「精神的に不安定で、仕事で結果を出し続けることが難しい……」
「ビジネスで成功するために、精神的な弱さを克服したい」
こうしたメンタル面の悩みをもつビジネスパーソン向けに、「最強メンタル」をつくるためにあえてやめてみるといい10のことをピックアップしました。
パナソニックシステムソリューションズジャパン執行役員・木部智之氏いわく、「メンタルも、プレゼンテーションや資料作成のスキルと同様に学んで習得していくスキル」とのこと。さっそく、学びのヒントを紹介しましょう。
メンタルを強くする方法については「メンタルが強い人の特徴5選×メンタルを強くする5つの方法」もお読みください。
【1】理不尽な上司と争うのをやめる
木部氏は、理不尽なことに真っ向から立ち向かう攻撃性の強さではなく、適度に受け流せる「感度の低さ」が最強のメンタルには必要だと述べます。なぜなら、感情的になると無用な摩擦を起こし、自分の評価を下げることになりかねないからです。
たとえば、どう考えても達成が難しいノルマを上司から課された場合であれば、こんな受け流し方が考えられます。
「上司はあんな無茶なノルマを課してきたけれど、チーム全体で達成率が低ければ、上司のマネジメント能力のなさに問題があることが自然と露呈する。そうなれば、上司自身の評価が下がっていくはずだ。だから、こちらがあえていま感情的に反論する必要はないだろう」
木部氏いわく、最強のメンタルをもつ人はむやみに反論せず、ぐっとこらえて、粛々と指示に取り組むとのこと。そんなスルースキルを身につけましょう。
【2】ひとりで悩むのをやめる
最強のメンタルとは人に弱さを見せないことではなく、悩みを人に打ち明けられること――。そう述べるのは、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』著者で医師の久賀谷亮氏。というのも、ビジネスパーソンに欠かせない心の回復力「レジリエンス」を身につけるには、心の支えとなる存在が必要だから。
気持ちを分かち合い、共感することがレジリエンスの向上につながると久賀谷氏。たとえば、いくら教えても部下がなかなか仕事を覚えてくれずに悩んでいるなら、育成経験に長けている上司に相談してみるといいでしょう。悩みをひとりで抱え込むのはやめてくださいね。
【3】仕事の依頼をなんでも引き受けるのをやめる
最強のメンタルをもつには、訓練だと思って「ノー」と言う練習をしたほうがいい――。ハーバード大学や病院などでサイコセラピストを務めるエイミー・モーリン氏は、このように述べます。
「いつも助かるよ」「きみに任せると安心だ」といった相手の前向きな反応をもらうことばかりを気にしてノーを言えないと、あらゆる頼まれごとを引き受けるようになり、結果として自分の時間や健康を犠牲にしてしまうとモーリン氏。「自分はほめられて伸びるタイプ」と自認している人は特に要注意だそう。
ですので、対応が難しい仕事を頼まれたときは、思いきって断ってみましょう。モーリン氏いわく、本当にあなたを評価し、好意をもってくれる人は、ときに「ノー」と言ってもちゃんと受け入れてくれるとのことですよ。
【4】嫌なことを無理に忘れるのをやめる
メンタルを強化するなら、過去の失敗や自分の欠点といった嫌なことを無理に忘れようとせず、しっかりと向き合ったほうがいい。なぜなら、嫌なことを何度も思い出してしまうのは心理学的に自然なことだからだ――。そう述べるのは、臨床心理士の関屋裕希氏。
嫌なことを引きずっていると、過去ばかりか現在や未来まで悲観視するとのこと。自分の能力を低く見積もってビジネスチャンスを逃す恐れがあると、関屋氏は指摘します。
関屋氏いわく、嫌なことと向き合う際は、思ったことをすべて紙に書き出すのが効果的だそう。たとえばプレゼンの失敗を引きずっているなら、
「資料の説明がわかりにくかった」
「下調べが足りず、質問に答えられなかった」
といったことが後悔として書き出せるでしょう。しかし見方を変えると、これらはすべて次回のプレゼンに向けた改善点になります。このように自分の考えを振り返りつつ、ポジティブ探しをするとよいそうですよ。
【5】まわりに期待するのをやめる
メンタルを不安定にさせる原因のひとつが、「理想と現実のギャップによる精神的な葛藤」。だから最強メンタルのビジネスパーソンになるには、まわりに期待するのをやめて「諦め上手」になったほうがいいと、精神科医の西多昌規氏は説きます。
まわりに期待をもたないようにするには、相手のありのままの姿を受け入れる心がけが重要だと、心理カウンセラーの秋カヲリ氏。
たとえば、苦労して新しい顧客とのアポをとったけれど上司のリアクションが薄かった場合。「上司に喜んでもらえるかと思ったのに、全然違った!」と勝手に落ち込むのではなく「上司は別の重要な案件で悩んでいるんだな」と上司のリアクションの薄さを受け入れるのです。そうすれば、理想と現実のギャップにがっかりすることなく、落ち着いて行動できるようになりますよ。
【6】いい結果を出そうと自分にプレッシャーをかけるのをやめる
脳科学的な最強のメンタルとは、リラックスと集中のバランスが保たれた「中覚醒状態」である。そう説くのは、『最先端科学×マインドフルネスで実現する 最強のメンタル』著者・辻良史氏。
いい結果を出そうと自分にプレッシャーをかけるのは、脳が興奮して過活動を起こし、高覚醒状態になってしまうためNGとのこと。一方で、中覚醒状態を保つには、目の前のことに没頭するのがよいと辻氏は説きます。
たとえば「コンペで絶対勝ちぬいて見せる」と意気込むのではなく、「まずは顧客に自分の案を伝えることに集中しよう」と目の前の課題に意識を向けるようにしましょう。また意気込みすぎているときは深呼吸すると、脳を適度にリラックスさせることができるそうですよ。
【7】「するべき」と決めつけるのをやめる
最強メンタルの持ち主とは、不要なストレスを回避し、メンタルをよい状態で保つマネジメント能力がある人のこと。そう説く精神科医の宮田雄吾氏は、「するべき」という考えで自分を追い込むのはやめたほうがいいと述べます。
すべき思考は周囲にも完璧を求めるため、しだいに煙たがられて相手が離れていってしまうとのこと。人望を失うとキャリアの形成にマイナスに働くのは、言うまでもないでしょう。
宮田氏いわく、例外を許容する柔軟性が必要だそう。たとえば、部下の仕事の進め方が自分とは違っても「そういうやり方もあるのか」と見守るのもひとつです。「するべき」「こうあるべき」という言葉で自分や周囲を縛りつけることはやめましょう。
【8】目標達成に固執するのをやめる
宮田氏は、一度決めた目標に固執するのをやめることも挙げています。達成が難しい目標に向き合い続けていると、自分を追い込み、不要なストレスを生むからです。
最強メンタルを目指すなら、状況に応じて目標を変えられる柔軟性を身につけるのがよいと宮田氏。思うように進まず目標達成が難しいと感じたら、以下のように「目標」と「現状」を紙に書いて可視化すると、「新しい目標」をうまく再設定できると言います。
目標:自社メルマガの開封率を50%以上で維持したい。
現状:開封率の全体平均は35%程度。パソコンからの開封率が20%程度と低いのが原因か。
新しい目標:まずはパソコンの開封率を30%に上げるよう、読者の傾向を分析する。
古い目標にこだわらず、ハードルを下げた新たな目標を立て直す柔軟さをもちましょう。それが、よいメンタルを保つコツですよ。
【9】カバンを荷物でいっぱいにするのをやめる
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、心を整える「小さな習慣」として、カバンを不要な物でいっぱいにするのをやめることを提唱しています。
カバンに必要なものが入っていて、すぐ取り出せる状態にあることは重要だと小林氏。たとえば、取引先に出かける際、念のためにと書類をたくさん持っていったり、ペンを何本も用意していったりするのはNGです。本当に必要なものを取り出すのに手間どってしまうと、焦りがメンタルにマイナスに作用するばかりか、相手に悪い印象を与えることにもなりかねません。いま一度、カバンのなかを見直してみましょう。
【10】仕事人間になるのをやめる
元自衛官で『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』著者・わび氏によれば、趣味をつくるなど、プライベートの時間を大切にするとよいそう。
休日も仕事について考えているような仕事に依存している人は、最強メンタルになれないと、わび氏。また前出の西多氏は、脳科学の観点から「仕事のみを生きがいにしている人は、働くことで快楽を生じさせるドーパミンが分泌されている。いわば依存症と同じ状態」と指摘します。つまり働いてさえいればドーパミンが分泌されるので、効率や成果を無視したサービス残業や休日出勤を行なうようになり、結果的にキャリアアップの妨げになるとのこと。
最強メンタルをもつビジネスパーソンになるには、あえて仕事人間にならないようにしましょう。
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成功しやすい「最強メンタル」をつくるために、あえてやめてみるといい10のことをまとめると、次のようになります。
あなたが強くあろうと頑張ってきたことのなかに、手放してよいものがあるのではないでしょうか。ぜひ、できることから実践してみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|1日3分でメンタルを強くする方法ベスト3|心のトレーニング法
久賀谷亮 (2016), 『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』, ダイヤモンド社.
カオナビ人事用語集|レジリエンスとは?
現代ビジネス|メンタルの強い人が、なぜか絶対にやらない「意外なこと」があった!
現代ビジネス|「自分はほめられて伸びるタイプだ」と思っている人がハマりがちな「意外な落とし穴」
関屋裕希 (2018), 『感情の問題地図 ~「で、どう整える?」ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事の心理』, 技術評論社.
西多昌規 (2014), 『会社、仕事、人間関係で「逃げ出したい! 」と思ったとき読む本』, 幻冬舎.
「マイナビウーマン」|冷たいんじゃない! 他人に期待しない方法とは
ダイヤモンド・オンライン|「最強のメンタル」が手に入る科学的な3つのステップ
宮田雄吾 (2019), 『ストレスに強い人になれる本』, 日本評論社.
小林弘幸 (2016), 『悩み抜く力 うまく悩んで成功をつかむ人、ヘタに悩んでつまずく人』, 毎日新聞出版.
ダイヤモンド・オンライン|自衛隊の「超メンタルが強い人」の共通点とは?
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。