忙しいのに急な差し込み案件を頼まれた。上司から無理難題を課せられた。こんなとき、なかなか「NO」と断れず、自分を追い込んでしまう人はいませんか。
断る勇気を持つこと、そして実際に断ることは、決して悪ではありません。今回は、他者からの無理な頼みに「NOと言う勇気」と「断るテクニック」を掘り下げます。
「断れない人」に当てはまる5つの特徴
なぜ人は、断ったほうが賢明な依頼や誘いでも、「NO」と言えないのでしょう。キャリアコンサルタントの沖圭祐氏は、断れない人の特徴を次のとおり5つ挙げています。
- ひとりで抱え込む
- よく思われたい
- 人間関係を壊したくない
- 見通しが甘い
- 断るスキルが足りない
タイムマネジメント・コーチのエリザベス・グレース・サンダーズ氏は、「相手を困らせたくない」「仕事ができない人間だと思われたくない」「チャンスを逃したくない」からと、何でもかんでも引き受けていると、次のような事態を引き起こすと警告します。
- 慢性的にストレスを抱え続ける
- ミスが生じて評価を落とす
サンダーズ氏いわく、NOと言わない人ほど、仕事を抱えすぎてスケジュールが過密になり、長時間労働で慢性的にストレスを抱えるようになるとのこと。忙しさや疲れの影響でミスをしたり、納期に遅れたりしたら、結局は「仕事ができない人間だと思われ、チャンスを逃す」ことにつながってしまいます。
逆に、必要な状況できちんと断れる人ほど、仕事は適量になり、余裕が生まれ、ミスをする可能性が減り、ストレスを抱えず納期を守ることができ、精神衛生を保てるのです。
無理な依頼を一度でも引き受けてしまうと……
日本のIT企業で、いち早く働き方改革に取り組んできたサイボウズ株式会社代表の青野慶久氏は、ビジネスパーソンが自分たちの働く環境を変えるためにできるのは「断る勇気」を持つことだと話します。
たとえば19時以降に仕事を頼まれた場合、よかれと思って一度引き受けてしまうと、先方は「この時間に頼んでも大丈夫だな」ととらえてしまいます。「遅くに仕事を頼んでも大丈夫」と思われたら最後、夜19時以降の発注が当たり前になってしまうわけです。
逆に、勇気を持ってハッキリと断れば、先方は「さすがに、この時間では無理だ。もう少し早い時間に頼もう」と意識を変え、行動を変えていくでしょう。断ることによって相手の行動を変えるという事例が積み重なれば、タイムマネジメント・コーチのサンダーズ氏が述べたとおり、適量の仕事・心や時間の余裕・ミスの軽減・ストレスフリー・納期厳守を実現できます。
勇気を持ってNOと言い、負の連鎖を断ち切りましょう。
「断るテクニック」4つの基本
キャリアコンサルタントの沖圭祐氏は、断るテクニックとして、以下の4つの流れが基本だと説明します。
- 感謝する
- 断る
- 理由を伝える
- 提案する
また、断るにしても、自分に期待を持ってくれたり、頼りにしてくれたりといったことに対して、感謝の気持ちを伝えることが大切です。相手の感情を穏やかにすることで、予防線を張れます。感謝のあとではっきりと断る際には、「今すぐは難しいのですが――」や「一部ならできますが――」など、譲歩の姿勢を示すのもポイント。
そして相手に納得してもらえるよう、断る理由を明確に述べ、自分の代わりに誰かを推薦したり、可能になる期日を示したり、納品可能な類似商品を挙げてみたり、なんらかの提案を最後に行なうことも忘れずにしましょう。
断るテクニックの具体例
前項の基本的な流れを参考にしつつ、具体的な断り方をご説明していきます。
【「時間に余裕がない」ことを正直伝える】
「チャリティーイベントにご招待いただき、誠にありがとうございます。とても興味深いイベントなので、ワクワクしながら詳細を拝見しました。
しかし、誠に申し訳ございませんが、今回は辞退させていただきたく存じます。いま複数のプロジェクトを抱えており、時間に余裕がありません。この状況では、恐らく気分的にも、落ち着いて参加できないと思われます。
8月以降でしたら、だいぶ目処が立っているはずです。これに懲りず、またお誘いいただければ幸いです」
【「門外漢のタスク」であることを正直に伝える】
ご指示ありがとうございます。
ただ、申し訳ないことに、タスクBは対応できません。タスクAは専門ですが、タスクBは専門外なので、無理に対応して間違い、 無駄な時間を費やしたらご迷惑になります。
Aさんの専門なので伝えておきますね。
【別の期限を提示しつつ断る】
資料をお送りいただき、誠にありがとうございます。
すぐにでも対応したいのですが、午後にアポイントがあるため、本日は着手できません。
もしも、お時間をいただけるのであれば、金曜日には提出できます。ご検討のほどよろしくお願いいたします。
***
NOという言葉を伝えるのは、決して簡単ではありません。しかし、勇気を出して「NO」と言うことには相応の価値があると、サンダーズ氏は伝えています。
「NO」と言うことは、自分の大切なものに「YES」と言うこと。過度に恐縮せず、自信を持って “お断り” してくださいね。
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|頼まれごとを安請け合いせずノーと言う9つの方法 慢性的なストレス状態から脱却するために
マイナビウーマン|できない仕事は断るべき? 仕事の断り方テクニック
20’s type|「全ての営業マンは、断る勇気を持ちなさい」サイボウズ青野氏が語る“日本を変える”営業職の働き方改革
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。