相手と話が通じていない気がする……自分の考えをチームメンバーや上司にうまく伝えられない……説得力ある主張ができない……こんなふうに悩んでいる人はいませんか?
「コミュニケーション能力」がビジネスの世界で必須のスキルだということは、さまざまな場所で言われていますよね。とはいえ、みなさんのなかには、「コミュ力は性格の問題では?」「自分には生まれつきコミュ力はないから……」などと思っている人もいるはず。
たしかに、友だちと雑談をしたり飲み会の席を盛り上げたりといった場面では、性格や才能が左右するかもしれません。でも、ビジネスの世界はまた別。なぜならば、ビジネスの世界で大切なのは、こちらが伝えたいことを “相手が理解できるように” “論理的に” 伝えることだから。そして、その能力は訓練で習得可能ですよ。
コミュニケーション力のない人が陥りがちなNGポイントを3つ指摘しつつ、コミュニケーション力を高めるヒントをお伝えしていきます。
【NG1】「相手の世界」を無視している
わざわざ難しい言葉を使うなど自分本位の話し方をしていませんか。相手は自分と同じ考え方をすると思い込んでいませんか。これらは、コミュニケーションで失敗する原因になりうるものです。なぜならば、こちらの世界と相手の世界は違うから。 持ちうる知識も異なれば、キャリアのバックグラウンドも違う。当然、価値観も異なります。それらを考慮せずにコミュニケーションをとったところで、話が通じないのも無理はありません。
グロービス経営大学院の教員である荒木博行氏は、『グロービス流 ビジネス基礎力10』のなかで、「情報×解釈力×価値観」という3つの尺度のもとで相手を理解することが大切だと説いています。
「情報」とは「日頃接している情報の量と質」のこと。たとえば、「この商品をグロースハックさせたい!」と熱弁したとしても、グロースハックという言葉になじみがある人とそうでない人とでは、受け取るメッセージが異なるかもしれませんよね。
「解釈力」とは「情報を理解する力」のこと。「記事広告のコンバージョン率は1%だった」という情報を与えられたとしても、それがいいのか悪いのか、いったい何を意味しているのかを正しく判断できるかどうかは、各人の解釈力に委ねられます。
「価値観」は言葉のとおりですね。製品の売れ行きが好調であることを伝えられて「このまま状況を見守る」と考えるか「がんがん広告をかけてさらに攻めるべき」と考えるかは、やはり価値観によっても違ってきます。
上で述べたような “差” が相手とのあいだに横たわっていることを考慮に入れないと、「自分はこう話したから相手は理解して当然」「納得して当然」という独りよがりのコミュニケーションをしてしまいかねません。普段から相手を観察して差を理解しておくことが、コミュニケーションの大前提となるのです。
【NG2】結論をひとことでまとめられない
「結論を最初に述べる」ことの大切さは、多くの方が理解していることでしょう。ではあなたは、これから述べようとしていることの「最も重要なメッセージ」をひとことで端的にまとめられるでしょうか。それが明確でないと話は支離滅裂になり、いくら結論を先に述べたところで、「で、結局何が言いたいの?」と相手を戸惑わせてしまいかねません。
前出の荒木氏は、伝えたいメッセージがまとまらず思考が絡まった状態から脱する方法として、「自分へ問いかけてみる」ことをすすめています。問いかけの内容は、「結局言いたいことは何なのか? ひとことで表現してみてください」というもの。そして、出てきた言葉を一字一句正確に書き記し、最後に「間違いないですか?」と自分へ念押しするのがいいそうです。
このようなシンプルな工程を挟むだけで、違和感があれば、直感的に自分で気づくことになり、思考の整理が進んで、言いたいことをまとめられるようになります
(引用元:グロービス経営大学院(2014),『グロービス流 ビジネス基礎力10』, 東洋経済新報社.)
相手からよく「ひとことで表すと何が言いたいの?」と突っ込まれてしまう方も多いかもしれませんが……それを自問自答を通して前段階で済ませておくということですね。相手に最も伝えたいメッセージがはっきりすれば、それをさらに補完するための根拠など、主張・説得に必要な材料もおのずと判明します。よりロジカルなコミュニケーションが可能になるでしょう。
【NG3】数字を使えていない
プロジェクトの進捗状況を尋ねられたときに「そこそこ順調です」、売上状況を訊かれたときに「先月よりもかなり伸びました」などと曖昧な表現をしがちな人は要注意です。たしかに誤ったことは言っていませんが……相手が状況を正確にイメージできるかと問われると疑問ですよね。
グロービス経営大学院教員の星野優氏は、意味が曖昧になりがちな副詞は使わずに「数字」に変換することをすすめています。「そこそこ」「かなり」「けっこう」といった表現は解釈のズレを生んでしまう一方、数字を使えば状況を客観的に正しく伝えられるというわけです。
たとえば、売上について「かなり伸びました」と伝えても、人によっては20%増だったり50%増だったりと異なる想像をしてしまうかもしれません。でも、「先月比130%であり、昨年同時期と比べても3倍まで伸びています」というふうに明確に数字で表現できれば、全員が共通の理解をできますよね。
1でお伝えしたとおり、自分と相手の世界は違うもの。数字で語ることができれば、不要な解釈のズレも防げて、コミュニケーションがもっとはかどるはずです。
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ビジネスの世界でのコミュニケーション力は、ちょっとした意識がけや工夫次第で高めることができます。「コミュ力がない」を性格や才能のせいにせず、ぜひ今日から行動を変えていってください。
監修:グロービス経営大学院
(参考)
グロービス経営大学院(2014),『グロービス流 ビジネス基礎力10』, 東洋経済新報社.
グロービス知見録|数字力編
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