「フォーマット」という言葉について、どれくらいご存じですか? なんとなく意味はわかっていても、「レイアウト」や「テンプレート」との違いを説明できるでしょうか?
「説明はちょっと……」というあなたも、この記事を読めば、「フォーマット」を使いこなせるようになりますよ。
フォーマットとは
フォーマット(format)とは「形式」や「初期化」を意味する言葉です。ラテン語のforma(姿・形)に由来します。「ハードディスクをフォーマットする」は、ハードディスクを使用可能な形式(初期状態)に整えることを指します。
形式・構成
フォーマットの最も基本的な意味は「形式・構成」。何かをつくったり書いたりする際のルールです。
たとえば「書類のフォーマット」は、書類をつくるうえで守るべき形式(書式)のこと。一般的なビジネス文書は、横書きで、「日付→宛名→作成者名→タイトル→本題」の順番ですよね。これが「ビジネス文書のフォーマット」です。
ほかにも、
- メール
- 手紙
- イベントの流れ
- 書籍・雑誌・新聞
- 広告
- 動画コンテンツ・テレビ番組
- プログラミング言語
……など、あらゆる情報やコンテンツは一定のフォーマットにのっとっています。
ファイル形式
フォーマットは、コンピューターの「ファイル形式」を意味することも。
あなたのパソコンに「.pdf」「.doc」「.html」がついたデータはありませんか? どれも文書系のファイルですが、「どんな形式で文書を保存するか」によってファイル形式が異なります。
「ファイルフォーマット」「データフォーマット」という言葉もあり、どちらも「ファイル形式」と同じ意味です。
初期化
同じくコンピューター用語で、フォーマットは「初期化」を意味する場合も。「データをすべて消し、まっさらなフォーマットに戻す」ということです。あなたのパソコンに「フォーマットしてください」と表示されたら、やり方を調べたうえで初期化しましょう。
「初期化」を意味する「フォーマット」は、「フォーマットする」と動詞のかたちで使われるのが特徴です。印象の似た言葉に「フォーマット化」がありますが、こちらは「フォーマットをつくる」という意味なのでご注意ください。
フォーマットの派生語・関連語
フォーマットという言葉の意味が、だいたいわかりましたね。続いて、フォーマットから派生した言葉と、フォーマットに関連する言葉を見ていきましょう。
フォーマット化
フォーマット化とは、情報をフォーマットに加工すること。たとえば、書類の構成のお手本を用意したり、煩雑な業務の手順を一定に定めたりするようなことです。
フォーマット入力
フォーマット入力とは、情報をフォーマットへ入力していくことです。社内で共有されている契約書のフォーマットに顧客の情報を入力したり、Webサイトからダウンロードした履歴書のフォーマットに自分の情報を入力したりすることを指します。
フォーマットする
上で見たように、フォーマットするとは初期化のこと。すでに入力されたデータを白紙に戻し、まっさらなフォーマットにする、というイメージです。「形式」という意味の「フォーマット」とはまったく異なるため、特にご注意ください。
フォーマットチェック
フォーマットチェックとは、データが指定の形式通りに入力されているか、コンピューターが確認すること。たとえば……
- 郵便番号欄に7桁の数字が半角で入力されているか
- パスワード欄にアルファベットと数字だけが半角で入力されているか
フォーマット権
フォーマット権とは、フォーマットを使う権利。テレビ業界の用語です。既存のテレビ番組の構成・コンセプトを利用し、新たな番組を制作・放送する場合、権利者からフォーマット権を取得する必要があります。
フォーマットの類語
フォーマットに意味が近い言葉も見ておきましょう。それぞれ、どう違うのでしょうか?
テンプレート
「デジタル大辞泉」によると、テンプレートは「型板」。金属製品などをつくるときに使う「鋳型」をイメージしてみてください。
フォーマットは構成の大枠である一方、テンプレートは「材料を流し込むだけで完成」というくらい詳細です。ビジネス文書なら、フォーマットとテンプレートはこのように区別できるでしょう。
フォーマット:記入事項の大枠だけが決められている
テンプレート:ほとんどの文言が決められている
たとえば、Microsoftの「Word」だと、「チラシ」「履歴書」「レター」などのテンプレート(雛形)が用意されていますよね。すでにレイアウトなどが完成されているため、いくつか文字を打ち込むだけで簡単に文書が作成できるのです。
テンプレートは、俗語で「定番」「典型」も意味します。たとえば、人に会って「最近、暖かくなってきましたね」と天気の話題を振るのは「テンプレ会話」ということになります。くだけた用法なので、ビジネスなどかしこまった場面で使うのはおすすめしません。
「デジタル大辞泉」によると、テンプレートにはほかにも次のような意味があります
- 図形や文字の穴が空いた、製図用定規
- 歯の矯正に使うマウスピースの一種
テンプレートもフォーマットも、「型」を意味する点では同じです。厳密に区別されず、同じようなニュアンスで使われることもあります。
フォーム
フォームは、フォーマットと同様に「形式」や「型」を意味します。「投球フォーム(投球の型)」のように、スポーツでよく使われますよね。
ビジネスシーンだと、フォームは「記入欄があるもの」を意味することが多いはず。たとえば、Webサイトで「お問い合わせ」をクリックすると「メールフォーム」が表示されることがありますよね。次のように複数の記入欄で構成されています。
- 名前
- メールアドレス
- 件名
- 本文
フォーマットとフォームの違いを言うなら、ビジネス文書だとこのようになります。
フォーマット:書類を作成する際のお手本
フォーム:記入用の欄がある書類
レイアウト
レイアウトの意味は「配置」。書類のデザイン、家具の置き場所など、空間的な位置関係です。
フォーマットと違うのは、「決まり」や「型」といった意味は含んでいないこと。ポスターをつくる際、情報をどの位置に置くかが「レイアウト」、レイアウトのルールを決めたものが「フォーマット」です。
フォーマット:配置の仕方などのルール
レイアウト:配置の仕方
様式
様式は「一定の形式」や「様子」の意味。フォーマットとほぼ同じ、と考えてかまいません。ただ、「生活様式」「建築様式」のように “スタイル” を意味することも多く、より意味が広いと言えます。
フォーマット:形式
様式:形式、スタイル
書式
「書式」とは、書類を書くときの決まり。要は「書き方の様式」です。「フォーマット」より意味が狭いと言えます。
フォーマット:つくったり書いたりするときの形式
書式:書くときの形式
フォーマットと類語の違いがなんとなくわかりましたか? 次に使うときは、「フォーマット」との違いをぜひ意識してみてください。
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フォーマットとは、書類やメール、動画コンテンツなど、あらゆるものの「形式」を意味する言葉。ビジネスシーンでは、会社や業界のルールに従うため、フォーマットという言葉を使う機会が多いはず。迷ったときは、この記事を読み返してみてくださいね。
(参考)
コトバンク|フォーマットチェック
コトバンク|フォーマット権
コトバンク|テンプレート
コトバンク|様式
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。