いまひとつ文章をうまくまとめられない。仕事中に「えーと、何だっけ?」と何度も確認してしまう。日々さまざまなストレスを感じている。
こうした悩みを抱えているならば、ぜひ手書きの「100文字日記」をつけてみてください。脳が活性化し、ストレスが軽減するそうですよ。筆者もチャレンジしてみました!
100文字日記の効果
「100文字日記」とは、その名のとおり100文字程度で書く日記のこと。多摩大学経営情報学部教授の樋口裕一氏は、「気持ちを整理して1日を振り返りながら、日記をつけると脳が活性化する」と説明します。感想文形式で書くといいのだそう。
その理由は、100文字日記をつける際に伴なう行動にあります。
- 感じたことや出来事を、100文字以内にまとめようとするから
- 自分の1日の体験を、あれこれ思い起こそうとするから
学習学の提唱者である本間正人氏と、Y’sラーニング株式会社代表取締役の浮島由美子氏の共著『できる人の要約力』にも、要約力のトレーニングとして「日記をつけること」がすすめられています。
また、森ノ宮医療大学作業療法学科の松下太教授は、四條畷学園大学リハビリテーション学科准教授のときに執筆した2010年の紀要論文「認知症予防~ 作業療法からの提案 ~」に、日記を書くために1日の出来事を思い出そうとすることで、加齢とともに衰える近時記憶(※)が鍛えられると述べています。(※数分~数時間ほど保たれる最近の記憶)
加えて、前出の樋口裕一教授いわく、書き出してしまえば自分の心の中に残らないので、ストレスがたまらなくなるとのこと。自分の思考パターンや行動を客観視することにも役立つでしょう。したがって、100文字日記の効果は次のとおり。
- 脳が活性化する
- 近時記憶を鍛える
- 自分を客観視できる
- ストレスの軽減
- 要約力アップ
100文字日記を “手書き” するとさらに生まれる効果
100文字日記をつけると、たくさんの効果がもたらされるとわかりました。なおかつ、PCやスマートフォンではなく、手を使って書くと、次の効果が生まれます。
- 吸収力が高まる
- 前頭前野がよく働く
- 自由自在に書ける
- 自律神経を整える
それぞれ簡単に説明しましょう。
- 【吸収力】:プリンストン大学とUCLAの研究者らが、2014年5月22日に発表した研究によると、学生たちが複数の講演映像を見たのち質問を受けた際、講演内容を手書きでメモしたグループのほうが、有意に高い得点を取ったそうです。
- 【前頭前野】:東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太氏が、文章を書くときの脳活動を調べたところ、手書きの場合は脳の前頭前野が活発に働きますが、PCやスマートフォンを使って文章を書いた場合は、ほとんど働かなかったそうです。
- 【自由自在】:『デジタル時代だからこそ、使える! 伝わる! 「手書き」の力』を著した和田茂夫氏は、手書きのメモには自由度があり、一覧性にもすぐれていると述べます。レイアウト、文字の大きさ、強調、切り抜きを貼ることも自由で簡単です。
- 【自律神経】:順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、手書きの日記をつけると自律神経が整い、心身をコントロールできるようになると説明しています。(詳しくはこちら『自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。』)
こんなにメリットを並べられたら、手書きを選ぶしかありませんね!
100文字日記を書くポイント
手書きの100文字日記は、いいことだらけだとわかりました。継続したいので、面倒にならないようルールはこの2つだけにします。
- 100文字程度にする
- 感想文形式で書く
これらさえ押さえておけば、あとは自由です。
その日に起こったこと、感じたこと、行った店や食べたものの感想、テレビや映画、読んだ本について、ちょっとしたメモ→「そうだ、来月のチケットを予約しなきゃ!」などでもOK。ささやかな成功や、良かったこと、気持ちそのものを書いてみるのもいいでしょう。
100文字の分量は、だいたいこれくらいになります。
【例】 今日は朝からマンション室内の排水清掃があったので、早起きして片づけた。そのおかげでスムーズに清掃が終わり、落ち着いて昼食をとることができた。早起きしてお腹が空いていたから、そうめん美味しかったなー。(99文字)
一言二言では埋まらないけれど、書き始めてみると、あっというまに文字が埋まる……。そんな分量でしょうか。いずれにせよ、続ければ続けるほど要約力が鍛えられそうです。では、筆者もさっそく始めてみます。
100文字日記を書いてみる
筆者の場合は、100円ショップでも購入可能な8mm方眼罫ノートを選びました。
縦横に等間隔の罫線が入っているため、100文字日記を書くにはとても便利です。
横に20文字入るので5行までの範囲で書けば、数えなくても100文字程度にはなります。
最初の行は「日付と曜日/タイトル」、次の行から5行ぶんが「100文字日記」、最後の行は「余白」として、1日に合計7行。
初めて行ったお店のカードや、仕事以外で知り合った人の名刺、観た映画の半券、気になった商品の切り抜きなどを入れる余白エリアもつくるため、ちょうど見開きで1週間になります。
なお、絶対ではありませんが、少しだけ原稿用紙ルールや、印刷ルールを意識しました。
- 行頭に句読点、閉じかっこ、閉じかぎを置かない
- (1)が行頭にくる場合は、前行末の文字と一緒に書く
- 行頭に中黒(・)を置かない
- 促音や拗音(ゃゅょっ)と音引き(ー)は行頭にきてもOK
- 横書きなので数字は2文字を1マスに入れてもOK
このようなかたちで1週間続けた、筆者の100文字日記はこんな感じです。
タイトルは、後日パラパラめくった際に目立つよう青いペンで、その日に起こったことや感じたことを、思い出す助けになるようにして書きました。タイトルは100文字に含まれません。
100文字日記を書いてみた感想
特に感じたのは、1日を思い出しながら書き出していくことで、あらゆる出来事に対して冷静になることができ、割り切れるようになることでした。客観視効果の現れかもしれません。
また、たとえネガティブな感情を抱えていた日でも、数分間、自分の感情や出来事を書くだけで、驚くほど心が落ちつきます。
ちなみに、簡単に書き直せない手書きで、長くも短くもある100文字に1日をまとめるのは、意外に難しい作業でした。要約力が鍛えられるのも頷けますね。
***
100文字日記の効果やポイント、実践方法や感想などを紹介しました。見開きを埋め尽くすだけでも、なかなかの達成感です。100文字日記を書く時間はほんの5分程度。ちょっとしたやる気と自信もわくので、まずは1週間を目標に気軽に始めてみてください。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
(参考)
STUDY HACKER|頭の回転を速くする3つのトレーニング法。「100文字日記」で脳は活性化する。
STUDY HACKER|「手書きの習慣」がないと危険な脳科学的理由。メモはやっぱり手書きに限る。
STUDY HACKER|自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。
NIKKEI STYLE|ヘルスUP|脳を活性化する「日記術」 脳を鍛える技術(4)
本間正人著, 浮島由美子著(2008),『できる人の要約力』,中経出版.
松下太(2010),「認知症予防~ 作業療法からの提案 ~」,四條畷学園大学リハビリテーション学部紀要,第6号,pp.57-63.
看護医療進学ネット|看護・医療・福祉の作文・小論文対策[原稿用紙の使い方]
エーザイ|もの忘れの教室|認知症と老化による「もの忘れ」の違い
ページ印刷物のホームレイアウト1-禁則