSNSとの付き合い方には注意も必要です。スマホやSNSに膨大な時間を奪われるなどしてやるべきことに取り組めなくなるといった問題もよく指摘される昨今ですが、知識の収集が欠かせないビジネスパーソンにとっての「やるべきこと」には、「読書」も含まれるでしょう。読書量の減少に危機感を抱くひとりが、著書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)が話題の、作家・文芸評論家の三宅香帆さん。SNSと読書の関係についてお話を聞きました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

【プロフィール】
三宅香帆(みやけ・かほ)
1994年1月12日生まれ、高知県出身。作家、文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。大学在学中に、京都・天狼院書店の店長に就任。2017年、大学院在学中に著作家としてデビュー。『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『30日de源氏物語』(亜紀書房)、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)、『刺さる小説の技術』(中央公論新社)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

SNSによる焦りが、ビジネスパーソンの読書量を減らしている

いま、以前に比べて社会人の読書量が減少していると言われています。その要因はいくつかありますが、「SNSの浸透」もそのひとつであると私は考えています。

私は、大学院を出たあとはIT企業に勤めていました。社会人1年目に、「そういえば、最近まったく本を読んでいないな」とに気づき、もともと大の本好きだった私は大きなショックを受けたのです。

一方で、「働き方改革」の浸透などもあり、かつてと比べて日本人の労働時間は減少傾向にあります。そのため、正直に言えば、当時の私にも本を読む時間はありました。しかし、電車に乗っている時間、夜寝る前の自由時間などに、私はSNSやYouTubeなどをぼうっと眺めていただけだったのです。本を開いても、なんとなく手がスマホのSNSアプリを開いてしまい、本を読まなくなっていました。

読書に対するSNSの影響はそれだけではありません。知人の近況を始めとする、たくさんの情報がSNSを通じて次々と届きますよね。SNS登場以前なら、電話で話したり直接会ったりしなければ知人の近況を知ることはほぼありませんでした。でもいまは、「業界最大手の大企業に転職できた」など、「うらやましいなあ」と思える情報に触れる機会が確実に増えています。

このような状況は、自分を焦らせることや、無理に自分を駆り立てることにつながります。「あの人すごいな」「自分も頑張らなければ!」といった思いから、必要以上に、仕事や勉強に自分を向かわせてしまうのです。

かつては、残業をするにも上司の指示によるものがほとんどでした。でも、いまの若手社員の場合は違います。転職が当たり前になったのもあって、若手社員の多くが、「将来のためにしっかりとキャリアアップしよう」「そのために仕事も勉強も頑張らなければならない」と考えています。前述したように、SNSから届く情報がその考えにさらに拍車をかけているのです。

仕事や勉強に多くの時間と労力を割けば、確実に読書量は減っていきます。もし本を読んでいたとしても、直接的に仕事や勉強につながる読書だけをしている人が多いのではないでしょうか。

でも、一見すると仕事には直接的に関係ないように思えても、長い目で見ると仕事に役立つような「周辺知識」を得られるのが読書の魅力であり、ビジネスパーソンにとっての読書の重要性なのです(『働いていると本が読めなくなるのはなぜ? 多忙な社会人が読書量を増やすコツ』参照)。

SNSによる焦りが、ビジネスパーソンの読書量を減らしていると語る三宅香帆さん

「次に読みたい本」を効率的に見つける、SNSの活用法

働きながらも読書をするコツはいくつかありますが、ここでは「自分の趣味と合う読書アカウントをフォローする」という方法を紹介しておきます。SNSの危険性についてはこれまでに指摘したとおりですが、もちろんSNSには便利な面もあります。きちんとチョイスすれば、自分にとって有益な情報を得られるでしょう。

忙しく働いていると、じっくりと本を探す時間をなかなかとれないために、「次に読みたい本」が見つからなくなるという問題が起こりがちです。

そこで、本を探す手間や時間を減らすために、おもしろそうだと思える本の情報を定期的に発信しているアカウントをフォローするのです。自分の好きな作家名や作品名でSNSやブログを検索し、そこから趣味の合う読書アカウントや読書ブロガーを見つけてみましょう。

それさえしておけば勝手に情報が入ってきますから、いくら忙しくても「次に読みたい本」を見つけやすくなります。本の趣味が合うのですから、Amazonや書店にある膨大な数の本のなかからでなく、すでに厳選された本のなかから1冊を選ぶだけで済みます。

もちろん、時間に余裕があるときは、自ら書店に出向いてみるのもおすすめです。買い物に出かけてたくさんの服を見ていると服が欲しくなるように、書店に行くと好奇心が刺激されて読書欲が高まるからです。

ネット通販の場合、欲しい本が決まっている場合にはとても便利なものですが、書店のなかを歩き回っているうちに「なにこれ、おもしろそう!」と思える本と出会うような偶然は起きづらいですよね? ですから、忙しい日々なかで少しだけでも時間をつくり、素敵な出会いを求めて書店に行ってみましょう。

また、そのような偶然の出会いは、自分では気づいていなかった自分の思考や精神状態を知ることにもつながります。欲しいと思っていたわけでもない本との偶然の出会いにより、「自分はこういうことが気になっているのか」「こういうことを知りたがっているのか」といった気づきを得ることが、今後の人生の歩みに好影響を与えてくれることだってあるはずです。

「次に読みたい本」を効率的に見つける、SNSの活用法について語る三宅香帆さん

「他人の意見」と「自分の意見」を分ける

また、SNSが読書量を減らすことに関連するのですから、SNSから悪影響を受けないよう、その付き合い方にも注意する必要がありそうです。

インターネットが普及する前であれば、世のなかに出てくる情報のほとんどは、基本的にメディアを通じたものだけでした。でもいまは、SNSやブログなどで誰もが情報発信できるため、私たちが触れる情報量は莫大なものになっています。そうして多くの情報に触れるなかで、本来は他人の考えなのに、いつの間にか「これは自分の考えだ」と思い込んでしまうことも増えているのではないでしょうか。

たとえば、仕事観や人生観で言えば、仕事や勉強を頑張ってキャリアアップしていくのは、たしかに多くのビジネスパーソンにとって大切かもしれません。でも本当は、「仕事ばかりの人生は嫌だ」「仕事よりプライベートを充実させたい」といった考えをもっている人だっているはずですよね。

そういった人であっても、SNSからの情報の影響により、「仕事に注力しなければならない」といった他人の考えに知らず知らず染まりやすいわけです。ですから、SNSに限らず情報に触れる際には、「他人の意見と自分の意見を分ける」ことを意識しなければ、自分らしい人生を歩むのが難しくなると思います。

仕事に懸命に取り組むのはもちろんすばらしいですが、自己実現をする方法は仕事だけではありません。本当は自分がなにをやりたいのか、どのような人生を歩みたいのか――。そういったことを知るためにも、「周辺知識」をもたらしてくれる読書が大いに役立ってくれるのではないでしょうか。

SNSを活用した「新しい読書習慣」についてお話しくださった三宅香帆さん

【三宅香帆さん ほかのインタビュー記事はこちら】
働いていると本が読めなくなるのはなぜ? 多忙な社会人が読書量を増やすコツ
読書スイッチを入れる「習慣化」戦略。バーンアウトが称賛される社会で読書量を増やす

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