昨日の朝ごはん覚えてますか? 「昨日日記」は、加齢で衰える “近時記憶” を鍛え直してくれる。

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今日一日の出来事を思い出しながら書く「日記」は、人間の脳力を鍛えてくれるといいます。昨日のことを思い出しながら書くと、さらにいい影響を与えてくれるのだとか。加齢とともに衰える「近時記憶」を鍛えてくれるそうです。

日記を書く習慣がある方や、「これから日記を始めようかな」「再開しようかな?」と思っている方に、脳を元気にする「昨日日記」を紹介します。筆者もチャレンジしてみました!

記憶について

『脳科学辞典』における京都産業大学の鈴木麻希博士と東北福祉大学の藤井俊勝教授の説明によれば、記憶は保持時間や内容により、学術的に分類されるそうです。

  • 【心理学】:感覚記憶・短期記憶・長期記憶
  • 【臨床神経学】:即時記憶・近時記憶・遠隔記憶

それぞれ簡単に説明すると――

――【心理学】――

感覚記憶:最も保持期間が短い記憶。目、耳、鼻、舌、皮膚などの各感覚器官に存在し、瞬間的に保持されるのみで意識されない

短期記憶:保持される時間は数十秒程度。一度に保持される情報量に限界があることが特徴。

長期記憶:短期記憶の一部が、長期の記憶として保持されたもの。記憶の固定化といわれる。保持時間はとても長く、数分から一生にわたって保持される。容量の大きさに制限がないことが特徴。

――【臨床神経学】――

即時記憶:情報を記銘(情報を覚え込んだ)後、すぐに思い出す記憶。復唱などが当てはまる。

近時記憶即時記憶より保持時間が長く、明確な定義はないが数分~数日ほど。保持情報がいったん意識から消えることが特徴。前日の食事内容を思い出すことなどが当てはまる。

遠隔記憶:近時記憶よりもさらに保持時間が長く、数十年まで及ぶ記憶。人生におけるトピックス(冠婚葬祭や旅行等)を思い出すことなどが当てはまる。

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そして、昨日あったことを思い出しながら書く「昨日日記」が鍛えてくれるのは、臨床神経学に分類されている「近時記憶」です。

なぜ昨日日記がいいの?

大人になると脳のニューロン(神経細胞)は減る一方だと考えられてきましたが、実は生涯増え続けていることがわかっています。

ただし、ニューロン同士で新しいつながりを作る力は、加齢により衰えてしまうのだそう(米コロンビア大学のモーラ・ボルドリーニ准教授が2018年4月5日付の学術誌『Cell Stem Cell』に発表)。

一方で、森ノ宮医療大学作業療法学科の松下太教授は、2010年の時点で紀要論文『認知症予防~ 作業療法からの提案 ~(※)』に、歳を重ねても脳のニューロン同士のネットワークは増やすことが可能だと説明しています。(※松下太氏が、四條畷学園大学リハビリテーション学科准教授のときに執筆したもの)

そして、脳のネットワークを増やす方法のひとつが「日記」なのだとか。一日の出来事を思い出そうとすると、前項で説明した近時記憶が鍛えられるのだそう。特に、昨日の出来事を思い出して書く「昨日日記」が効果的とのこと。

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また、作家で医師の米山公啓氏が監修した『認知症を予防する1日遅れの日記帳【常用版】: 今日から始めよう、いきいき脳活ダイアリー(2018)』には、昨日のことを思い出して日記を書くことが、認知症予防習慣になると説明されています。

さらに、アンチエイジング分野の治療や研究で知られる白澤卓二医師監修の『認知症予防の第一人者が教える 脳にいいこと事典(2017)』には、「2日前の日記」を書くことで、記憶力が鍛えられ、脳が活性化するとあります。

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曖昧になった2日前の出来事に思いを巡らせる行為により、脳に「この記憶は重要だよ」と思わせることができ、脳の海馬で一定期間保存されている記憶の、長期記憶への移行を助けるそうです。つまり、「海馬を鍛える=記憶力を鍛える」訓練になるわけです。

2日前の日記を習慣にしていくステップは、次のとおり。

  1. まず最初は昨日の食事内容を書く
  2. 次に一昨日の食事内容を書く
  3. 慣れてきたら一昨日の出来事を書く

患者に接して診察・治療を行う現場(臨床場面)でも、前夜の食事内容を尋ねて近時記憶の評価を行うのだとか。

ならば、筆者もさっそくチャレンジしてみようと思います。ただし2日前の日記ではなく、まずは前日の食事を含めた「昨日日記」から!

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昨日日記をやってみる

自分が気に入った日記帳やペン、鉛筆を見つけると、日記をつけるモチベーションが上がます。筆者の場合は、

  • ほぼ同じものを買い足せる
  • 汎用性が高い
  • 安価である

といった観点で、普通のノートとペンを選びました。決まりはないので、ぜひ自分好みの日記帳を見つけてみてくださいね。

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ちなみに、普通のノートで考えた筆者の「昨日日記」レイアウトは、こんな感じです。片頁を上下で半分に区切り2日分を書くと、見開きに4日分入ります。

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頭が混乱しないよう、日付は該当の日、つまり昨日の日付のみ書きます。

思い出そうとするほど記憶力が鍛えられるので、「朝」「昼」「夕」「間食(おやつ)」などまで書き、「昨日の出来事」は思い出すまま自由に書いていきます。

“書く作業” ではなく、“思い出す作業” に注力するため、文字が罫線から外れても気にしません。

そうして4日間、昨日日記を続けてみました。

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昨日日記をやってみた感想

まず、最初に感じたのは、当日日記よりも昨日日記のほうが、なぜか次々と書くことが出てくることです。

東大・京大生が根強く支持するロングセラー『思考の整理学』の中で、外山滋比古氏は、作家の幼年時代や少年時代の物語に優れたものが多いのは、素材(経験)を充分に寝かせてあるからだ、と述べています。

昨日日記は1日程度の熟成しかできませんが、少しでも時間をおくと、実際の出来事や、それに伴う感情が、うまく整理されるのかもしれませんね。

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 考えが整理され、昨日の行動の反省すべき点、今後に活かすべき点が明確になるのも大きなメリットです。

また、夜更かしした翌日など、脳の状態が悪かったと推測される日は、昨日のことを思い出してもうまくまとめられず、誤字脱字が多発しました。手書きにすると、自分のコンディションを把握することもできます

自律神経が整うなど手書きのメリットは、こちらの記事で詳しく説明していますので、よろしければ一緒にご覧くださいね。→『手書き「100文字日記」が脳にもたらす大きな効果。記憶力も鍛えられる!

加えて、食事を記録するので、健康管理ダイエットにも役立つのではないでしょうか。筆者の場合は、完全に甘いものを食べすぎのようです……!

***
白澤卓二医師監修の『認知症予防の第一人者が教える 脳にいいこと事典(2017)』では、簡単な数字の計算を習慣化しやすく、何にお金を使ったか思い出そうとするので、家計簿をつけることも記憶力のトレーニングになると解説しています。

あとでレシートを見て確認するにしても、自分の記憶だけを頼りに記録していくと、より脳が鍛えられるそうですよ。 昨日日記と一緒にいかがですか?

(参考)
松下太(2010),「認知症予防~ 作業療法からの提案 ~」,四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要,第6号,pp.57-63.
白澤卓監修(2017),『認知症予防の第一人者が教える 脳にいいこと事典』, 西東社.
米山公啓監修(2018),『認知症を予防する1日遅れの日記帳【常用版】: 今日から始めよう、いきいき脳活ダイアリー』, 径書房.
外山滋比古著(1986),『思考の整理学』, 筑摩書房.
STUDY HACKER|手書き「100文字日記」が脳にもたらす大きな効果。記憶力も鍛えられる!
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト|脳神経細胞、年齢に関係なく増え続けることが判明
時事メディカル|ドクターズガイド|白澤卓二 医師(しらさわたくじ)
脳科学辞典|記憶の分類 
コトバンク|記銘(キメイ)とは
コトバンク|臨床(リンショウ)とは

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