ベテランほど陥りがちな “罠” に要注意。大切なのは「PDCA」を正しく回すことだった

安藤広大さん「ベテランほど陥りがちな “罠” 」01

ビジネスパーソンであれば、「PDCAサイクル」という言葉はほぼすべての人が知っているでしょう。では、みなさんは正しくPDCAサイクルを回せているでしょうか。

そこでお話を聞いたのは、「識学」という組織運営理論をベースに経営・組織コンサルティングや研修を行なっている安藤広大(あんどう・こうだい)さん。まずは、PDCAサイクルが重要であるその理由についてのお話から始めてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/疋田千里

数字に向き合ううえでの「罠」に要注意

仕事で成果を挙げるためには、「数字に向き合う」ことこそが重要だと、私は考えています。

なぜなら、上司から正しく評価されるには「積極的に営業をすれば評価される」といった曖昧なものではなく、「1か月の営業訪問件数が○件以上ならば評価される」のように、客観的な数字で表される評価基準を上司とのあいだで確認しておく必要があるからです。また、自身の成長のためには、目標に対して現時点でできないことをきっちり数字で認識し、やるべきことを明確化する必要があります(『「仕事ができる人」になる唯一の方法。いくら苦手でも “数字” に向き合いやすくなるコツ』参照)。

しかし、「数字に向き合う」とはいっても、やみくもに数字に着目すればいいわけではありません。なかには「罠」と言うべきものもあるのです。

たとえば、営業にまつわる数字のなかに営業訪問件数と受注率があります。1か月に4件の営業訪問をして受注が2件ならば受注率は50%、10件の営業で受注が3件なら受注率は30%です。

もちろん、受注率も高いに越したことはありません。しかし、より重要なのは、どれだけ動けたかという「行動量」であり、この例なら営業訪問件数がそれにあたります。たとえ受注率は高くなくとも、多くの営業訪問をこなせばそれだけ受注の数が増えます。先の例で言えば、受注が2件と3件なら、営業としてより評価されるのは後者ですよね。

だからこそ行動量が重要であり、その意識を削いで、行動量を落とすような数字に着目しすぎるようなことは避けなければなりません

特に、年齢が上がっていくほど、この罠に対しては注意が必要です。ビジネスパーソンには、ベテランに近づくにつれ、効率を優先して行動量が減っていく場面がよく見られます。でも、仕事における行動量は、スキルをも左右するのです。

スポーツにせよなんにせよ、やればやるほどスキルが上がっていくのは明らか。つまり、効率を重視するばかりで行動量が減ってしまうと、それだけスキルが衰えていくことになります。そうなると、求めていたはずの効率まで結果的に落ちかねません。

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本当の意味で「PDCAを回す」とは?

大切なのは、行動量という一定の分母を担保しながら、さらに受注率のような効率も高めていくことでしょう。

では、どうすれば効率を高めていけるでしょうか? そうするには、母数の中身を要素分解していって、最も大きく効率を左右しているのはこの要素(=変数)だ」と仮説を立てたうえで、PDCAサイクルを回していくことに尽きます。

営業のケースで言えば、営業の成否を左右する要素(=変数)にはどんなものがあるでしょうか。たとえば、「営業資料の完成度」はどうでしょう? 残念ながら、これは営業の成否を左右する要素(=変数)とは言えません。なぜなら、「営業資料の完成度」は客観的な数字で表すことができないからです。

営業の成否を左右する要素(=変数)の例を挙げてみます。自分の営業の様子を、動画撮影してあとで見返したとします。すると、受注できなかったケースでは、資料をめくったときにすぐに要点を話すのではなく、ダラダラと前置きの話をしていることが多いと気づきました。そこで、「次の資料に移ったあとに要点を話し始めるまでの時間」が、営業の成否を左右する最大の要素(=変数)だと仮説を立てました。

時間は数字で表せますから、PDCAサイクルを回すことが可能になります。「次の資料に移ったあとに要点を話し始めるまでの時間」を1分、30秒、10秒のように変えていき、最も受注率が高い時間を導き出すこともできるでしょう。

このように数字を使って表せる要素(=変数)を組み込んだプランを立ててこそ、本当の意味でPDCAサイクルを回すことができます。「積極的に営業をする」と変数のない曖昧なプランを立てたところで、どれだけ積極的だったかを数字によって振り返ることなどできないのです。

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どんなプランを立てようとも、実行しなければ意味はない

そして、PDCAサイクルの効果を高めるためにも、とにかくたくさんの「DCA」をこなすことが重要です。このことも、先にお伝えした「行動量」が重要だということに直結します。

どんな仮説を立てようとも、実際に動いてみないことにはその仮説が正しいかどうかは永遠にわかりません。実行・評価・改善という「DCA」を数多くこなさなければ、せっかくプランを立てた意味がなくなるのです。

特に日本の企業の場合、プランを立てる「P」に時間をかけすぎている印象を受けることも多くあります。プランを立てる会議をして仕事をしたつもりになっている人もいるかもしれませんが、会議をしているあいだは何も前に進んでいないのが事実です。

「完璧なプランを立てよう」なんてことを考える時間があるなら、たとえ不完全なプランであってもなるべく早く実行に移したほうが、得るものははるかに多いはず。そう考えて、「DCA」「行動量」を重視してほしいと思います。

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【安藤広大さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「仕事ができる人」になる唯一の方法。いくら苦手でも “数字” に向き合いやすくなるコツ
「仕事は数字がすべてじゃない」と考える人こそ “数字に向き合う” ほうがいい、これだけの理由

【プロフィール】
安藤広大(あんどう・こうだい)
1979年生まれ、大阪府出身。株式会社識学代表取締役社長。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出会い、衝撃を受け、2013年に独立。識学講師として多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年あまりで上場を果たし、これまでの7年間で約2700社に識学メソッドが導入されている。主な著書に『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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