論理的な文章の書き方まとめ【例文アリ】

論理的な文章の書き方まとめ【例文アリ】

自分では論理的な文章を書いたつもりなのに、「何を主張したいのか理解できない」「根拠を明確に説明して」と言われてしまう……。どうすれば読み手に伝わる論理的な文章を書けるのかと、お悩みではありませんか?

小論文・レポート・企画書・ブログ記事やSNSの投稿など、文章力が必要な場面は多いですよね。でも、どんな人にも伝わる言葉で文章を書くのは、案外難しいものではないでしょうか。

そこで今回は、学生やビジネスパーソンの皆さんに必要とされる、整合性のある論理的な文章の書き方をご紹介したいと思います。

論理的な文章とは

論理的な文章とは、書き手の伝えたいことを誰に対しても正確に伝えられる、わかりやすい文章です。誰にでも伝わるわかりやすい文章とは、具体的にどのようなものなのでしょう?

青山学院大学法学部教授で弁護士の木山泰嗣氏は、論理的な文章を次のように定義しています。

ものごとがきちんと整理され、検討すべき問題がひとつひとつ順序立てられたうえで、明快に、かつ、矛盾なく記された文章

(引用元:木山泰嗣(2011),『もっと論理的な文章を書く』,実務教育出版.太字による強調は編集部が施した)

また、経営・人材育成コンサルティング事業を手がける株式会社AND CREATE代表取締役の清水久三子氏は、ビジネス文書の作成方法を紹介した著書で、論理的文章を次のように定義づけています。

論理的な文章とは、メッセージやストーリーが筋道立っていて、構成が構造的である文章です。

(引用元:清水久三子(2013),『ロジカル・ライティング』,日本経済新聞出版社.太字による強調は編集部が施した)

すなわち、書き手の意図が誰にでも伝わる論理的な文章とは、内容が整理されて筋道が立っており、主張がはっきりと理解しやすく表現された、一貫性のある文章なのです。

論理的な文章のメリット

論理的な文章には、非論理的な文章にはないメリットがあります。

第一に、論理的な文章は、内容に説得力があるため、相手の同意や承認を得やすくなります。わかりやすく書かれた文章を読むと、内容がすんなりと頭に入るので、「なるほど」と気持ちよく納得できますよね。

第二に、論理的な文章には、感情を正当化できるメリットもあります。論理の反対概念として挙げられることが多い感情ですが、木山氏は、論理は感情をこそ正当化する手段なのだとして次のように述べています。

感情が意思決定において大きな要素を占めていることは事実でしょう。しかし、その感情にあった意思決定を正当化できるのが、実は論理なのです。感情的にも好意をもたれ、かつ、論理的にも説得力のある文章を渡すことができれば、そのプレゼンは成功します。

(引用元:木山泰嗣(2011),『もっと論理的な文章を書く』,実務教育出版.太字による強調は編集部が施した)

論理的な文章は、身近な広告にも利用されています。たとえば、「このサプリメントを買ってください!」のように、「商品を買ってほしい!」という企業の気持ちがそのまま表現された広告を見ることは、滅多にありませんよね。

皆さんがよく目にする広告には、「医師の監修のもと、体にやさしい天然素材にこだわりました」「サプリメントの購入者を対象にしたアンケート調査の結果、90%以上が効果を実感!」など、読み手が「買ってみよう!」という気持ちになるような、説得力のある文章が書かれているのではないでしょうか。論理的な文章は、広告に説得力をもたせて企業の感情を正当化し、読み手の購買欲を高めるためにも利用されているのです。

論理的な文章には、強い説得力によって共感や承認を容易にするだけでなく、感情を正当化できるというメリットもあるのですね。

論理的な文章のメリット

論理的な文章の例文

では、論理的な文章の例としてはどのようなものが挙げられるのでしょうか? わかりにくい非論理的な例文と、わかりやすい論理的な例文を比較してみたいと思います。

非論理的な文章の例文

まずは、次の例文を読んでみてください。

彼は足が速いから、次のかけっこでは2番になれるだろう。

(引用元:西岡壱誠(2019),『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる東大作文』,東洋経済新報社.)

すんなり理解できたでしょうか? 「足が速いのに、なぜ2番なの?」「足が速いなら、1番なのでは?」と疑問が浮かんで、書き手の意図がよくわからないですよね。

では、上記の「非論理的な例文」に欠けていた要素を補ってみましょう。

「彼は足が速い」→ 【しかし、クラスには彼より足の速い子が1人いる。】→ 「だから、次のかけっこでは2番になれるだろう」

(引用元:同上)

足が速いのに2番だという理由が明らかになって、わかりやすい文章になりましたね。

ベストセラー『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』の著者である西岡壱誠氏は、あいだに書くべき文章を飛ばしてしまうと、読み手からは前後の文章のつながりが見えにくくなり、一貫性がない・論理が飛躍している・論理が破綻していると言われるような、わかりにくい文章になってしまうと述べています。

文化学園大学准教授の安藤葉子氏は、大学生に必要とされる論理的な文章を書く力について言及した2018年の論文の中で、言いたいことが伝わらない非論理的な文章の特徴を、次のようにまとめています。

  • 書くべきことが文章で表されていない。
  • 前後の文章がつながっていない。
  • 論旨が一貫していない。
  • 根拠となる材料が少ない。

一つの文章の中でコロコロと主張を変える・誰でも知っている情報だと思って説明を省く・主張の根拠を示していないのでは、相手に伝わらず説得力もない非論理的な文章になってしまうので、注意が必要です。

論理的な文章の例文

次に、論理的な文章の例を見てみましょう。

彼は次のかけっこではいちばんになれるだろう。なぜなら、彼は足が速いからだ。

(引用元:同上)

「彼は次のかけっこではいちばんになれるだろう」という結論に対して、「彼は足が速いから」という、誰もが納得できる根拠が示されています。また、理由・原因を表す接続詞「なぜなら」が正しく使われています。前後の文章のつながりがはっきりと見え、主張に一貫性があるため、わかりやすい論理的な文章となっているのです。

論理的な文章の特徴をまとめると、次の通り。

  • 根拠が示されている。
  • 客観的に見て、誰もが納得できそうな内容が書かれている。
  • 接続詞が正しく使われている。
  • 主張に一貫性がある。

相手に伝わる論理的な文章を書くには文章同士の「つながり」を意識する必要があると西岡氏が述べているように、主張と根拠を正しい接続詞で結び、誰もが納得しやすい一貫性のある内容になるように書くことで、説得力のある論理的な文章を作ることができるのです。

論理的な文章の例文

論理的な文章の書き方

論理的な文章の代表的な書き方を2つ、ご紹介します。

SDS法

SDS法とは、結論(Summary)→説明(Details)→結論(Summary)で構成される文章の型です。2つの結論の間に説明を挟むという形式から、「サンドイッチ法」とも呼ばれています。SDS法を使うと、言葉を変えながら同じ結論を繰り返すので、読み手に結論が伝わりやすい文章にすることができます。

【SDS法の例】
結論:成績を上げるため、朝に勉強するのはよいことだ。
説明:脳科学者が、最も脳が活性化する朝の勉強は効果的であると述べていた。
結論:成績を上げたいのであれば、朝の勉強が有効だ。

PREP法

PREP法とは、結論(Point)→理由・根拠(Reason)→具体例(Example)→まとめ(Point)という流れで書く文章の型です。PREP法は、結論を最初に示すことを求められるビジネスシーンや、論理的な説得力のある文章を書く際に使えます。

『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)の著者で、ライティングや出版関係のセミナーを主催している文章の専門家・山口拓朗氏によると、具体例を充実させれば、さらに文章の説得力を増し、論理的な文章になるそうですよ。

【PREP法の例】
結論:成績を上げるため、朝の勉強を取り入れよう。
理由・根拠:脳科学者が、最も脳が活性化する朝の勉強は効果的だと述べていた。
具体例:学年で一番成績の良いクラスメイトも、朝に勉強する習慣がある。
まとめ:だから、成績を上げるために有効な朝の勉強を取り入れよう。

論理的な文章の書き方

論理的な文章を書くためのスキル

論理的な文章を書くには、論理的思考力が必要です。論理的思考力とは、複雑な物事を整理し因果関係を把握したうえで、筋道を立てて考えられる力のこと。清水氏によると、わかりやすさには論理性が必要であり、わかりにくい文章には論理的思考が欠如しているそうです。

StudyHackerのコラム「思考のぜい肉をそぎ落とせ! 『ロジカルシンキング』超シンプルなトレーニング方法。」を元に、論理的な文章に必要な論理的思考力を鍛える、5つのツールをご紹介したいと思います。

1. 演繹法(三段論法)

演繹法とは、一般的に正しいと判断されていること(大前提・小前提)から、妥当(無理がなく適切なこと)だと思われる結論を導く考え方です。演繹法の代表的な手法・三段論法は、法律家が使う文章技術でもあります。

以下は、演繹法の例として有名な、アリストテレスの三段論法です。

大前提:すべての人間は死すべきもの。
小前提:ソクラテスは人間である。
結論:ゆえに、ソクラテスは死すべきもの。

前提が正しければ結論も正しいことになるため、非常に説得力のある論を展開できるというのが演繹法のメリット。ただし、誤った前提から間違ったロジックを展開しても気づかれにくいというデメリットもあるため、前提が本当に正しいのか、さまざまな角度から検証するなどの注意が必要です。

2. 帰納法

帰納法とは、さまざまな事例を集めて傾向をまとめ、結論につなげる方法です。一般的に正しいとされる前提があまりないビジネスシーンで、よく使われている方法ではないでしょうか。

事例1:ソクラテスは死んだ。
事例2:ナポレオンも死んだ。
事例3:ソクラテスとナポレオンは人間だ。
結論:だから、すべての人間は死すべきもののようだ。

帰納法では複数の事例をもとに結論を導くため、結論は絶対的な真実ではなく、あくまでも「~のようだ」という推論となります。しかし、メリット・デメリット両方の事例を偏りなくたくさん集めることで、説得力を増せますよ。

3. MECE

MECE(Mutually Exclusive, Collectly Exhaustive、ミーシー)とは、「ダブリがなく・モレがないように」要素を洗い出し、物事を論理的に分解する作業。調査報告書など、情報収集のやり方が非常に重要となる場面で役立つ考え方です。

清水氏による、「MECEを切り分ける軸」の例をご紹介しましょう。

  • 対立概念:既存・新規、社内・社外
  • 数値:年齢、年収、時間帯
  • 時系列・手順:現在・過去・未来、提案・見積もり・受注・請求などのプロセス
  • 要素:小学校・中学校・高校・大学
  • 数式:「売上=数量×単価」「利益=売上-費用」

上記のように、さまざまな切り口から全体の構造を把握できるMECEの考え方を使って、無駄な重複を省き、抜けモレのない分析を実践してみてください。

4. ロジックツリー

ロジックツリーとは、1つの論点をツリーの最上部に置き、下に向かって要素を枝分かれさせながら問題の原因を探る手法です。問題を分解する過程で、MECEに従い「ダブリがなく・モレがないように」要素を洗い出すことがポイント。ロジックツリーは、問題を把握し、さまざまな視点から解決法を探りたい場合に有効な手法です。

論理的な文章を書くためのスキル4:ロジックツリー

5. ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーは、ロジカルライティング本のロングセラー『新版 考える技術・書く技術――問題解決力を伸ばすピラミッド原則』の著者、バーバラ・ミント氏によって提唱された、主張と根拠、根拠を裏づける事例を図式化する手法です。根拠・事例を明快に示すことで意見を整理でき、矛盾点の修正をしやすいため、主張に説得力を持たせることができます。

ピラミッドストラクチャーを使うと、主張→根拠→事例というように、ロジックの構造をわかりやすく視覚化できるので、ロジックエラー(論が立たない状態)を回避できるのです。

論理的な文章を書くためのスキル5:ピラミッドストラクチャー

ご紹介した5つのツールを活用し、論理的な文章に必要な論理的思考力を磨いてみてはいかがでしょう。

論理的な文章を書くためにオススメの本

論理的な文章についてもっと知りたいという人のため、おすすめの書籍を紹介します。

『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる東大作文』

ベストセラー『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく東大読書』の著者・西岡壱誠氏による、相手に伝わる文章の書き方のポイントやテクニックがまとめられた一冊です。学術的な難しい表現を使わずに読みやすい文章で書かれているので、論理的な文章の書き方を知りたい初心者にピッタリ。

当てはめるだけで論理的な文章が書ける3つの「型」の紹介など、伝わる文章を書くのに必須の全般的テクニックのほか、レポートや企画書、SNSやブログなど、5つのシチュエーションに対応した具体的な実践方法が載っています。論理的な文章のお手本としておすすめの本やブログなども紹介されているので、参考にしてみてはいかがでしょう?

『もっと論理的な文章を書く』

青山学院大学法学部教授で現役の弁護士である著者が、司法試験や裁判実務を通して蓄積した実際の文章経験をもとに、論理的な文章のイメージや書き方をまとめた本。論理的な文章に必要な、全体の構成(骨組み)の構築方法・接続詞の使い方・論拠の示し方・法的三段論法のほか、学術論文やビジネス文書に使える実践的な具体例が豊富に盛り込まれています。

この本の内容自体が読みやすい論理的な文章で書かれているので、お手本として筆者も学ぶべき点が多いなと感じた、オススメの一冊です。

もっと論理的な文章を書く

もっと論理的な文章を書く

  • 作者:木山 泰嗣
  • 実務教育出版
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論理的な文章とは、筋道が通っていることでどんな相手にも伝わる文章のこと。論理的な文章に共通する主なポイントは次の4つでしたね。

  • 一貫性がある。
  • 客観性がある。
  • 根拠が述べられている。
  • 接続詞が正しく使われている。

今回ご紹介したコツをぜひ、説得力を備えた論理的な文章を書く際の参考にしてみてください。

(参考)

木山泰嗣(2011),『もっと論理的な文章を書く』,実務教育出版.
西岡壱誠(2019),『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる東大作文』,東洋経済新報社.
清水久三子(2013),『ロジカル・ライティング』,日本経済新聞出版社.
山﨑康司(2011),『入門考える技術・書く技術―日本人のロジカルシンキング実践法』,ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|ロジカルシンキング、問題解決力の根本を解説 マッキンゼーで教えられている文章作成術の決定版
StudyHacker|思考のぜい肉をそぎ落とせ! 『ロジカルシンキング』超シンプルなトレーニング方法。
安藤葉子(2018),「大学で必要とされる『書く力』とは」,文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 49 (2018-01) ,pp.133-143.
StudyHacker|プロが教えてくれた文章力最速習得法——え、たったこれだけでいいんですか!?
東洋経済オンライン|話がヘタな人に教えたい「たった2つ」の原則 組み立て方を間違えると相手に伝わらない

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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