同僚や上司と打ち解けられず、社内に味方が少ない……。
人望がないせいで、評価が低く見積もられている気がする……。
なぜか人から好印象をもたれず、味方が少ない人。かたや周囲の人に愛され、味方に囲まれている人。――この両者は何が違うのでしょうか?
その違いをしっかりと押さえて言動に反映すれば、「周囲の人から愛され、評価されやすい人」に生まれ変わることも可能です。詳しくご紹介しましょう。
1.「相づち」が違う
味方が少ない人は、会話の際の「相づち」や「返答」が下手なのかもしれません。
元日本テレビアナウンサーでコミュニケーション術に詳しい魚住りえ氏が、「優秀なのに嫌われる」可能性が高い人の会話の特徴として挙げているうちの3つをご紹介しましょう。
- 相手の話を「最後まで」聞かずに、「自分の意見」を言い始める
- 「上から目線」で相手にアドバイス、説教する
- 「何かと相手を否定」する、相手の話に「共感」しない
(上記項目は『東洋経済オンライン|「優秀なのに嫌われる人」の話し方、5大共通点』より引用)
相手の話を否定したり、自分の意見を押し出しすぎたりすると、嫌われる可能性が高くなるようです。相手に「自分の話を聞いてくれていない」と感じさせてしまうからでしょう。
たとえば……
A:「TOEICを受けようと思って英語の勉強を始めたんだけど、文法が……」
B:「いまさら英語の勉強を始めたの? 文法の基礎が身についていない人って多いんだよね。中学校で習ったレベルの内容も覚えてない人ばかりだよ。まずはやさしいテキストから始めたら?」
もしあなたがAさんの立場にあるとして、Bさんにこんなふうに話の途中でさえぎられ、否定的なリアクションをされたうえに、上から目線のアドバイスをされては、当然ながら話し続ける気が失せてしまいますよね。「この人とはもう話したくない」とさえ思うでしょう。
魚住氏は「話を「否定する」のではなく「共感する」ことが、話をしていて楽しい人の共通点」だと言います(引用元:同上)。ですから、自分の意見を言いたいシーンであっても、まずは “共感の相づち” を一度挟むようにしてみるとよいはず。
では、具体的にどんな相づちを打つといいのでしょうか。ひとつの参考として、経営者・ビジネス書作家の臼井由妃氏が提唱する「さしすせそ」の相づちをご紹介しましょう。シチュエーションに合わせて使い分けてみてください。
・さ 最高です さすが
・し 信じられない(感激の表現として) 信じています
・す すてきです 素晴らしい
・せ 成長していますね(年下や部下に) 成功間違いなしです(仕事関係の方に)
・そ そんなに!(驚きの表現として) そうなんですね(感心や感服を示す)
(引用元:NIKKEIリスキリング|好かれる聞き上手の「相づち」テクニックはこれだ)
先ほどの例に応用すると……
A:「TOEICを受けようと思って英語の勉強を始めたんだけど、文法が難しくてつまづいてしまったんだ」
B:「そうなんだ! 英文法は難しいよね」
A:「中学校で勉強したはずの内容すら覚えていなくて、最初は焦ったよ。でも、勉強しているうちにだんだん身についてきたように感じる」
B:「さすが! 私も久しぶりに勉強してみようかな」
相手の話を最後まで聞き、肯定的な相づちを打つことによって、会話が弾むのがよくわかりますよね。
周囲から好感をもたれるために、まずは職場でのなにげない会話の際の相づちや返答から、変えていきましょう。
2.「頼り方」が違う
「人に頼る」ことについて、どんな印象をもちますか? 評価される人は、他人を頼ることなく、自分のことは全部自分でやっているものだ。人を頼るようでは、周囲から迷惑がられて、味方が少なくなるのでは……。などと考える人もいることでしょう。
ですが、一見甘えた考え方に思える「人に頼る」ことは、決して悪いとは言いきれません。
心理学者の内藤誼人氏は著書『直接会わずに相手を操る超心理術』のなかで、人は「頼ってきた人間を好きになってしまう」と伝えています。これを心理学で「フランクリン効果」と呼ぶそう。
責任感が強くまじめな人ほど、人を頼ってはダメだと考えがちですが、時には以下のように、困り事を相談したりちょっとした用事を代わりにやってもらったりして、他者の力を借りてみましょう。
- ×時間がないから、急いでコピーをとろう
→◎忙しくなさそうなAさんにコピーを頼んでみよう - ×仕事の悩みがあるから、本を読んで解決策を探そう
→◎課長に相談してみよう - ×Excelの使い方がわからないから、ネットで調べよう
→◎詳しそうなBくんに聞いてみよう
フランクリン効果によって好感度が上がるのみならず、「頼り、頼られる」という親密な人間関係が築かれ、同僚や上司との距離感を縮められるはずです。
3.「温度感」が違う
人に好かれたいから「いつも明るく元気よく」振る舞う——立派な心がけですが、一歩間違えば「空気が読めない人」になってしまうリスクも。
たとえば、相手の機嫌が悪いときや気分が落ち込んでいるときに、明るく元気よく振る舞ったところで、ただ「うっとうしい」と思われるだけかもしれません。
産業カウンセラーの藤本梨恵子氏によれば、「短時間で相手に安心感や信頼感を与えたいなら、初対面の相手でも共通点を探すことや、相手に合わせていくことが大切」。(引用元:藤本梨恵子(2020),『なぜか好かれる人がやっている100の習慣』, 明日香出版社.)
相手が明るいならこちらも明るく。落ち着いた様子ならこちらも落ち着いて。急いでいるならこちらも急いで……。こんなふうに相手に合わせることを「ペーシング(同調効果)」といいます。
反対に「嫌われる人は悪気なく、ディスペーシング(反同調行動)になりがち」(引用元:同上)なのだとか。
悩んでいる人に対して明るく接する。怒っている人に冷静に接する――こんなディスペーシングが起こると、相手の気分を損ねたり、相手との信頼関係が壊れたりする恐れがあるため注意が必要なのです。
周囲の人から愛され、評価されたいと思うのなら、たとえば
- おとなしい同僚に対しては……
→◎自分も落ち着いた態度で振る舞う - 上司の機嫌がいいときは……
→◎自分も機嫌よく振る舞う - 上司が怒っているときは……
→◎自分も熱量を高くして謝る
このようにして、相手に安心感を与えることを意識してみてください。
4.「ほめ方」が違う
ビジネスシーンでは、正しく丁寧な言葉を使うのが基本。しかし人を「ほめる」ときは例外だということをご存じでしたか?
たとえば、「大変素晴らしいプレゼンでした」「すてきなネクタイをお召しですね」こんな “いかにもビジネスっぽい” 言葉でほめられても、「お世辞を言われているな」と思ってしまうもの……。
心理学者・齊藤勇氏は著書『ズルい言い換え事典』のなかで「文法を崩した方が信ぴょう性を増す」と伝えています。つまり、「ビジネス的に正しい言葉」や「日本語として正しい言葉」に “縛られていない” 表現のほうが、ありのままの気持ちを伝えているように感じられるのです。
齊藤氏がすすめるのは、「倒置法を多用する」ことや「感嘆詞を多用する」こと(同上)。たとえば以下のようになります。
- △「大変素晴らしいプレゼンでした」
→◎「ホントすごかったです、昨日のプレゼン!」(倒置法) - △「おしゃれなお店をご存じなのですね」
→◎「おお! さすがおしゃれな店をご存じですね!」(感嘆句) - △「すてきなネクタイをお召しですね」
→◎「わぁ。すてきですね、そのネクタイ!」(倒置法+感嘆句)
少し乱暴な言葉づかいに思えても、上記のような “素” に近い言葉のほうが、相手の心には刺さりやすくなるはず。
もちろんTPOや相手との関係性にもよりますが、人をほめるときはぜひ、あえてフランクな文法で伝えてみてください。
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相づちの打ち方、人への頼り方、会話の温度感、ほめるときの言葉選び……。こんな些細なことで、あなたの好感度や評価は大きく変わります。今回取り上げた4つのポイントを参考に「愛され、評価される人」を目指しましょう。
(参考)
東洋経済オンライン|「優秀なのに嫌われる人」の話し方、5大共通点
NIKKEI STYLE|好かれる聞き上手の「相づち」テクニックはこれだ
内藤誼人(2020), 『直接会わずに相手を操る超心理術』, クロスメディア・パブリッシング.
藤本梨恵子(2020),『なぜか好かれる人がやっている100の習慣』, 明日香出版社.
齊藤勇(2022), 『ズルい言い換え事典』, 日本文芸社.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。