三日坊主は脳の仕組みが原因。「小さな習慣」で戦略的に目標を達成する方法

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「あの試験に合格したいけれど、忙しくてなかなか勉強できない」
「やせたくてジムに入ったけれど、もう1ヶ月以上通っていない」
「毎日30分早起きして読書すると決めたけれど、三日坊主で終わってしまった」

やりたいことや、やるべきことはわかっているのに、行動に移せなかったり、三日坊主で終わってしまったりするのはなぜでしょう。

原因は、慣れていることをするときと、最近始めたばかりの新しいことをするときでは、脳の使う部分が異なるから。新しい習慣は、私たちに強い負荷を感じさせ、定着しづらくさせるのです。

しかし、大変だからといって先延ばしにしたり、諦めたりしていては、人生は好転していきませんよね。何かを達成するためには、小さな行動をコツコツと積み重ねることこそが重要です。

今回は、「小さな習慣」の身につけ方についてお伝えします。以下で詳しく見ていきましょう。

なぜ習慣は定着しないのか:脳は変化を嫌う

定期的な勉強やランニングなど、良い習慣を身につけたいのに、なかなか取りかかれなかったり、三日坊主で終わってしまったりすることの原因には、私たちの脳の仕組みが関係しています。

1日の行動のうち、約45%は無意識の習慣で成り立っていると言われていることをご存じでしょうか。たとえば、歯を磨いて、顔を洗って、通勤して、会社のデスクに座るいつものルーティーン。このように、考えなくても体が動くような行動をするときは、脳の中心部分にある基底核という部分が使われています。

基底核が使われているとき、私たちは「考えている」という感覚がなくなり、自動的に動きます。たとえば、会社などの通い慣れた場所なら、考えなくても体が勝手に向かいますよね。

一方で、いつもと違うことをするときは、額の内側あたりにある、脳の前頭前野という部分が使われます。前頭前野が使われるのは、たとえば、いつもはやらない勉強をやろうとするときや、もう少し寝たいけれど早起きしてランニングに行くとき、普段は好きなものを食べているけれど今日はヘルシーなものをチョイスすると決めたときなど、意識的に考えて行動に変化をもたらすとき

前頭前野を使うと、脳のエネルギー源であるブドウ糖を大量に消費するのに対し、基底核を使ったときは、ほとんど消費されません。古来からエネルギーを温存することが生存本能である私たちは、前頭前野を使うことを好まず、今までと同じことをしたくなります。

「やると決めたのに、やらなかった。自分は怠け者だ……。」と悩むことがあるかもしれませんが、私たちは脳の構造上、変化を嫌うようにできているのです。

それでも、やはりよい習慣を身につけて人生にポジティブな変化をもたらしていきたいですよね。そこで有効になってくるのが「小さな習慣」です。

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「小さな習慣」とは

「小さな習慣」は、著書『小さな習慣』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなった、作家でブロガーのスティーヴン・ガイズ氏が考案した新しい習慣を身につける方法です。スティーヴン氏によると、何かを達成するためにはモチベーションよりも戦略が大事だそう。

たしかに、モチベーションに頼っていると「今日はやる気があるから頑張るぞ」という日もあれば、「やる気がしないから何もやらない」という日もおとずれ、継続的な努力が難しくなりそうですよね。

小さな習慣は、毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動。たとえば「毎日、腹筋を1回だけやる」という目標を立てたとします。あまりにも簡単なので、どんなに疲れていても、やる気がなくてもできますよね。

このように、小さすぎて失敗できない目標を決めることで、気軽に始めることが可能になり、結果的に大きな効果を生むのです。

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「小さな習慣」の実践方法

「小さな習慣」の実践方法は以下の通りです。

  1. 小さな習慣とプランを選ぶ
    まずは、身につけたい小さな習慣をリストアップします。小さな行動であれば、それほど意志力を使わないため、複数同時に行なうことが可能です。ただし、最大4つまでにしましょう。
  1. 「なぜそれを望んでいるのか」を掘り下げる
    リストアップした習慣ひとつひとつに対して「なぜそれを望んでいるのか」を深掘りしましょう。選んだ本当の理由を明らかにすることで、その習慣が努力に値するのか確かめます。
  1. 行動開始の合図を決める
    次に、その行動を開始する合図を「時間ベース」もしくは「行動ベース」で決めます。時間ベースの場合は「午後6時から勉強を開始する」、行動ベースの場合は「仕事から帰宅してご飯を食べ終わったら30分後に勉強を開始する」というように決めましょう。毎日の勤務時間が9時〜17時など、規則的な生活の人は時間ベース、仕事のスケジュールが柔軟な人は行動ベースが取り組みやすいそうです。
  1. 報酬を決める
    小さな習慣を定着させるために、それを実行したあとのご褒美を決めておきましょう。たとえば「問題集を3ページ解いたらNetflixで好きなドラマを1話観ていい」など簡単なもので構いません。続けているうちに、ご褒美がなくても、習慣を実行した満足感だけで十分だと感じるようになります。
  1. 目標の達成度を記録
    目標の達成具合
    を書き留めておきましょう。たとえば、日付の書かれたノートを用意し、習慣を達成できた日はチェックを入れる、など方法は自由です。スマートフォンにメモをするのでもよいですが、著者のガイズ氏は手書きで行なうことをすすめています。
  1. 小さく考える
    小さな習慣は、限りなく小さくすることがオススメです。腹筋を1回する、本を1ページだけ読むなどであれば、小さすぎてどんなに疲れていて意志力が弱っていても「これくらいならできる」と思わせてくれますね。小さなステップでも確実に踏んでいくことが成功への秘訣です。
  1. 期待しすぎず、やるべきことを確実にこなす
    習慣が定着してくれば、期待は膨らんでくるでしょう。「毎日10キロ走れば、すぐに痩せられるだろう」など、たしかに達成できれば大きな結果は出るかもしれませんが、目標は小さく保つほうが無難。大切なのは、いかに継続し、積み重ねていくかです。
  1. 習慣になる兆しを見逃さない
    今までやっていなかったことを定期的に実行し、それが習慣になるまでは一定の時間がかかります。小さな習慣を成功させるためには、習慣になる兆しを見逃さないことが大切です。習慣になる兆しは、「無意識にそれができるようになる」「日常のなかに溶け込んだ」「その行動をしないよりもする方が簡単になる」などが挙げられます。最初に決めたことが本当に習慣になるまでは、新しい習慣や、もっとハードルの高い習慣には手を出さないでおきましょう。

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「小さな習慣」をやってみた

著者が実際に「小さな習慣」を決めて実践してみました。

まず最初に、目標したいことをリストアップ。このときは、小さな習慣にはこだわらず、最終的に達成したいことを書き出します。

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そして、この中から小さな習慣を定着させたいものを選びます。著者のガイズ氏によると、最大で4つまでにおさめることがポイントなので、筆者は3つ選択しました。また、全て10分以内にやり終えられるほど小さいことが理想的だそうなので、以下のように最小限の行動を設定。

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次に、なぜそれを小さな習慣にしたいのかを掘り下げました。

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掘り下げたことによって、本当にこれがやりたいことなのか、なぜやりたいのか、が明確になりました。この段階で、小さい習慣に選んだものが、自分にとってそれほど重要でないと気づいた場合は、やることを選び直してもいいと思います。

開始の合図は以下の通りにしました。

読書をする:朝ごはんを食べ終わったらすぐに

日記を書く:寝る30分前に書く

試験勉強をする:夜ご飯を食べ終わった30分後に開始する

報酬については、1日の小さな習慣を全て達成したら、翌日は好きなパン屋へ朝ごはんを買いにいくことにしました。

目標の達成具合は、やることを縦軸、日付を横軸に、マス目を書き、達成できたらマス目の色を変えました。こうすることで、やるべきことが出来ていない日は一目瞭然になりますし、達成してマス目が埋まっていくこともモチベーションにつながります。

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「小さな習慣」を実践した感想

実践してみて、私としてはかなり効果的な方法だと感じました。今まで目標を持っていても行動に移すのは難しいと思っていたのですが、このようにものすごく小さな目標であれば、継続することがそれほど大変ではありません。やはり、「ものすごく小さい」ということがポイントだったと感じます。

たとえば、「日記を1行だけ書く」という習慣は、どんなに疲れていても実践できます。結果、あまりにもタスクが小さいので、実際には1行書くだけでは物足りず、何行か書いてしまうことがほとんどでした。何事もやり始めることが一番億劫で、なかなか重い腰が上がりませんが、「小さなタスクだから」と一度やり始めると案外、簡単に取り組めます。

今後も続けていけそうですし、もうしばらく続ければ、ライフスタイルの中に組み込まれて、歯磨きのように本当の習慣になりそうです。運動習慣や食生活なども、これを活用して改善していきたいと思います。

***
「いつも張り切って目標を立てるけど、なぜか達成できない」という人は、ぜひ小さな習慣をためしてみてください。積み重ねれば、大きな結果へと導かれるでしょう。

(参考)
Harvard Business Review|Habits: Why We Do What We Do
Entrepreneur|Your Brain Doesn't Want to Change: 5 Ways to Make It
Linkedin|Why We Resist Change? Blame Our Brains
スティーヴン・ガイズ著, 田口未和訳(2017),『小さな習慣』, ダイヤモンド社.
Stephen Guise|About

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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