日々仕事に追われていると、ストレスはどうしてもたまってしまうもの。「なんだか、いつも心が疲れているなあ……」という人も多いのではないでしょうか?
そんな人はもしかしたら、あなたの心にとって “しないほうがいいこと” をしてしまっている可能性があります。3つ指摘しましょう。
【しないほうがいいこと1】怒りの我慢
他人に怒りをぶつけるのを避けるために、怒りの感情を押し殺す人も多いはず。しかし、アメリカのマイアミ大学で心理学教授を務めるマイケル・マッカロー氏の研究によれば、怒りの感情は精神への負担が大きく、不安感や憂鬱感を増幅させるだけでなく、睡眠や集中力への悪影響も引き起こすとのこと。
こういった悪影響が出るのは、怒りによってコルチゾールという体内のストレスホルモンの分泌量が増加するからだそう。そして、怒りの感情を抱いたままにしていると、怒りの原因とは関係のない人にまで攻撃的になったり、将来について生産的に向き合えなくなったりするというのです。
こういった怒りの感情の扱い方について、医学博士の裵英洙氏は次のようにアドバイスしています。
(前略)大事なのは、その受け止め方・表わし方です。真正面から受け止め、そのまま感情を出すのではなく、上手に軽減させつつ受け止め、かつ発散する──つまり、怒りを自分でコントロールするのです。
(引用元:THE21オンライン|疲れを溜めない「ストレスコントロール」の極意 ※太字は筆者が施した)
重要なポイントは、怒りのピークが訪れる「最初の6秒」だと、裵氏は解説しています。ストレスを受けたあとのこの6秒間をうまく乗り切れば、ストレスを軽減し発散できるとのこと。そして、そのためのテクニックである「視点転換」をするためには、次の3つの方法が有効なのだそうです。ぜひ参考にしてみてください。
1. 違うことを考える
これは、怒りそうになったときに、週末の楽しい予定といった “楽しいこと” を思い出して思考を転換させる方法です。人間は同時に2つのことを考えるのが苦手なので、簡単ですが有効な手段なのだそう。怒っていたことを一度忘れれば、あとで冷静に考えることができて、ストレスもたまりませんよね。
2.「~すべき」という考えを捨てる
ここで言う「~すべき」とは、「あの上司は自重すべき」というような、他人が自分の考えや価値観とは異なる言動をとることが納得できない気持ちのことです。怒りの感情は、こちらの理想と現実とのズレによって生まれます。「他者は自分とは違う」と考え、他人を変えることはできないと理解すると、変に怒らずに済むようになります。
3.表わし方を変える
これは、怒りを生じさせた出来事を自分の中で「ネタ」にしてしまう手法です。「このことを友人に話したら」というように、誰かと笑い話をするための「ネタ」として考えることで、自分の中で怒りを笑いに変換することができます。態度の悪い飲食店の店員も、常識のない部下も、よい話のネタになると考えましょう。
【しないほうがいいこと2】感情の反復横跳び
イライラしたとき、多くの人が「ストレス発散や気分転換をしよう」と考えてしまいがち。しかし、それでは心が余計疲れてしまうと指摘するのが、仏教僧侶で本の執筆もしている草薙龍瞬氏です。
ムカッとして、楽しんで、褒められると舞い上がって、叱られると凹んで……こうした感情的な反応を、休むことなく繰り広げています。
怒って、喜んで、怒って、喜んで、の繰り返し。まるで反復横跳びではありませんか。しかも「真ん中」(ニュートラル)が抜けている(!)。これで心が消耗するのは、ごく自然ですよね。
(引用元:東洋経済オンライン|心が強い人は「無感情」を習慣にしている-簡単!マイナス感情はこうしてリセットする ※太字は筆者が施した)
草薙氏は「心の不快(怒りや悲しみ)を打ち消すために快(喜びや楽しさ)の刺激を受けても、またすぐ不快に戻るため、同じことを繰り返して心は疲弊していく」と述べています。たとえば、会社でトラブルがあったとき、帰りにカラオケで歌ってスッキリしても、次の日の朝には「会社に行きたくないなぁ」と、憂鬱感やイライラに再び襲われるのです。
大切なのは、試合前のアスリートのように、物事を「感情」ではなく「感覚」で感じられる、フラットでニュートラルな精神。そのために、草薙氏はいくつかの簡単なマインドフルネスを推奨しています。マインドフルネスにはさまざまな手法がありますが、草薙氏がすすめるマインドフルネスは「感覚に意識を向ける」というもの。
スタンダードな方法としては、「深呼吸して、鼻孔の感覚やお腹のふくらみと縮みを感じとる」というものがあります。これを “感情で反応せず、ニュートラルに帰る” ことを目指して行なうことで、ニュートラルな精神を取り戻せるのだそう。
落ち込んだからと考えなしに気分転換をして「感情の反復横跳び」をするのではなく、まずは心をニュートラルな状態に落ち着けましょう。
【しないほうがいいこと3】愛想笑い
仕事でもプライベートでも、話し相手の機嫌を損ねたりその場の空気を悪くしたりしないように、ついしてしまうのが「愛想笑い」ですよね。調和のための察しと思いやりを重んじる日本において「愛想笑いはコミュニケーションに欠かせないものだ」と考えてしまうのも無理ないでしょう。
一方、ネットニュース編集者であり独自の思想を打ち出した著書を多く出版している中川淳一郎氏は、自らの豊富な経験から、そんな考えに異議を唱えています。喜怒哀楽に正直に生きないからこそ、余計なストレスがたまるのだといいます。
「喜怒哀楽」という4つの感情を表す言葉がある。このなかで「怒」と「哀」はネガティブな感情であり、突発的に生じることも多いため、素直な感情が表れがちである。だが「喜」と「楽」は比較的コントロールが可能なため、本心を押し殺してでも表現することが求められがちだ。だからストレスになる。
(引用元:プレジデント・オンライン|ヘラヘラと愛想笑いを続ける人生は惨めだ)
中川氏は、「愛想笑いも仕事の一部」と考えている節があると指摘しています。たしかに、世間的にはそういう空気になっているかもしれません。しかし、そこまで笑わずとも、仕事はきちんと進むものなのです。
もちろん、愛想笑いをまったくしないようにするのは難しいでしょう。ですが、不必要に愛想笑いをしないよう心がけるだけでも、ストレスはかなり軽減します。
たとえば、デスクワークや昼食のときに、ひとりになったり、仲のよい人とだけ話すようにしたりすれば、無理に笑う必要はなくなりますよね。また、休日もひとりで過ごす時間をつくるなど、周囲に気を遣わないで済む時間を大切にするのがいいのかもしれません。
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仕事や友人関係や家族、いろいろなことに神経を使いながら忙しい毎日を生きる、現代のビジネスパーソンにとって、ストレスの原因になりうるものは、至るところに存在します。そして、無意識のうちに我慢をして、自らストレスを募らせてしまっている場合もあるでしょう。
そんなストレス社会だからこそ、心が疲れているときには、その原因を見つけ出し、不要なことはやらないようにするべきなのです。
(参考)
THE21オンライン|疲れを溜めない「ストレスコントロール」の極意
東洋経済オンライン|心が強い人は「無感情」を習慣にしている-簡単!マイナス感情はこうしてリセットする
もっとわかりやすくて役に立つ仏教を
プレジデント・オンライン|ヘラヘラと愛想笑いを続ける人生は惨めだ
McCullough, Michael E., Paul Orsulak, Anna Brandon, and Linda Akers (2007), "Rumination, fear, and cortisol: An in vivo study of interpersonal transgressions," Health Psychology, Vol.26, No.1, pp.126-132.
【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。