多くの人が嫌う「根性論」が、それでも成功に必要かもしれない理由。

根性を入れて、拳を上げ踏ん張る女性

「根性論を押しつけられるのは、もうウンザリ」
「いまどき根性論なんて古い」
「根性論には具体性がなくバカげている」
などなど、根性論はすっかり否定的な見方をされるようになりました。しかし、なかには世代を飛び越え、根性論が必要だと考える人もいるようです。

べつに根性論が好きなわけではないが、完全否定もできずモヤモヤしている人に、今後も根性論が消えてなくならない理由を紹介します。まずは、そもそも否定的な言葉であった過去の事実から説明しましょう。

「根性」の変容

現在、関東学院大学経営学科の准教授である岡部祐介氏が参加した、2012年発表の研究(早稲田大学・大学院スポーツ科)では、根性に対する捉え方の変容が次のとおり示されました。

――戦前から戦後のはじめにかけては、先天的な人の性質(こころだて・こころね・しょうね)として、主に否定的な言葉として用いられていた。

たとえば当時の新聞記事では「慾張(欲張り)根性」「商人根性(金儲け主義)」「泥棒根性」といった言葉が確認できる。当時の辞書においても、「根性腐り」「根性悪」「根性を入れ換える」といった例示が記されている。

根性が悪そうなビジネスパーソン

――しかし、1964年の東京オリンピックをきっかけに、特にスポーツに関連して肯定的な文脈における使用へと転換。流行語になるほど人気に。

「根性」という言葉に「困難にくじけない強い精神」「物事を成し遂げようとする強い気力」といった意味を込め、競技者の強靭な精神を称賛する際に用いられるようになった。

当時の新聞記事には、「根性」が社会的な環境で後天的に備わるものであり、“目標達成に必要な意欲をつくりあげる” 、あるいは “強い意欲そのものである” と表現され、スポーツ界に限らず、根性教育が取り入れられるようになった。

やがて、「人間の能力の開発」などに関連づけて戦略的に推進され、1960年代の経済発展に欠かせなかった人材の強化に、大きな役割を果たした――

根性のあるビジネスパーソンが元気にジャンプ

つまり、はじめは「先天的に備わったネガティブな性質」であるかのように表現されていた「根性」が、のちに「後天的に備わるポジティブな性質」であり、道徳的な美徳として解釈されるようになったわけです。

1964年東京オリンピックを契機に否定的な解釈から肯定的な解釈となった「根性」

ところが2020年のオリンピックを前にして、人気者だったはずの「根性」は、すっかり嫌われ者になってしまいました。

「根性論」は必要ない?

1960年代は戦後の挫折・喪失・復興・高度経済成長期といった時代背景があったことから、スポーツを通じて根性論が拡大解釈されたと考えられています。

しかし今は、気合や根性といった精神論だけで人が動き、物事が進んでいく根拠がどこにもないと、多くの人が気づいてしまいました。

特に、他者から「とにかく根性入れて必死にやりなさい」と押しつけられることを嫌う人は多いでしょう。

根性の意味がわからず考え込むAI(人工知能)搭載ロボット
人工知能に「とにかく根性入れて必死にやりなさい」といったら、“何を、どこに、どんなふうに入れて、死ぬ覚悟をしますか?”と聞き返されるかも。

日本の行動科学(分析)マネジメントの第一人者である石田淳さんは、肝心の行動に目を向けないかぎり、情緒的な言葉をどんなにやり取りしても変化は生まれないと述べます。

人間が行動するには、明確な理由(動機)が必要とのこと。行動したくなる理由さえあれば “やる気” は起こるわけです。

「気合と根性でやり抜け」ではなく、たとえば「クライアントが少しでも喜ぶことをプラスしていくと→深い信頼関係をより早く築ける→マイナス面よりプラス面を見てくれるようになり→仕事がスムーズになる」といった具体性と効果的な動機づけが必要です。

そんななか、ニュースサイト「しらべぇ」は根性論についてどう思うか調査を実施(インターネットリサーチ「Qzoo」・2019年10月28日~30日)したそうです。

全国10代~60代の男女1,733名から有効回答を得て集計したところ、「根性論は必要だと思う」と答えた人が37.4%いたのだとか。

もちろん、性年代別に見ると根性全盛期を知る世代(50~60代)の男性が数多く「必要だ」と答えています。しかし、意外なことに、10代の女性で肯定している割合も決して少なくないのです。

根性論が必要だと考えるガッツポーズの若い女性

気合と根性が「現状維持バイアス」を外す?

また、株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長の横山信弘氏は、著書『この1冊ですべてわかる 営業の基本』(日本実業出版社)のなかで、気合と根性が「現状維持バイアス」を外すときに必要だと述べています。

行動経済学の「現状維持バイアス」とは、意思決定・信念に関するバイアス(思い込み)のひとつで、 新たな選択を迫られたとき、リスクや失敗を恐れて非合理的な選択をしてしまうことです。

たとえば、憧れていた仕事ができ、部下もたくさんいるすばらしいポストを新たに提示されたとします。そのとき、現状維持バイアスがかかっていると、「何かを得られるかもしれない」という期待より、「何かを失うかもしれない」という不安が勝り、現状を維持しようとするのだそう。

営業コンサルタントを行なう横山氏は、理屈や理論だけでは現状維持バイアスを外すのが難しいと感じることがあるそうです。現状維持バイアスに打ち勝てないと、新たなチャレンジができなくなってしまうのだとか。

だからこそ、まずは深く考えず「エイヤー」と気合いと根性を入れ、自分の周囲にある見えない壁(現状維持バイアス)を取り払うことが必要です。どんなに合理的に考え行動しても、壁に囲まれたままでは物事が進展しません。

横山氏いわく、「気合いと根性だけで結果は出ないが、気合いと根性は結果を出すための前提条件」とのこと。 変化の激しい社会で生き抜くには、挑戦を阻む壁を壊すことが不可欠であり、それには精神論が役立ちます。

現状を打破する気合いと根性の金魚

新社会「Society 5.0」にも根性論は必要?

内閣府の第5期科学技術基本計画(平成28~平成32年度)では、日本が目指すべき未来の社会として「Society 5.0 時代」が提唱されました。次に示すとおり、「Society 5.0」は人間にとって5番目の社会です。

  1. 狩猟社会(Society 1.0)
  2. 農耕社会(Society 2.0)
  3. 工業社会(Society 3.0)
  4. 情報社会(Society 4.0)
  5. 新社会(Society 5.0)

あらゆるモノがインターネットでつながり、 人工知能からは常に最適解が得られ、ロボットの労働力を得てより自由になった人間の、可能性が大きく広がっていくのだそう。

日本経済団体連合会は、新社会(Society 5.0)で新たな価値を創造し、ビジネスの世界で存在感を高めるには、ソフトパワーを活用することも必要だとし、以下を挙げています。

  1. バランス
  2. 受容性
  3. 柔軟性・適応性
  4. 回復力・弾性(resilience)

いずれも、何かのバイアスがかかったままでは活かせません。先述のとおり、精神論は思い込み(バイアス)を外す力になり得るもの。つまり、気合いと根性は、こうしたソフトパワーを活かす前提としても欠かせないものなのです。

新社会で最先端の技術を活用している男性

なお、精神論には、“あるもの” をプラスしておくのがおすすめです。

根性論に「楽観主義」をプラスしてみる

無一文から一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた小西史彦氏は、根性も必要だがそれだけでは足りないと述べます。同氏いわく、成功するには「楽観主義」であることが必要なのだとか。

理由は、楽観主義になると「まだ手はある」「まだ解決策があるはず」と信じることができるから。それが考え抜く力になり、自分を窮地から救い出してくれるそうです。

  • 「気合いと根性でとにかく乗り切る(by 精神論)」
  • 「なんとなるさと気楽に構える(by 楽観主義)」

ではなく――

  • 「どうにもならない状況を打破する」by 精神論
  • 「できると信じて考え抜き行動する」by 楽観主義

――というわけです。

前出の調査結果で「根性論は必要だと思う」と答えた人は、自分の可能性を信じている、あるいは認識しているのかもしれません。

人間の脳と体、宇宙、時間についても、まだ多くのことが解明されていないのが事実。多くの研究家は、その可能性を日々探り続けています。

したがって、根性論が消えてなくならない理由も、「人々の可能性がまだまだ解明されていないから」だといえるでしょう。

***
「根性論」が消えてなくならない理由を説明しました。根性論に固執したり、人に押しつけたりする必要はありませんが、新しい社会を迎えたときに「根性」を持っていると便利かもしれません……!?

(参考)
岡部祐介, 友添秀則, 春日芳美(2012),「1960年代における「根性」の変容に関する一考察:東京オリンピックが果たした役割に着目して」, 体育学研究, Vol.57, No.1, pp.129-142.  
ニュースサイトしらべぇ|時代遅れとも称される日本の「根性論」 必要性を聞いてみると…
ダイヤモンド・オンライン|精神論が通じない部下も、こうやったら動き出す
ダイヤモンド・オンライン|成功するビジネスマンは「根性」と「○○」を兼ね備えている。  
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった! 
横山信弘(2019),『この1冊ですべてわかる 営業の基本』, 日本実業出版社. 
錯思コレクション|現状維持バイアス
一般社団法人 日本経済団体連合会|「Society 5.0実現ビジネス3原則」による新たな価値の創造

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