みなさんは普段、どのような夜をお過ごしでしょうか。
「テレビを見てダラダラ過ごすことが多いけれど、本当は勉強したほうがいいような気もする……」
「残った仕事をしたりビジネス書を読んだりして過ごすタイプだけど、これじゃあちょっと頭の使いすぎかな……」
このように、夜の過ごし方に迷いがある人はいませんか?
今回は、夜を「ダラダラして過ごす」場合と「仕事や勉強をして意識高く過ごす」場合について、それぞれのメリットとデメリットをお伝えします。状況によりどちらの過ごし方をすべきなのかというアドバイスもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
夜にダラダラするメリット:脳のDMNが活性化する
信じがたいと思う人もいるかもしませんが、ぼーっとしたりリラックスしたりしてダラダラすることには、「脳が活性化する」というメリットがあります。
脳科学者の茂木健一郎氏によれば、何もしていないときやリラックスしているとき、脳内では「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳部位が活発に働くのだそう。DMNの役割は、体験の整理をすること。DMNは、仕事や勉強、人と会うなどのさまざまな活動により得た情報や体験を思い出し、それらの記憶を結びつけています。それによって、忘れていたことを思い出したり、いいアイディアを思いついたりすることができるのです。
常に何かしらに集中して取り組んでいないと、時間を無駄にしているように感じてしまう方もいるでしょう。ですが、DMNは何かに意識的に集中しているときには活発化しません。音楽を聴いてぼーっとしたり、ゆっくりお風呂に入ってリラックスしたり。そういった時間も、脳にとってはとても大切なのです。
夜にダラダラするデメリット:視覚情報が脳に負担をかける
ダラダラすると言っても、スマートフォンやパソコンを見ながらダラダラすると、脳が余計に疲れてしまいます。
精神科医の樺沢紫苑氏によると、脳はキャパシティの90%を視覚情報の処理で使っているそう。そのため、スマートフォンやパソコン、テレビなどの視覚情報を働かせる娯楽は、脳に負担をかけてしまうと言います。ダラダラして体の疲れを取っているつもりでも、SNSを見ながらやゲームをしながらだと、脳はまったく休めないどころか、むしろ疲れを溜め込んでしまうのです。
そのうえ、寝る前にスマートフォンなどの画面を見ることは、睡眠の質を低下させることにもなります。理由は、スマートフォンから発せられるブルーライトを浴びると、眠気を誘発し睡眠の質を高める働きをするメラトニンというホルモンの分泌が抑えられてしまうから。“寝る前のダラダラスマホ” は、良質な睡眠を妨げ、翌日にまで悪影響を与えかねない行為なのです。
夜に意識高く過ごすメリット:記憶力が高まる
夜に仕事や勉強をして意識の高い過ごし方をすることのメリットは、効率よく記憶できるという点です。ここで言う仕事や勉強とは、仕事のマニュアルを覚える、英単語を覚える、資格取得のための勉強をするといった、暗記を伴うものを指します。
東京大学薬学部教授で脳科学者の池谷裕二氏によると、就寝前は極めて学習効率が良い時間帯であることが明らかになっているとのこと。勉強した直後にテストをした場合と、勉強したあとで睡眠を取り翌朝にテストをした場合とを比べたところ、後者のほうが成績がよかったという実験結果があるのだと言います。
睡眠には、脳に蓄えた知識を整理整頓して、使用できる状態にするという役割があるそうです。寝ることによって、知識の量が増えるわけではありませんが、知識の質が変わるのだとか。睡眠と記憶は深く関係しているのです。
こうしたことを踏まえ、池谷氏は就寝前の1〜2時間を「記憶のゴールデンタイム」と呼んでいます。暗記を伴う仕事や勉強を寝る前に行なえば、睡眠によってよりよく記憶できるというわけです。
夜に意識高く過ごすデメリット:睡眠時間を削りがちになる
夜に仕事や勉強をすると言っても、夜中までやるのはよくありません。理由はふたつ。
ひとつは、睡眠がしっかりとれなくなるからです。上で説明したように、脳は眠っている間に学習していると言ってもいいくらい、睡眠と記憶には密接な関わりがあります。睡眠を削ってまで仕事や勉強に精を出しても、意味はありません。一夜漬けなんてもってのほかでしょう。
ふたつめの理由は、夜は気が散ってしまいやすいから。株式会社朝6時の代表取締役社長で朝活の第一人者である池田千恵氏は、夜中は時間が無限にあるように感じてしまい、ついやるべきこととは関係のないことをやってしまいがちで、作業が進みにくくなると言います。机に向かってはいても、実際にはスマートフォンを見て時間を使ってしまうことも多いもの。結果、睡眠を削るばかりで実のある作業ができないという最悪な状況にもなりかねないのです。
夜はダラダラするべき? それとも意識高く過ごすべき?
ここまでに紹介したことをまとめると、こうなります。
それでは、「どんなケースでは夜ダラダラすべきなのか」、逆に「どういう場合なら夜に意識高く過ごすべきなのか」をご提案します。みなさんの状況に照らし合わせながら読んでみてください。
夜にダラダラすべきなのはこんなとき!
翌朝に創造性を発揮させたいのならば、ぜひ前日の夜はダラダラ過ごしましょう。「数学の問題演習をしよう」「上司に出す新しい企画案を考えよう」といったように、朝イチで新しいことに挑戦したりひらめきが必要なことをしたりしたい場合は、前夜はリラックスして過ごすことをおすすめします。
先ほどお伝えした通り、脳内では睡眠により記憶が整理されるので、朝の脳は前日の記憶がリセットされた状態になります。茂木氏によると、起きたばかりで情報がまだ何も入っていないスッキリとした状態の朝の脳は、1日のなかで一番冴えているため、新しいことを学んだり創造性を発揮したりするのに最適なのだそうです。特に、目覚めてから3時間が、脳が最もよく働く時間帯だとのこと。
茂木氏は、そんな朝の時間を有効に活用するためには、前の晩をできるだけリラックスして過ごし、ベッドに入ったらさっと寝て翌朝すっきりと目覚めることが大切だと述べています。
創造性を発揮したい日の前夜は、音楽を聴いたりゆっくりお風呂に入ったりしてリラックスしてみましょう。上で紹介したDMNの働きによって、夜のうちに思わぬひらめきも得られるかもしれません。ただし、スマートフォンやテレビを見てダラダラするのはダメですよ。
夜に意識高く過ごすべきなのはこんなとき!
先述のように、仕事や勉強で何か覚えなければならないものがあるときには、意識高く夜を過ごしましょう。
池谷氏いわく、寝る前に勉強をするなら、歴史や英単語などの記憶を要する科目がいいとのこと。覚えたら忘れないうちに寝るというのが鉄則だそうです。
また、仕事のマニュアルや研修で渡された資料などの内容をなかなか覚えられないというようなときも、毎晩就寝前に何度か読み、頭に入れてから寝るということを繰り返せば、だんだんと覚えられるようになるはずです。
効率よく暗記したいときや、覚えるべきことをいっこうに覚えられなくて困っているときは、睡眠時間を削らない程度に夜の時間を意識高く活用してみてはいかがでしょうか。
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ダラダラすることにも、意識高く過ごすことにも、どちらにもメリットとデメリットがあります。今回ご紹介したことを参考に、状況に合った夜の過ごし方をしてみてください。
(参考)
プレジデントオンライン|毎日心地よく暮らす人の脳は危険な状態にある
STUDY HACKER|「息抜きスマホ」は脳に毒。1日5分の “この習慣” で脳に元気を取り戻そう。
新R25|【再掲】スマホを触るのが一番ダメ。精神科医が教えてくれた、脳に効く「いいダラダラ」
STUDY HACKER|ベストな睡眠は「朝型か夜型か」で異なる!人気産業医が”いい睡眠を取るコツ”教えます
プレジデントオンライン|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー
東洋経済オンライン|「だらだら過ごす夜」の罪悪感と決別する方法
PHPオンライン衆知|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方
【ライタープロフィール】
YUKA
大学ではフランス語を専攻。高校では一年間オーストラリアへ留学。海外への一人旅も経験し、夢は海外移住。趣味は音楽鑑賞・グルメ巡り・旅行など。