リーダーが絶対に読むべき4冊の名著たち。部下のやる気が出ない原因は “動機づけ” にあった!?

「人をマネジメントする人が読むべき本」永井孝尚さんインタビュー01

「終身雇用制は崩壊した」ともいわれる昨今、どんな大企業に勤める人でも安穏とはしていられません。ただ、自分を成長させるためにビジネス書を読もうにも、ひとたび書店をのぞけばそこにあるのはビジネス書の渦……。いったい、どの本を選べばいいのでしょうか。

そこで、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚(ながい・たかひさ)さんにアドバイスをしてもらいました。永井さんは、著書『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)が注目を集める、「ビジネス書選びのプロ」でもあります。

それぞれに悩みを抱える若手ビジネスパーソン3人に向けて永井さんからおすすめのビジネス書を紹介してもらうというかたちの短期連載企画の最終回。最後のビジネスパーソンのお悩みは……?

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

お悩み
社会人3年目でようやく後輩ができました。初めて人を育成する立場になりましたが、やっぱり難しいですね……。直属の上司からは、「数年後には君がいまのわたしの立場になるだろうから、部下のマネジメントの方法や組織づくりの方法を勉強しておくといいよ」ともいわれています。こんなわたしがいまのうちから読んでおくべき本を教えてください。

部下のマネジメントの出発点は「人間を知る」こと

他人を動かす……なかなか難しいですよね。だとしたら、「そもそも人間とはどういうものなのか」ということを知る本を読んではどうでしょうか。そういう点でおすすめするのが『人を伸ばす力』(エドワード・デシ/新曜社)。著者のエドワード・デシは「動機づけ」に明るい心理学者です。

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

  • 作者:エドワード・L. デシ,リチャード フラスト
  • 新曜社
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動機づけには、大きく分けて「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があります

外発的動機づけのわかりやすい例は、アシカショーです。アシカショーのアシカが芸をするのは、餌が欲しいからですよね。つまり、外部から与えられるものが行動の動機づけになっているわけです。

一方、内発的動機づけというのは、外からなにかを与えられるのではなく、自身の内から「やりたい」という感情が湧いてきて行動を起こすというもの。「楽しいからやる」というわけです。

「人をマネジメントする人が読むべき本」永井孝尚さんインタビュー02

両者には興味深い関係があります。デシが実験で示したのは、「内発的動機づけは、外発的動機づけにより弱まる」ということ。デシは学生をふたつのグループにわけて、それぞれにパズルを解くゲームをさせる実験をしました。ふたつのグループとは、パズルをクリアしてもなにも与えないグループと、クリアできたら報酬を与えるグループです。

両グループともきちんとパズル解きをクリアしました。問題はそのあとです。両グループに自由時間を与えたところ、無報酬だったグループは「パズルがおもしろい」といって休憩時間中もパズルを続けました。しかし、報酬をもらえたグループは、休憩時間中はパズルをしなかったのです。つまり、報酬という外発的動機づけによって、「楽しいからやる」という内発的動機づけがなくなったことが示されたのです。

部下を動かすには「ニンジンをぶら下げる」ことが大切だと思われています。しかし、ニンジンに頼り過ぎることは危険だということです。必要なことは、部下自身が心の内からやる気になること。この本からはそんなことが学べます。

こういった人の心について学べる本として、『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ/誠信書房)、『予想通りに不合理』(ダン・アリエリー/早川書房)の2冊もおすすめしておきます。

影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか

  • 作者:ロバート・B・チャルディーニ
  • 誠信書房
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人が持つ資質を知り、最適な職務を与える

また、人の上に立つ人間は、部下の資質を見抜き、資質を生かす仕事をアサインすることで、組織全体のパフォーマンスを上げることが求められます。そのために有用な本が『さあ、才能に目覚めよう』(マーカス・バッキンガム、ドナルド・クリフトン/日本経済新聞出版社)です。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

  • 作者:マーカス バッキンガム,ドナルド・O. クリフトン
  • 日本経済新聞出版
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本書によると、どんな人間でも生まれつきの資質持っていて、その資質は34にわけられるのだそう。

資質はあくまでも性質です。たとえば炎にはものを温める性質がありますが、火事の原因となる性質もありますよね。同様に「信念」という資質は、「強い価値観を持っている」という面もあれば、「頑固で融通が利かない」という面もあります。だとしたら、自分の資質を知り、なるべくいい面に伸ばしていきたいですよね。

この本がいいのは、この資質を判別してくれる「ストレングスファインダー」というウェブサイトへのアクセスIDが袋とじで巻末についていて、そこで200の質問に答えれば自分が持つ5つの資質を教えてくれる点です。34の資質からトップの5つが示されるので、組み合わせは数十万通りになりますから、まったく同じになる人はそうはいません。

このストレングスファインダーを自分だけでなく部下にもやってもらうといいと思います。クラフトビール「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングという会社では、このストレングスファインダーを社員が行ない、お互いの資質を把握してチームワークを高めています。

部下が本来持っている資質を生かすことなくお門ちがいの仕事を与えてしまっては、まさに宝の持ち腐れですよね。リーダーになったからには、自分自身はもちろん、部下の資質もしっかり生かしてあげたいものです。

「人をマネジメントする人が読むべき本」永井孝尚さんインタビュー03

【永井孝尚さん ほかのインタビュー記事はこちら】
ビジネス書ビギナーがいきなり「名著」に手を出してはいけない理由。
「起業したい人」が読むべき5冊の名著たち。自伝を使った “追体験” がとても大切なワケ。

【プロフィール】
永井孝尚(ながい・たかひさ)
1962年、神奈川県出身。マーケティング戦略コンサルタント。ウォンツアンドバリュー株式会社代表。1984年、慶應義塾大学工学部計測工学科(現・理工学部物理情報工学科)を卒業し、日本アイ・ビー・エムに入社。1991年、IBM大和研究所の製品プランナー、製品開発マネージャーに就任。1998年、戦略マーケティングマネージャーとなり、CRMソリューション、ソフトウェア事業部などの事業戦略と実施を担当。2012年にはソフトウェア事業部人材育成部長に就任し、人材育成戦略立案と実施を担当。2013年、日本アイ・ビー・エムを退社し、ウォンツアンドバリューの代表に就任。専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングを伝えるプロとして、幅広い企業や団体を対象に講演やワークショップ研修を実施。他に書籍の執筆、メディア出演等を通じて多くの人にマーケティングの面白さを伝え続けている。代表的な著書にシリーズ60万部の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA/中経出版)、10万部の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SBクリエイティブ)がある。その他、『時間がなくても有名ギャラリーで写真展を開催する方法』(日本写真企画)、『なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP研究所)、『売れる仕組みをどう作るか トルネード式仮説検証(PDCA)』(幻冬舎)、『「あなた」という商品を高く売る方法 キャリア戦略をマーケティングから考える』(NHK出版)、『残業ゼロを実現する「朝30分で片づける」仕事術』(KADOKAWA)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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