宮本武蔵も言っていたビジネスパーソン必携の心得「勉強せよ。実践だけでは学びは浅い」

宮本武蔵に学ぶビジネスパーソンの心得01

ビジネスの世界では、「失敗してもやり直せばいい、何度も挑戦することが大事だ」とよく言われます。けれども、できることなら失敗したくはありませんよね。たとえば、営業やプレゼンであなたの一言で全てが決まるという場面において、「失敗しても、次の機会に成功すればいいや」とはなかなか思えないはず。失敗を避け成功し続けられるビジネスパーソンになりたいものでしょう。

そのための心構えは、意外にも日本の古典兵法書から学ぶことができます。その本の名前は『五輪書』(ごりんのしょ)。江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵が、武士として兵法(日本では剣術という意味)を学び続けた生涯の集大成として著した作品です。

宮本武蔵研究の第一人者である魚住孝至氏が講師を務めたNHKの番組『100分de名著』によれば、『五輪書』は現代人にとって「マニュアル書を超える究極のマニュアル本」。ビジネスパーソンがここから学びとれることは多いはずです。

そこで、『五輪書』全5巻のうち、「地の巻」「水の巻」「火の巻」から厳選して、勝ち続けるビジネスパーソンになるためのエッセンスを紹介していきます。

地の巻から学べること:「適材適所」の実践

『五輪書』の1巻目である「地の巻」には、『五輪書』の説明と、武士として大事にすべき心がけが書かれています。そのうちのひとつが、「適材適所」。武蔵は、個々の武士を率いる大将は、適材適所に人材を配置せよと説いたのです。

その心がけを説明するために、武蔵は家の建築という例を用いました。一番見た目が良くまっすぐで強い木を柱として、見た目は良くても弱い木は障子の枠として、そして見た目が悪かったり曲がっていたりする木は足場の材木として使うべきだ、と述べています。

その適材適所を実現するためには、部下の力量を知る必要があります。武蔵は、部下に対し正しく目利きをするには、次の5つの要素を見るべきだと説きました。

  • 部下の技術力
  • 部下の手際の良さ
  • 部下が細かいことに気を配れる人かどうか
  • 部下が周りを鼓舞できるかどうか
  • 部下にできないこととは何か

このことは、武士の世界に限らず、ビジネスにおいてもじゅうぶん通用することではないでしょうか。たとえば、書類作成が得意な人・苦手な人、リサーチが速い人・遅い人、デザインに長けた人・そうでない人がいるといった具合に、人によって得意不得意は違うのですから、向いている仕事が違うのも当たり前のことです。

経営・組織コンサルティングなどを手がける株式会社識学は適材適所について、組織の目標は何なのか、その達成のためにはどのような機能が必要なのかをきちんと設定し、それに合わせて人を配置しなければならないと説明しています。もしも、組織が求める機能を人材が持ち合わせていなければ、その機能に合わせて人材を成長させることも必要だとのこと。そのためには、当然のことながら、人材の強み・弱みをしっかり把握する必要があるのです。

あなたがもしリーダーの立場にあるなら、チームメンバーたちの能力をよく見極め、チームの目標を実現させるべく、メンバーの能力をフル活用させてください。

宮本武蔵に学ぶビジネスパーソンの心得02

水の巻から学べること:実践と座学をともに重ねる

「水の巻」には、太刀の持ち方や振り方などのほか、剣を練習する際の心得が書かれています。

武蔵は『五輪書』について、確かに剣術について説いた書ではあるものの、この書だけで剣術をマスターすることはできないと述べています。武蔵いわく、「この書を元にして実践を重ね、自分ならではの勝利法を混ぜ、『これこそが自分だけの強みだ』と言える剣術を作り出すこと」を目標にすべきなのだそう。『五輪書』を使った座学と、稽古(実践)の両方を大事にするべきだと説いているのです。

武蔵は、自分の強みを伸ばし始める前に、型を学び、自由に型を扱えるようになることが必要だと考えました。つまり、教科書で学んだ剣の型をいつでも実戦で使えるように稽古することが、初学者にとって重要な鍛錬だということ。座学で学んだスキルを無意識に使えるように鍛錬することが、スキルを極めるうえで非常に重要なのです。逆に、座学を軽んじて実践だけをしていても、学びが浅いままになってしまいます。

これはまさに、ビジネスでも同じことが言えるでしょう。日々忙しく働くビジネスパーソンの中には、実践は重視するけれど座学はあまり役に立たないと考えている人もいるかもしれません。でも、座学なしにいきなり実践から入ろうとしても、うまくいかないことは明らかです。

たとえば、初めてプレゼンをすることになった人が、プレゼンの仕方を学ばないまま資料を作り、本番を迎えたとしても、成功する確率は決して高いとは言えないでしょう。プレゼンを成功させたいと思う人なら誰でも、最初はインターネットで検索したり、プレゼンの本を買ったり、プレゼンがうまい人のマネをしたりするはずですよね?

資格試験のオンライン学習サービス「資格スクエア」の代表であり弁護士でもある鬼頭政人氏も、座学の重要性を説いているひとり。鬼頭氏は、一流を目指すなら、勉強なしには到達できないと断言しています。

たしかに、社会人は経験から学ぶことも多く、わざわざ勉強しなくてもある程度の結果を出すことはできます。ただし、経験だけですべて学べるわけではありません。実際、新たな法律や判例を学び続けなければならない弁護士の世界でも、一流の弁護士ほどたくさん勉強しているのだそうですよ。

鬼頭氏は、勉強することの見返りは「経験の価値を極大化できること」だといいます。座学があってこそ、実践からの学びも深くなるというわけですね。

武蔵の言葉を借りれば、「今日は昨日の我に勝ち、明日は下手に勝ち、後は上手に勝つ」。この言葉の意味は、「今日は昨日の自分に勝ち、明日は自分より下手な者に勝ち、その後は自分より上手な者に勝つ」ということです。座学と実践、どちらかを疎かにすることなく、ともに積み重ねる努力を続ければ、着実に成長していけるはずです。

宮本武蔵に学ぶビジネスパーソンの心得03

火の巻から学べること:“根回し” が事の成否をわける

戦い方の理論が書かれているのが「火の巻」です。実際の戦闘の場面での駆け引きの仕方や、戦局の見方などが説明されています。

武蔵は、戦いにおいては、敵を見抜くこと、戦い方をシュミレーションすることが重要だと説いています。そのひとつの方法が敵になるというもの。自分を敵の立場に置き換えて、どうされると不利なのかをシュミレーションするのです。それがすなわち、敵の思考を見抜くことにつながります。

また、武蔵は「かげを動かす」「枕をおさへる」という技術も有効だと述べています。

かげを動かすの「かげ」とは、「影」と「陰」。心の動きを表す見えない「陰」と、実際の行動を起こす前動作の「影」を指します。武蔵は、フェイントをかけることで相手の動揺を誘い、相手が何をしようとしているか見極めるべきだと書きました。

枕をおさへるとは、敵が何かをしようとする兆しをとらえ、敵が行動に移す前にそれを封じ込めることです。つまり、戦わずして勝つということ。武蔵はこれが最善の勝ち方だといいます。

これらの戦術は、ビジネスにも応用することが可能でしょう。たとえば、自社で開発している人事管理システムを、ある企業に売り込みたいとします。その企業とは別の案件ですでに取引があり、担当者と話をする機会も多い。それならば、以下のような具合で相手企業の感触を探るのです。

  • 「今、御社では人事管理はどのようにやっているのですか?」
  • 「今の人事管理のやり方に、不都合なところはないですか?」
  • 「じつは、人事情報を一元管理できる新たなシステムを開発したんです」
  • 「一度、人事の方を紹介していただけませんか? 必ずご興味を持っていただけると思いますよ」

そう、これは「根回し」です。株式会社営業ハック代表取締役社長の笹田裕嗣氏は、「根回し上手は仕事上手」と断言しています。営業に限らず、仕事では上手に根回しができれば、それだけ成功確率が上がるのです。

上の例ならば、根回しの会話の中から「相手企業が人事管理作業に対して持っている不満」を聞き出すことができるかもしれませんし、「価格に対する要望」なんかも聞き取れるかもしれません。「じつはすでに競合との話が進んでいる」といった情報を得ることもあるでしょう。このようにして相手の動きを捉え(かげを動かし)、相手が競合と先に契約してしまうことを避ける(枕をおさへる)ことができれば、確実に勝利に近づきます。

ビジネスの世界も武士の世界も、真剣勝負の場面では、勝つことが重要です。勝つ可能性を少しでも上げるために、やれることをやりましょう。

宮本武蔵に学ぶビジネスパーソンの心得04

***
最後に、武蔵が実践していた「人にものを教えるときの法則」のなかから興味深いものをご紹介しましょう。司馬遼太郎の書いた小説『宮本武蔵』の中に記されているものです。

それは「必ず勝てると思い込ませる」というもの。武蔵は弟子に剣の訓練を施したあと、弟子に「勝負の日に、足元の地面にアリがいれば勝てる」と伝えたそう。折しも真夏。勝負の日、アリが地面にいるのは特別なことではありません。武蔵は、弟子が相手に呑まれることなく勝負に勝つことができるよう暗示をかけたというわけです。

「必ず成功できる」と考えることは、武士の世界だけでなくビジネスにおいても、あるいは勉強においても、重要なことなのかもしれません。今回お伝えした3つのことに加えて、ぜひ心に留めておいてください。

(参考)
宮本武蔵著, 渡辺一郎校注(1985),『五輪書』, 岩波書店.
Wikipedia|五輪書
魚住孝至著(2008),『宮本武蔵ー「兵法の道」を生きる』, 岩波書店.
NHK|名著54 五輪書:100分 de 名著
nippon.com|剣豪・宮本武蔵:その実像と『五輪書』に見る兵法思想
識学式リーダーシップ塾 | LEADERSHIP|組織における正しい「適材適所」の考え方
東洋経済オンライン|あなたは「学ばない」から「使えない」のだ
廣池幹堂著(2015),『人生の名言・歴史の金言』, 扶桑社.
All About NEWS|根回しの方法を知ると、仕事の効率が3倍上がる
司馬遼太郎著(2011),『新装版 宮本武蔵』, 朝日新聞出版.

【ライタープロフィール】
渡部泰弘
大阪桐蔭高校出身。テンプル大学で経済学を専攻。外出時は常にPodcastとradikoを愛用するヘビーリスナー。

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