「アイディア出しの技術」を生成AIに学ばせた結果がすごすぎた。

パソコンで作業する女性

企画を考えたり、問題解決の方法を模索したり、ビジネスの場面では、アイデアを考えることが多くあります。しかし、なかなかいいアイデアが浮かばない……ということも多いですよね。

そんなときは、生成AIにアイデア出しを手伝ってもらうのはどうでしょうか。

本記事では、ビジネスでよく使われるアイデア出しの基本技術をAIに適用させ、それを使って実際にアイデアを出すプロセスをご紹介します。今回は、多くの人にとって身近な「オフィスの生産性向上」をテーマにアイデア出しを試してみました。

生成AIはアイデア出しの強い味方になる!

生成AIを活用することで、アイデア出しがもっとスムーズになることをご存じでしたか?

デジタルハリウッド大学教授で、データサイエンス人材育成の第一人者である橋本大也氏は「ChatGPTはブレーンストーミングの壁打ち相手としても非常に優秀」で「瞬時に多くの情報を調べて、大量のアイデアを出してくれます」と、その有用性を評価しています。*1

アイデアというと、ゼロから生み出さなければならない……というイメージがあり、つい自分ひとりで考えてしまいがちですよね。しかし、それだと時間がかかったり、アイデアに偏りが出てきたりしてしまうもの。

そこで、生成AIを取り入れてみましょう。

生成AIは、思いがけない視点から意見を出してくれるため、それをたたき台にして「こんなアイデアもありかも」「これらのアイデアを組み合わせるとおもしろいかも」など、自分ならではのアイデアを生むことができるのです。

上手に活用すれば、いままでより短時間で、多様なアイデアを出せるようになりますよ。

まずは簡単な準備から。使うAIを選ぼう

筆者が選んだ生成AIは「ChatGPT」です。無料版で十分な機能があり、以下の手順で簡単に始めることができます。

  1. ChatGPTの公式サイトにアクセス
  2. 「Sign up」からアカウントを作成
  3. ログイン後、画面下部のテキストボックスに質問や指示を入力

生成AIのイメージ画像

1. アイデア出しの基本「逆算法」

まずは逆算法を使ってアイデアを出してみました。逆算法とは名前の通り、最終目標から逆算して考えていくアイデア出しの手法です。

以下のようなプロンプトを入力しました。この段階で具体的な指示を出すことで、わかりやすい回答が得られるようになりますよ。

逆算法は、最終目標から逆向きに考えていくアイデア出しの手法です。
この手法を使って、「オフィスの生産性向上」のアイデアを5つ提案してください。
それぞれのアイデアについて以下の情報を提供してください:

  • 最終目標
  • 中間段階(2〜3段階)
  • 明日から始められるアクション

AIの回答は以下の通り(一部抜粋)。

逆算法を使ったChatGPTの回答

アイデア1: フレキシブルな勤務時間の導入

  • 最終目標: 従業員のワークライフバランスを向上させ、生産性を最大化する。
  • 中間段階:
    1. 従業員の勤務時間の希望を調査し、フレキシブルな勤務時間の枠組みを設計。
    2. パイロットプロジェクトを特定の部署で実施し、フィードバックを収集。
    3. 全社的にフレキシブルな勤務時間を導入し、定期的に評価と調整を行う。
  • 明日から始められるアクション:
    • 従業員に勤務時間の希望を調査するアンケートを送付し、意見を収集する。

この回答から、目標から逆算して具体的なアクションを考えることの重要性がよくわかりますね。特に「明日から始められるアクション」が具体的で、すぐに取りかかれそうです。

2. アイデアを広げるなら「SCAMPER法」

「なかなかアイデアが広がらない……」というときは、「SCAMPER法」がおすすめ。

記憶力日本選手権大会最多優勝者で、世界記憶力グランドマスターの池田義博氏も「『アイデア創出法』の代表格といえば『SCAMPER法』」だと語っています。*2

「『SCAMPER法』とはアメリカの創造性開発の研究家、ボブ・エバール氏が開発したフレームワーク」で、「パターンに沿った質問を投げかけることでアイデアを導き出すという方法」です。池田氏は、「SCAMPER法のようなアイデア自動生成法の良さは、限られた時間で、無数のアイデアを出せる点」だと述べています。(カギカッコ内引用元:同上※太字は編集部が施した)

実際に、SCAMPER法を使ってアイデアを広げてみました。以下のようなプロンプトを入力しました。

SCAMPER法は、既存のアイデアを発展させるための創造的思考技法で、以下の7つの観点から考えます。:

S (Substitute): 代替 - 別のもので置き換える

C (Combine): 結合 - 他のものと組み合わせる

A (Adapt): 適応 - 別の用途や状況に合わせる

M (Modify): 修正 - 変更を加える、拡大縮小する

P (Put to another use): 転用 - 別の使い方を考える

E (Eliminate): 除去 - 不要な要素を取り除く

R (Reverse): 逆転 - 逆の発想をする

この手法を使って、「スマートな会議運営システム」について新しいアイデアを提案してください。各要素(S,C,A,M,P,E,R)それぞれについてひとつずつアイデアを出してください。

AIの回答例は以下の通り(一部抜粋)。

SCAMPER法を使ったChatGPTの回答

S (Substitute): 代替 - 別のもので置き換える

  • アイデア: 会議の議事録作成を音声入力とAIの自動文字起こしツールで代替する。

M (Modify): 修正 - 変更を加える、拡大縮小する

  • アイデア: 会議のタイムトラッキング機能を拡大して、個別の発言者ごとに時間を記録する。

E (Eliminate): 除去 - 不要な要素を取り除く

  • アイデア: 不必要な会議時間を削減するために、会議のアジェンダ項目ごとに厳密な時間制限を設定する。

R (Reverse): 逆転 - 逆の発想をする

  • アイデア: 会議終了後にフィードバックを収集するのではなく、会議前に期待する成果や問題点を事前に収集する。

今回ChatGPTに出してもらったアイデアのなかでも、「M (Modify)」の「会議のタイムトラッキング機能を拡大して、個別の発言者ごとに時間を記録する」というものは、参加者が自分の発言を見直すことを促す効果がありそうです。

3. 異なる視点を得るなら「ペルソナ法」

「自分だけでなく、別の人の視点からアイデアを考えたい」というときは、「ペルソナ法」がおすすめ。ペルソナを自分で考えるとなると、似たペルソナばかりになってしまいがちですが。しかし、生成AIを使えば、まったく属性の異なるペルソナを示してもらえます。

以下のようなプロンプトを入力しました。

ペルソナ法は、架空の人物像を作成し、その人物の視点から製品やサービスを評価する手法です。

30代後半の仕事効率化に関心が高い中間管理職のペルソナを作成し、その人物の視点からスマートな会議運営システムについての意見や改善案を3つ提案してください

AIの回答例は以下の通り(一部抜粋)。

ペルソナ法を使ったChatGPTの回答

名前: 高橋太郎

年齢: 38歳

職業: 中間管理職(プロジェクトマネージャー)

関心事: 仕事効率化、チームの生産性向上、タイムマネジメント

ライフスタイル: 忙しい業務と家庭の両立を目指す、最新のテクノロジーやツールに関心がある、定期的に自己啓発書を読む

技術スキル: 高、複数のデジタルツールを活用

スマートな会議運営システムに対する意見・改善案

改善案1: カスタマイズ可能なダッシュボード

  • 意見: 「現在のシステムは多機能で便利ですが、私の業務内容に特化したダッシュボードがあればもっと効率的に使えると思います。」
  • 改善案: 高橋さんのような中間管理職向けに、会議の進行状況やタスクの進捗をリアルタイムで一目で確認できるカスタマイズ可能なダッシュボードを追加する。これにより、重要な情報を瞬時に把握し、迅速な意思決定が可能となります。

自分以外のペルソナをもつ人物を設定することで、思いがけない視点から意見や改善案が出てきます。ひとつのアイデアに固執することを防げますね。

AIはアイデア出しの強い味方になる!

「オフィスの生産性向上」をテーマにアイデア出しを試してみましたが、その実用性と可能性は予想以上でした。具体的で、すぐに実践できそうなアイデアを示してくれるので、とても便利ですね。

特に印象的だったのは、各技法をAIに適用することで、自分ひとりでは思いつかないような新しい視点や組み合わせが得られたこと。たとえば、SCAMPER法での「会議のタイムトラッキング機能」や、ペルソナ法での「カスタマイズ可能なダッシュボード」など、技術と人間の視点を組み合わせた、実現可能性の高いアイデアが生まれました

一方で、AIの提案をそのまま受け入れるのではなく、それを出発点として自分なりの解釈や発展を加えていくことの重要性も実感しました。AIは膨大な情報を基に提案を行いますが、最終的な判断や具体的な適用は人間の役割だということを常に意識しなければいけません。

実践してわかった、生成AIでアイデアを出すコツ

  • 技法の説明を含めてプロンプトを作成する
    AIに技法の本質を理解させることで、より適切な回答が得られます。
  • 具体的な指示を心がける
    「明日から始められるアクション」のように、具体的な出力を求めることで、実用的なアイデアが得られます。
  • 多角的に考える
    ひとつの技法だけでなく、複数の技法を組み合わせることで、より多様で深いアイデアが生むことができます。

AIとのアイデア出しは、ビジネスの課題解決や新しいプロジェクトの立ち上げに大きく貢献できそうです。特に、アイデアの初期段階での発散や、多角的な評価において、AIは強力な助けとなります。

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皆さんも、職場の身近な課題でAIとのアイデア出しを試してみてはいかがでしょうか?きっと、業務改善や新しい取り組みのヒントが見つかるはずですよ。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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