「苦手な同僚と意見を合わせようと頑張っているけれど、なかなか難しい」
「上司にも同僚にも、もっと好かれたい。それなのに、どうしてうまくいかないんだろう」
こんな人間関係のストレスを抱え、悩みを深めている人は多いはず。でも、人間関係のことで無理をしすぎるのは、もうやめたほうがいいですよ。今回は、社会人を悩ませる人間関係にどう対処すればよいかをお伝えします。
ストレス原因1位は「職場の人間関係」
2021年5月、エン・ジャパン株式会社が運営する総合求人サイト「エン転職」上で、ユーザーを対象に「コロナ禍における仕事上のストレス」についてのアンケートが行なわれ、10,740人の回答がありました。
「現在、仕事上でどの程度ストレスを感じますか?」という質問に対し、「強く感じる」または「感じる」と回答したのは、合わせて全体のなんと81%。
(※@Press|『エン転職』1万人アンケート(2021年5月) 「コロナ禍における仕事のストレス」調査 をもとに編集部にて画像作成)
さらに、ストレスを感じると回答した人へ「ストレスを感じるのはどのような点ですか?(複数回答可)」という質問が追加でなされたところ、ストレスの原因が「職場の人間関係」だと回答したのは53%で、すべての選択肢の中で最も多かったのです。さらに年代ごとに見ても、20代・30代・40代以上のすべての年代で「職場の人間関係」が1位でした。
(※同上)
また、置き型社食サービスなどを手がける株式会社OKANによる、人事総務担当者2,000人を対象とした2020年11月のアンケートでも、従業員の離職理由として最も多かった回答は「人間関係」(30.7%)だったそう。
このように、多くの社会人が抱える人間関係の悩みをそのまま放置しておくのは危険です。こころの健康クリニック芝大門の院長・生野信弘氏によると、人間関係から来るストレスが最も影響を及ぼすのは、睡眠覚醒リズム。ストレスによって交感神経が興奮し、リラックス反応が出にくくなって、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めて眠れなくなったりすると言います。当然、睡眠不足のせいで仕事のパフォーマンスは大きく低下。これが慢性化すると、適応障害やうつ状態と診断されることもあるのだとか……。
では、職場の人間関係によるストレスは、どう解消すればよいのでしょうか。
【改善策1】「仲よくなる」ことより「仕事のしやすさ」を重視する
『精神科医が教える ストレスフリー超大全』などの著書がある精神科医の樺沢紫苑氏は、職場の人と「仲よくなろう」という意識を捨てることをすすめています。
あなたは自分の職場を「人間関係が険悪」と思うでしょうが、多くの職場を見てきた私から言わせると、それはごく「普通」のことです。「職場の人間関係はよくない」のがスタンダードなのです。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|精神科医が「職場の人間関係は悪くて当然」と断言するワケ)
どの職場にも、性格のバラバラな数十人、数百人が集まっています。そのなかに気が合わない人がいても当然ですよね。あなたの職場の人間関係だけが特別悪いのではなく、どんな職場でも人間関係はうまくいかないのが普通なのです。
そんな、悪くて当たり前な人間関係を「よくしよう」と思うからストレスになるのだ、と樺沢氏。仕事上の関係なのだから、仲よくなる・好かれることよりも、報告・連絡・相談といった、仕事上で必要なコミュニケーションをスムーズにとることのほうが大事だと伝えています。
あなたは職場の人に対して、「友人のような関係を築きたいのに築けない……」と悩んではいないでしょうか。樺沢氏の言うように、仕事のしやすさに主眼をおいて接することを意識してみてください。感情的にならなくてすむぶん、悩みもストレスも減るはずですよ。
【改善策2】相手に対するネガティブなとらえ方を変える
でも、人間関係のことで実際に困っているのに、いきなりドライになれなんて難しい……と思う方もいるでしょう。そんな方に、グロービス経営大学院のオウンドメディア「グロービスキャリアノート」 編集長で、心理学に詳しい新宅千尋氏の助言を紹介しましょう。
新宅氏いわく、人間関係の問題を解消する近道は、自分の考え方を変えること。いくら「相手の嫌なところが変わってくれればいいのに」と願っても、それはかなり難しいことだからです。
私たちが人間関係で悩んでいるとき、相手に対して知らぬ間にネガティブな感情を抱いているケースがある、と新宅氏。一度ネガティブな感情をもってしまうと、ネガティブなとらえ方しかできなくなる……そんな負のループを断ち切る方法を、新宅氏は3パターン説明しています。
1. 相手に嫉妬している人は「素直に認めて学ぶ」
相手のことが気に食わない原因は、嫉妬心かもしれないとのこと。たとえば、気に食わない同僚が自分よりも業績がいい場合、あなたの感じる不快感は業績のよさに対する嫉妬心から来ていると考えられるでしょう。
この場合、相手のどんな点に嫉妬しているのかを見極め、「学ばせてもらおう」と考え直すことが大切だそう。同僚はなぜ業績がいいのか、学べる点はどこか、と考えることで、ネガティブ感情は変わっていきます。
2. 相手を信頼できない人は「自己開示する」
よく知らない相手と同じチームに配属されて仕事がしづらい、といったように、相手のことを疑っている状況なら、自分から相手に歩み寄り自己開示するといいそうです。自分はどんな仕事が得意または苦手でどうすれば働きやすいかなどを伝えたうえで、相手のことも聞き出してみてください。
信頼関係は、すぐに構築できるものではないと新宅氏は言います。互いのことを知って、徐々に信頼を深めていければ、人間関係の悩みは減るはずです。
3. 相手が嫌い/苦手なら「長所を見つける」
相手に嫌いな部分、苦手な部分があるならば、意識的に相手の長所を見つけるようにしましょう。新宅氏は、完全に「悪」という人間はほぼいないと言います。
たとえば、「気が利かなくて嫌だ」と思う相手でも、別の一面を見ると発想力には優れている人かもしれません。長所に気づくと、相手に対するとらえ方がポジティブになっていきますよ。
【改善策3】「自分を嫌う人がいて当たり前」と知る
自分の考え方を変えても、相手があからさまに敵意を向けてくるので解決しないというケースもあると思います。そのような場合は、極力冷静に対応することを新宅氏はすすめています。
真に受けて落ち込めば相手の思うつぼですし、攻撃し返せばエスカレートする可能性があります。樺沢氏の考え方のとおり、仕事の関係だと割り切って最低限の対応だけをし、相手が飽きたり諦めたりするのを待ちましょう。
また、相手が自分を嫌っていると感じても、そう深刻に落ち込まないでください。新宅氏いわく、「全員に好かれることは不可能」。漫画原作者で、『ふりまわされない。 小池一夫の心をラクにする300の言葉』などのエッセイをもつ小池一夫氏が、こんな言葉を遺しています。
誰にでも好かれようなンて無駄な努力はするな。唐揚げでさえ嫌いな人がいるンだから、誰からも好かれるっていうのはどだい無理な話なンだよ。
(引用元:Twitter|小池一夫(@koikekazuo))
唐揚げでさえ嫌いな人がいるんだから、自分を嫌いな人がいるのは当たり前のことだ。言い得て妙ですよね。自分を好きな人も嫌いな人もいて当たり前なのだから、好かれている嫌われているということはあまり気にしなくていい。そう考えると、肩の荷がスッとおりませんか?
ただし、仕事に支障をきたすほどの嫌がらせなどを受けている場合は、人事部や先輩など第三者の手を借りて解決するのも手段のひとつだと、新宅氏は言っています。
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あなたの人間関係のストレスは解消できそうでしょうか。悩みやストレスを抱え込まず、適切に対処して、心地よく仕事を頑張ってください。
(参考)
@Press|『エン転職』1万人アンケート(2021年5月) 「コロナ禍における仕事のストレス」調査
こころの健康クリニック芝大門|職場の人間関係ストレスの悪循環
ITmedia ビジネスオンライン|人事総務に聞いた「従業員の離職理由」 3位は職場環境、2位はキャリアチェンジ、1位は……
ダイヤモンド・オンライン|精神科医が「職場の人間関係は悪くて当然」と断言するワケ
グロービスキャリアノート|職場の人間関係で悩む人は多い。ケース別おすすめ解消法
Twitter|小池一夫(@koikekazuo)
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。