チームの目標は設定したが、それをどうやって達成すればよいか見当がつかない……。そう悩むことがよくあるあなたに、ビジネスの「実行前」にするべき大切なことをお伝えしましょう。今回は、部署やプロジェクトなどでリーダーの立場にあるビジネスパーソンが高めるべき “ふたつのスキル” について解説します。
実行の前に「プランニング」と「段取り」を極めよ
目標を達成したいビジネスパーソンが高めるべき “ふたつのスキル” とは、「プランニング力」と「段取り力」。このふたつ、似ているようですがじつはそれぞれ異なるスキルです。
プランニング力……目標達成のための「全体の方針」を定める能力
段取り力……プランニングした内容を「具体化」する能力
グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏によれば、「プランニング力」とは「目標を俯瞰し、物事を円滑に運ぶための『全体の地図』を作成できる能力」。これが身についていないと、目の前にあるタスクをとりあえずこなすというような、場当たり的な進め方になるそう。事前に計画を立てたり準備をしたりするのは時間がかかって面倒だ、と考える人もいるかもしれません。しかし、あとから致命的な失敗に気づくよりは、最初に全体像を把握して方針を定め、多少の細かい変更はあったとしてもそれに沿って進めていくほうが結果的には効率もよく成果につながりやすいのです。
そして「段取り力」とは、田久保氏いわく「プランニングした内容をさらに具体的なものへ落とし込む能力」のこと。つまり業務遂行の流れとしては、全体像を押さえてざっくりしたプランを練ってから、関与するメンバーの動き方や、リソースの効率的な配分、所要時間、工程といった具体的なToDoを、細かく決めていくことになります。
次項以降では、プランニングと段取りのなかで特に重要なポイントを3つずつ紹介します。
プランニングでは業務を大きくとらえる
「プランニング力」を高めるためのコツは3つ。「目標を周囲の人とすり合わせる」「的確なKPIを立てる」「プランニングを見直すタイミングを決める」です。
1. 目標をすり合わせる
まず、目標に対する認識を、上司と、あるいはチーム内で最初にすり合わせておくことが大切です。たとえば、「その業務自体が自社や部署内でどのような意味合いをもち、どのような効果が期待されているのか」や「目標に関して自分自身へ期待されている役割」などについて確認するようにしてください。
このステップにおける小さなズレは、のちのち大きく響いてしまう場合があります。イベント企画の場面を例に考えてみましょう。「新商品の認知度向上」がイベントの目標だと自分は考えていても、いざすり合わせてみると「自社の潜在顧客となる層の分析」まで上司は想定しているかもしれません。このような食い違いがあとで問題とならないよう、認識を確実に合わせておきたいところです。
2. KPIに沿って実行計画を具体化する
「KPI」とは「Key Performance Indicators」の略で、「目標を達成するための重要指標」のこと。もともとの目標のみだと抽象度が高すぎるため、業務を分解し、重要だと考えられるプロセスごとに細かい目標を客観的に評価できる数値で立ててみてください。
また実際の進捗管理は、設定したKPIをもとに行ないます。したがって、KPIを設定する際は、根拠のあるデータや過去の実績を用いて目標数値を設定することが大切です。先ほど挙げたイベント企画の例で、「集客人数」をKPIとするならば、「これまで実施したイベントの実績平均値をふまえ、200人は集めよう」といったように考えていきます。
3. 振り返りのタイミングを設定する
グロービス経営大学院経営研究科副研究科長の村尾佳子氏は、「施策や実行スケジュールの見直しを検討するタイミング」を確実に決めておくべきだと言います。
想定している結果が出なかったときには、「イベントの1週間前までに200人分の申込が入っていなかったら、別の集客ツールを試す」といったように、軌道修正しなければなりません。結果が出ていないにもかかわらず同じ施策をずるずると続けてしまうことにならないよう、振り返りのタイミングを事前に決めておきましょう。
段取りで詳細を逐一確定する
「段取り力」を高めるためのコツも3つあります。「ボトルネックを把握する」「業務上の制限に注意する」、そして「チーム内の矛盾点をなくす」です。
1. ボトルネックを知り優先順位を決める
段取りにおいてはまず、プランニングした内容について、実際の流れが滞りそうな部分を洗い出しておくことが大切です。次に挙げる4点について、一度チェックしてみてください。
- 意思決定に最も時間がかかりそうなのはどこか
- 意見が対立しそうなのはどこか
- 代替が効かない要素はどこか
- 後段の工程に大きな影響を及ぼすのはどこか
これらに当てはまるものがあれば、それは「ボトルネック」です。たとえば、「イベントに参加してもらいたいゲストとのスケジュール調整」が当てはまるかもしれません。ボトルネックとなっている部分がわかれば、たとえば情報共有を重点的に行なったり、また経験豊富なメンバーを担当としてあてたりするなど、業務をスムーズに進めるための対策を事前に考えておくことができるでしょう。
2. 制約条件を理解する
段取りは、それぞれのメンバーへ説明できるレベルにまで具体化しなければなりません。その際、業務上どうしても動かせない制限の部分を考慮する必要があります。たとえば「来週頭までには、イベント会場を決めて予約しなければならない」「ゲストは絶対必要だから、ドタキャンになった場合の代替案を今月末までに考えておく」といったようなことです。
ここでは「施策をどのくらいの水準で、どのように進めていくのか」「いつまでに完了させるのか」「どのようなリスクが考えられるか」といった点を明確に言語化しておくべきだと田久保氏は伝えています。メンバーを戸惑わせないためにも、チェックリストをつくって管理できるように準備しておきましょう。
3. 齟齬や矛盾がないかを確認する
段取りの最終ステップでは、これまでのプロセスを振り返って、全体をみて施策どうしが噛み合っていない部分がないかどうかをチーム全員で確認するようにしてください。どんなに準備をしていても、不測の事態が起こる可能性をゼロにすることはできません。しかし、その予期できない箇所をどこまで減らせるかが、うまい段取りのカギとなるのです。
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目標を達成するためには、実行前のプランニングと段取りがきわめて重要です。成功できるかどうかは実行前に決まっている、と言っても過言ではありません。デキるビジネスパーソンになるために、ご紹介した流れをぜひ頭に入れておいてくださいね。
(参考)
グロービス経営大学院(2015), 『グロービス流 リーダー基礎力10』, 東洋経済新報社.
GLOBIS CAREER NOTE|成果を出すために必須な3つの力「プランニング力」「段取り力」「仕組化」
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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