「生成AIが便利らしい……。自分も業務で活用したいけど、何から始めればよいのかわからない。」
「生成AIの情報は目にするものの、完全に出遅れてしまった気がしている……。」
このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。近年、生成AIが世界中で大きな注目を集めています。生成AIは、テキスト・画像・音声などを自動的に生成できる技術で、ビジネスにおいてもさまざまなシーンで活用されつつあるもの。
本記事では「生成AIを活用してみたいけど、何をどこから始めればよいのかわからない方」に向けて、まずは普段の仕事での文章作成にどう活用できるのかを解説します。業務に活用し、仕事を一気に効率化させましょう。
【ライタープロフィール】
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。
はじめての生成AI活用:文章校正で業務アップ
生成AIは世界中で話題になっているにもかかわらず、総務省の発表した2024年版情報通信白書によると、日本では「生成AI(人工知能)を利用している個人が9.1%にとどまる」という実態。『利用しない理由としては「使い方がわからない」が4割を超えて最多だった』そうです。(カッコ内及び二重カッコ内引用:日本経済新聞|生成AIの個人利用、日本は9%どまり 中国・米国と大差)
日本では生成AIを活用している人がまだまだ少ないのが現状なのです。つまり、いま生成AIの使い方をマスターすれば、多くの人がまだ活用していない状況下で大きなアドバンテージを得られる可能性があるとも言えるでしょう。
生成AIを使ってみたいけど使い方がわからない方は、まずはスモールステップとして普段の文章作成の補助に使ってみることがおすすめです。
そもそも、生成AIは一般的な文章校正ツールと何がどう違うのでしょうか。一般的な文章校正ツールは、誤字脱字や、言葉の誤用などを指摘してくれるものです。
一方で、生成AIを使うと文章の単なる校正だけでなく、より効果的な表現や説得力のある表現を提案してくれたり、文体や言葉遣いなども調整してくれたりします。多くの文章を一度に即時フィードバックしてくれるので、忙しいビジネスパーソンが活用できれば効果的かつ効率的に文章校正できるのです。
では、ここからは生成AIを使った文章校正の基本的な手順を解説しましょう。今回は以下の社内メールの校正を試してみます。
件名 会議時間変更のご案内
営業第一課の皆様
お疲れ様です。〇月〇日(〇曜日)の会議時間を13字から13時30分に変更いたします。お忙しところ申し訳ございませんが、スケジュールの調正をお願いいたします何卒よろしくお願い申し上げます。
ここでは、Anthropic社「Claude」(クロード)の無料版を使ってみます。手順はとても簡単です。
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Claudeの公式ウェブサイトにアクセスし、アカウントを作成します。
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アカウント作成後、Claudeのインターフェースにログインします。
画面下部の入力欄に上記の文章をペーストし、「このメールを校正し、より分かりやすい文章に改善してください。」と入力。入力欄右側の送信ボタンをクリックすると……。
以下のように改善してみました:
件名:会議時間変更(〇/〇 13:00→13:30)
営業第一課の皆様
お疲れ様です。
〇月〇日(〇曜日)の会議時間を下記の通り変更いたしますので、ご確認ください。
変更前:13:00
変更後:13:30
お忙しいところ恐縮ですが、スケジュールの調整をお願いいたします。
このように、誤字脱字のみならず、読みやすさも考慮されたものが瞬時に出力されました。
今回は文章校正で活用しましたが、資料作成やデータ整理、議事録作成など、生成AIができることは数多くあります。業務に活用できれば非常に便利なので、まずはスモールステップとして文章校正から試してみることがおすすめですよ。
注意点は、人間による最終確認を必ず行なうこと。たとえばメール作成の場合、最低限以下の項目は確認しましょう。
- 氏名や会社名に間違いはないか
- 日本語として不自然ではないか
生成AIを活用し作業時間を短縮できたとしても、間違いがあれば信用をなくしてしまいます。最終的な責任はご自身にあることを忘れずに、活用してくださいね。
会議の効率化:生成AIでサマリー作成に挑戦
ほかにやりたい仕事があるのに、1時間分の議事録の要約を任された……。
忙しいのに、プレゼンテーションの内容の短縮版をつくれと言われた……。
このような「サマリー作成」にも、生成AIが役立ちます。ここからは実際にサマリー作成に挑戦してみましょう。
今回、筆者の知人の美容師さんにお願いをし、2,000字ほどある「美容院の集客に関する会議のメモ」をお借りしました。一部事実と異なる情報も混ぜつつ、会議に参加された方の名前はイニシャルに、日付は〇〇に変更したものがこちら。
今回はOpenAI社「ChatGPT」を使ってみましょう。
- 「ChatGPT」の公式ウェブサイトにアクセスし、アカウントを作成します。
- アカウント作成後、ChatGPTにログインします。画面下部の「ChatGPTにメッセージを送信する」の箇所に、「会議メモ」をすべてペースト。「以上の会議メモのサマリーを作成してください」と入力し、送信ボタンをクリックすると……。
日時: 2024年〇月〇日
場所: サロンバックヤード
参加者: Y・T(店長)、S・T(マーケティング)、S・I(トップスタイリスト)、T・S(アシスタント)
- 現状の確認
- 顧客数が昨年同期比で5%減少、特に平日の午後の来客数が減少。
- SNS広告のクリック数は増加しているが、来店数にはつながっていない。
- 競合他社の分析
- 競合店は平日限定割引や新規顧客特典を提供中。
- インフルエンサーを使ったプロモーションが成功している。
- 新規顧客獲得施策
- 「友人紹介キャンペーン」を実施。紹介者と新規顧客に特典を提供。
- InstagramやTikTokを活用した若年層向けSNSキャンペーンを展開。
- 週末に「ヘアケアワークショップ」を開催し、美容に関心のある新規顧客を取り込む。
- 既存顧客のリピート率向上策
- リピーター向け「メンバーズカード制度」の導入。ポイントに応じて割引を提供。
- スタイリストによる個別フォローアップを強化し、次回予約を促進。
- 次回会議
- 〇月〇日14:00に開催予定。各担当者は提案した施策の進捗状況を報告予定。
長文の会議メモが短いサマリーになりました。この間、たったの10秒です。ポイントが整理され、読みやすいサマリーではないでしょうか。
何度か試して使い方に慣れてきた方の次のステップは「生成AIの出力精度」をあげていくことです。より的確な回答を出力させるには、人間から生成AIでの指示である「プロンプト」が重要になります。
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 AI グループ AI センターアソシエイト・ディレクターで『生成AI時代の「超」仕事術大全』の著者である佐々木三泰氏は
「生成AIの力を引き出すのはプロンプト次第」と説きます。
このプロンプトにおける表現方法が生成AIのアウトプットの質を左右するため、いかに生成AIから精度の高い回答を引き出せるプロンプトを生み出せるかが、これからビジネスパーソンに求められる1つのスキルとなる
(カッコ内及び引用元:東洋経済オンライン|今後の仕事の生産性を決めるプロンプトって何?)
たとえば先ほど筆者の試したサマリー作成のプロンプトは「会議メモのサマリーを作成してください」でした。生成AIをより仕事に役立てるためには、自分の目的やゴールを明確にしたプロンプトを入力するのがコツです。具体的には以下の具合です。
- 「会議の主要な議題を3つに要約してください」
- 「会議で話し合われた主要なポイントを箇条書きで示してください」
- 「会議の要約を200文字以内で書いてください」
作成後のサマリーの共有先や目的によって、最適なプロンプトは変わってくるはず。生成AIを活用していくなかでプロンプト力も高めていければ、仕事の効率が格段にアップするでしょう。
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普段の仕事での文章作成に生成AIをどう活用できるのかを解説しました。生成AIは使いこなせれば忙しいビジネスパーソンの味方になってくれます。ぜひ、第一歩を踏み出してくださいね。
日本経済新聞|生成AIの個人利用、日本は9%どまり 中国・米国と大差
東洋経済オンライン|今後の仕事の生産性を決めるプロンプトって何?