仕事では「仮説」を立てるのが当たり前! いまさら人に聞けない「仮説構築」の基本

仮説構築力の基本1

みなさんは普段、仕事を進める際に、限られた情報から課題をうまく解決することができていますか。「これだけの情報では、何をどう考えればよいかわからない」と悩んでしまうこともあるかもしれませんね。

そんなときは、情報を自分の思考で随時補っていく必要があります。今回は、仕事をスムーズに進めていくための「仮説構築力」を高める方法についてお伝えしましょう。

「仮説」とは何か

「仮説」という言葉自体は、みなさんも普段よく耳にしているはずですが、そもそも「仮説」とはいったいなんなのでしょうか。

グロービス経営大学院教員の鈴木健一氏によれば、仮説は「断片的な情報や経験をもとにつくった、答えるべき問いに対する仮の答え」を指しているのだそう。たとえば、「他社と差別化した商品をどうすればつくれるか?」という問いに対して、「過去の成功事例から、ニッチなジャンルを開拓する」という仮の答えを出したとします。これはひとつの仮説とも言えます。

この場合、ニッチなジャンルを開拓することで本当に差別化できるかどうかは、実際にやってみないことにはわかりません。しかし、やたらめったらといろいろなアイデアを試すよりも、仮説を立ててから始めるほうが、最適解にすばやくたどり着ける確率は高いでしょう。

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「仮説」を立てて仕事を進めるメリット

仮説を立てて仕事をすると、立てていないときと比べてどのような利点があるのでしょうか。2点を挙げてみました。

【メリット1】仕事の精度が高まる

仮説を立てることで、限られた時間内で何をすべきか、あるいはすべきでないかについて、優先順位を決めやすくなります。その結果、仕事のクオリティとスピードが上がるのです。

たとえば、新しい商品を開発するとき。どんな商品をつくるか、たくさんの人へとりあえずヒアリングしてから決めようとするのは、正直あまり効率がいいとは言えませんよね。しかし、自社の方向性などをもとに仮説を立てておき、その検証を目的にヒアリングを行なえば、集めるべき情報は絞られ、開発の効率を上げられるでしょう。仮説を立てることは、情報収集のための無駄な時間をどんどん減らせるのです。

【メリット2】視野が広がる

「仮説をせっかく立てても、的外れのものでは意味がない」と考えてはいませんか。しかし、仮説は、それが「外れた」ときにも大きな効果を発揮するようです。

前出の鈴木氏は、その効果について、次のように述べています。

「仮にデータを集めた結果、想定した答えと合わなかった場合でも、なぜ想定した答えと違うのかと考えることで、新たな答えへの発想が展開します。」

(引用元:グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス基礎力10』, 東洋経済新報社.)

前提として、欲しい結果に近づくような仮説を立てることは重要です。しかし、立てた仮説が一度外れたからといって、すべてがダメになるわけではありません。むしろ、立てた仮説と実際に得られた結果からうまくいかなかった原因を分析すれば、ほかの可能性に目が向き、さらによい結果を導けるようになるでしょう。

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「仮説構築力」を高める方法

では、私たちはどうすればうまく仮説を立てることができるのでしょうか。具体的なステップをご紹介します。

【ステップ1】幅広い情報をインプットする

情報のインプットがなければ、仮説をアウトプットすることは難しいでしょう。完璧にとは言わないまでも、日頃から周囲の物事に対して問題意識をもち、情報を幅広く集めておくことが必要になります。

しかし、ただ雑多に情報を集めたところで、仮説の構築に活かせるとは限りませんよね。ビジネスで使える情報としてストックしておくためには、頭のなかで情報をこねる作業も同時に必要です。

たとえば、あなたが食関連の職業に就いているとしましょう。そして、巷である食べ物が流行ったとします。そんなとき、「ああ流行っているな」と情報を表層的なものとして留めていてはいけません。「なぜその食べ物が流行ったのだろう」「いつから流行り始めたのだろう」「いままでの流行り具合だと、今後どのように展開していくのだろう」などのように、起こっている事象の理由を探ったり将来の予測をしたりと、一段掘り下げて考えてみてください。

グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長の村尾佳子氏によれば、過去を振り返ってパターンを見つけ、それをもとに未来を考えることで、仮説をつくり出す力が磨かれていくのだそう。自分なりに問題意識をもって情報をインプットすれば、それらを仮説へうまく落とし込めるようになります。

【ステップ2】情報を組み合わせ、初期仮説を立てる

仮説は、インプットした情報を組み合わせることで比較的立てやすくなります。「そんなことしなくても、すばらしい仮説が突然ひらめく場合だってあるだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、グロービス電子出版発行人兼編集長の嶋田毅氏が指摘するには、そのひらめきも、組み合わせた情報に対する意味づけを無意識に行なった結果だそう。

先ほどの「ある食べ物が流行った」例を用いると、「食べ物の廃棄量が社会問題になった」事実と一緒に組み合わせられそうですよね。たとえば、「食べ物の廃棄量を減らすためにはどうすればよいか?」という問いに対して、「捨てられる部分も含めて食材を丸ごと使った料理を考案し販売すれば、流行るだろう」という仮説を立てることができるでしょう。

最初は、結果を必ずしも直接的に導けるような仮説でなくともかまいません。行動の指針になるような仮説を、ラフでもよいので一度つくってみるのが大事なのです。

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【ステップ3】初期仮説を検証し、必要に応じて修正する

これが、最も大事なステップと言えるかもしれません。仮説の精度を高めるためには、仮説を何周も検証し、より具体的に肉づけして再構築する作業が不可欠です。

前出の、「食べ物の廃棄量を減らすためにはどうすればよいか?」という問いに対し、「捨てられる部分も含めて食材を丸ごと使った料理を考案し販売すれば、流行るだろう」という仮説について、引き続き考えてみましょう。この仮説を検証するにあたっては、たとえば「捨てられる部分のある食材にはどんなものがあるか調査し、それらの食材を丸ごと使った料理を試作する」といった方法が挙げられます。

そこで実際に検証を行なったところ、「評判があまりよくなかった」という結果が得られたとしましょう。その場合、最初の仮説に戻ることで、「ほかの食材を使い、有名なレストランにも監修してもらって再度試作する」「食材の捨てられる部分はやはりおいしくないため、通常の食べ残しを減らせるよう持ち帰り用のドギーバッグを導入する」というように、具体的な行動として、最初に立てた仮説を深めたり新たに方向転換させたりすることができます

このように、仮説をもとに修正を繰り返していくことで成果につながる確率を上げられるようになるのです。仮説構築および検証に慣れてくれば、より効率的に成果へつなげられますよ。

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みなさんも、仕事の場面で「仮説」をぜひ有効に活かしてみてください。これまでよりも仕事がサクサク進むようになるはずです。

監修:グロービス経営大学院

(参考)
グロービス経営大学院(2014),『グロービス流 ビジネス基礎力10』, 東洋経済新報社.
GLOBIS知見録|仮説思考とは?メリットや使い方を解説
GLOBIS CAREER NOTE|ふだんの業務がぐっと効率化!仮説思考を身につけるポイント4つ
GLOBIS知見録|第7回 仮説を作るコツ(前編): 知識の幅を広げ、深く耕しておく
GLOBIS知見録|仮説は即行動につなげてこそ価値を生む

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