ミスが多すぎる人は「メタ認知能力」が低い。元ANA整備士に学ぶ “ミス回避” の心得。

メタ認知能力を高めてミスを減らす01

人間はミスを犯す生き物。とはいえ、仕事ではなるべくミスを起こしたくないと誰もが思うことでしょう。

俗に「ヒューマンエラー」と呼ばれる人間の判断ミスは、時として大きな事故や問題を引き起こす危険性があります。プロジェクトの進捗に悪影響を与えたり、会社に損害を与えたりするおそれがあるのはもちろんのこと、ミスをした本人は、上司や周囲の人、取引先などから悪い評価を受けてしまいます。

どうすれば私たちはミスを減らすことができるのでしょうか。本記事ではミスを減らす方法を、「メタ認知能力」というキーワードから探っていくこととします。

ミスしやすい人の特徴「メタ認知能力が低い」

大小に関係なく、ミスは誰しもが経験するもの。

「ちゃんと確認をしたはずなのに」
「いつもはミスをしないのに」

ミスは思いもしないところで発生することもあります。

そもそも、私たちがミスを犯すのはなぜなのでしょうか。元・ANA整備士として、少しのミスが多くの人命に影響する航空業界で機体の整備を行ない、現在ではANAビジネスソリューションで「ヒューマンエラー対策研修」の講師を務める中村恒徳氏は、以下のように語っています。

よくミスをしてしまう人には、「メタ認知能力が低い」という共通点があると言われています。

(引用元:マイナビニュース|人はなぜミスをするのか? - 元ANA整備士に聞く、ミスの起こらない組織とは)※強調は筆者にて施した

「メタ認知能力」とは、自分自身のことを客観的に認知する能力のことです。

メタ認知能力が高ければ、今日は体調が悪い、少し集中力が足りていない、といった自分の状態を認識することができます。そのため、「今日はボーっとすることが多いから、メールの送信先はちゃんと確認しないと」のように、状況によって普段と同じ作業をより慎重に行うことができ、ミスを防止できるのです。

一方、メタ認知能力が低いと、焦りや勘違いなどの感情・考えの変化に気づかずに判断・行動してしまいます。「確認した」という思い込みや、「行なうべきチェックを気分しだいで怠る」という気のたるみにより、ミスを起こしてしまう可能性が高くなるというわけです。

ならば、ミスを減らすためにすべきことはひとつ。メタ認知能力を高めればいいのです。中村氏は、どんな人でも習慣的な取り組み次第で、メタ認知能力を高め、ミスを無くすことができると述べています。メタ認知能力を高めるも低めるも、普段の行動次第なのです。

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「観察・制御」でメタ認知能力アップ!

メタ認知能力について、もう少し詳しく説明しましょう。そもそも「メタ認知」とは、アメリカの心理学者であるジョン・H・フラベル氏が提唱した心理学用語の一つです。

「メタ認知=自分自身を客観視すること」であることは先述した通り。具体的には、以下の2つの機能を交互に繰り返すことによって、冷静に自分自身を観察します。

  • モニタリング(観察):自分自身の感情や考えを観察する機能
  • コントロール(制御):モニタリングの結果をもとに、自身の行動を制御する機能

メタ認知能力が高い人は、このモニタリング機能とコントロール機能を無意識にすばやく切り替えることで、目の前の出来事を冷静に分析して行動することができます。つまり、モニタリング機能とコントロール機能を機能を普段の生活の中で意識的に使えば、徐々にメタ認知能力を上げることが可能だと言えます。

「自分は仕事でミスをしやすい。どうにかしたい!」とお悩みの皆さん。ミスの原因は、ご自身のメタ認知能力の低さにあるのかもしれませんよ。次にご紹介する方法によって、メタ認知能力を向上させる取り組みを試してみましょう。

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メタ認知能力を高める方法1:自分自身を観察するクセを付ける

中村氏いわく、メタ認知能力を高めるには、自分自身を良く観察するクセを付けることが有効なのだそう。そこで、メタ認知の機能のひとつであるモニタリング機能を高めるために、普段の生活の中で自分自身を観察するクセを付けることをお勧めします。普段無意識にやっている行動の際に、自分自身の感情の変化を意識的に観察するのです。

例えば、朝起きた時に、「昨日、夜更かしをしたせいで目覚めが悪い」などと自分の状態を言語化してみましょう。その際は、自分がそんな状態(目覚めが悪い状態)になっている理由(昨日夜更かしをしたから)も考えると、より客観的に自分自身を観察できるようになります。

上司や同僚と雑談をした時、取引先の人と電話で話をした時など、意識しなければそのまま終わってしまうような状況でも、「自分は相手のあの言葉が引っ掛かっているな。なぜだろう」などと、よく考えてみてはいかがでしょうか。冷静に自分や周囲を見つめられるようになるはずです。

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メタ認知能力を高める方法2:毎日1行だけでも日記を書く

リアルタイムで自分自身の気持ちの変化を捉えるのは大変だと感じる人は、1日1回、その日の出来事を振り返って日記を書いてみるのはいかがでしょうか?

心理学では、メタ認知能力を向上させるための方法として、日記に自分自身の言動を書き留めるのは王道の手法と言われているそう。日記を書くことは、中村氏のほか、心理学博士の榎本博明氏も推奨しています。

これまで日記を書く習慣がなかった人も、まずは1行程度でいいので、その日の中で印象に残っている自分自身の言動と、言動について今自分が考えていることを書き留めてみてください。

「急いで焦ってしまい、◯◯さんへのメールで誤送信をしそうになった。急いでいる時こそ送信先は確認すべきだと思った」

「◯◯のことで上司に褒められて、気が大きくなった。そのせいで別の仕事が雑になってお客様から指摘を受けてしまった。仕事がうまくいった時こそ、気を引き締める必要があると思った」

などと書き留めておくのです。そうして数ヶ月後に読み返すと、自分自身がどのような傾向にあるのかを客観的に把握することができます。仕事上のミスを減らすのに大いに役立つでしょう。

また、榎本氏は、自分の言動を日々振り返ることを習慣にすると思考力が培われるという効果も期待できると言います。いろいろな考え方をすることで、物事を柔軟に受け止められるようになるのだそうですよ。様々な人の立場から物事を考えられるようになれば、ミスをさらに減らすことができそうですね。

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メタ認知能力を高める方法3:目標を立てる

自分自身を観察するクセを付けてモニタリング機能を強化したとしても、感情の変化をコントロールできない限り、メタ認知能力が向上したと言うことはできません。

自己モニタリングや日記などで自分自身がミスをする(あるいはミスしそうになる)場面や感情の変化を把握することができたら、ミス防止のための具体的な行動目標を立てて、徐々に自身の行動を修正するようにしましょう。中村氏は、この「目標を立てる」ステップが大切なのだと言います。確かに、自分について良くない傾向を把握しても、改めようという意識が無くては、まるで意味がありませんよね。

例えば、急いで焦っている時に作業確認を怠る傾向を把握している場合は、確認の前に一呼吸おくことを行動目標としてはどうでしょうか。一呼吸おくことで「自分は今焦っている、作業確認をしっかりやらないと」などの行動につながります。そして、自分で決めた行動目標を実践し続けるようにしてください。

***
日常生活で使うツールが優秀になり、機械に起因する問題が少なくなってきた昨今、ヒューマンエラーを未然に防ぐ重要性は今後より高まっていくと考えられます。

今回の内容を参考に、まずは自分自身を観察するメタ認知能力を高めてみてはどうでしょうか?

(参考)
マイナビニュース|人はなぜミスをするのか? - 元ANA整備士に聞く、ミスの起こらない組織とは
マイナビニュース|人はなぜミスをするのか? - 元ANA整備士に聞く、ヒューマンエラーの正体
マナラボ|メタ認知とは? メタ認知能力が高い人・低い人の解説と鍛え方
キャリアパーク!|メタ認知・非認知能力が高い人の特徴と鍛え方3つ
脳科学辞典|メタ認知
EL BORDE|【メタ認知特集:前編】今話題の“メタ認知”。仕事に活かせる3つの理由とは?
EL BORDE|【メタ認知特集:後編】“メタ認知”を高めるために、まずやるべき、たった1つのこと

【ライタープロフィール】
森下智彬
大学卒業後、国内外の農業に従事。帰国後はITインフラエンジニアとして都内の企業に勤める。仕事の傍ら、自身のブログを開設・運営を始める。現在は、自身のブログ運営とライターの業務をメインに行っている。

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