「最初から白黒決めつけてしまう癖があり、冷静に考えられない……」
「完璧さを求めるあまり、『100点か0点』という極端な思考に陥ってしまって疲れる……」
こんな悩みを持っている人はいませんか?
人が何かを思考する際、無意識のうちにバイアスがかかってしまうことがあります。その根本原因は「認知の歪み」であり、なんと13個もの種類が存在するのだとか。
心当たりのあるものはありませんか? 冷静な思考ができるようになるために、それらを自覚するところから始めていきましょう。
そんな「歪み」については、「心理学の認知バイアスとは? 8種類をわかりやすく解説!」でもわかりやすく説明しています。
「認知の歪み」13のパターン
精神科医の和田秀樹氏は、著書『「判断力」の磨き方 常に冷静かつ客観的な選択をする技術』の中で、「不適応思考」なるものの存在を指摘しています。「認知の歪み」とも呼ばれ、物の見方が偏ってしまったり、極端な考え方をしたりする原因になることも。
和田氏によれば、この不適応思考には13のパターンがあるのだそうです。ひとつずつ簡単に紹介していくので、ご自身に当てはまるものがないか確認してみてください。もしあったとしたら……あなたの思考は知らず知らずのうちに狂ってしまっているかもしれません。
- 【二分割思考】白か黒かをはっきりと分ける
例:「敵か味方か」「善か悪か」のような極端な判断を下す - 【完璧主義思考】「100点でなければ0点と同じ」と考える
例:自分の要望をすべて通そうとし、ひとつの妥協も許さない - 【過度の一般化】ひとつの事象を見て、それを一般的なものと見てしまう
例:数人の若者を見て「最近の若者は◯◯だ」と一般化する - 【選択的抽出】ある一面だけに注意を注いで、その他の側面を無視してしまう
例:いつも賛成してくれる人が一度反対しただけで、敵とみなす - 【肯定的な側面の否定】いい面があっても「たいしたことはない」と否定する
例:嫌いな人のいい面は目に入らず、悪い面しか見えなくなってしまう - 【読心】根拠がないのに、相手の気持ちを決めつけて勝手な解釈をする
例:「上司は私を嫌っている」と勝手に思い込む - 【占い】「予測」をあたかも「事実」であるようにとらえる
例:「どうせうまくいかない」と予想して決めてしまう - 【破局視】あるひとつの出来事で、破局的な見方をしてしまう
例:内定が出なかっただけで、この世の終わりのように考える - 【縮小視】肯定的な特徴や経験を「取るに足りないもの」ととらえる
例:TOEIC900点を保有していることに対して「こんなの誰でも取れる」と考える - 【情緒的理由付け】感情的なことが現実の見方を変えてしまう
例:気分がいいときは「何をやってもうまくいく」と考え、気分が悪いときは「何をやってもダメだ」と考える - 【「すべき」という言い方】「~すべきである」という言い方が動機や行動を支配している
例:「管理職たるもの、少々の熱では休むべきではない」と考える - 【レッテル貼り】わかりやすいラベルをつけてイメージを固定化する
例:大企業勤務者を「勝ち組」、そうでない人を「負け組」と決めつける - 【自己関連づけ】物事は複数の要因が関連しているのに、自分こそが最大もしくは唯一の原因であると考える
例:自分とまったく関係ないことに対して「私がいけなかったんだ」と考える
このような “思考を狂わすワナ” の存在に気づくことが、冷静に思考できるようになるための第一ステップになります。何かを考えるシーンが訪れたときは、自分の思考を上記の不適当思考と照らし合わせてみるといいでしょう。
ビジネスパーソンが特に陥りやすいのはこの2つ
上記13個のうち、前出の和田氏は、特にビジネスパーソンが陥りやすいものとして「二分割思考」と「完璧主義思考」の2つを指摘します。それぞれについて、改善方法をより詳しく探ってみました。
「二分割思考」の改善方法
「敵か味方か」「善か悪か」のように、物事を白か黒かで分けようとする「二分割思考」。たとえば、同じチームのメンバーの顔を思い出してみてください。普段から、「この人は自分の味方」「この人は自分の敵」などと考えてしまっていたら要注意です。和田氏は著書の中で、上司が二分割思考に陥っている場合の弊害を次のように指摘しています。
自分の忠実な部下はかわいがるが、気に入らない部下とは、あまり話もせず、場合によっては左遷したり、活躍の場を与えずに辞めさせたりしてしまう。部下のことを敵か味方かで判断して、味方は厚遇し、敵は排除するというやり方だ。
(引用元:和田秀樹(2007), 『「判断力」の磨き方 常に冷静かつ客観的な選択をする技術』, PHP研究所.)
これはなにも、上司の立場にいる人に限った話ではないですよね。味方だと考えている人の意見は素直に聞き入れるものの、敵だとみなしている人の意見ははなから排除する――これでは、冷静な思考ができているとは言えません。自分にとって都合のいい情報しか耳に入らなくなるため、思考や判断の正確さも大きく欠けることになります。
こういう際に、味方でも批判をすることがある(完全な味方などいない)とか、白と黒の間にグレーを想定し、この人は8割は味方だが2割は敵のところもあるというふうに考えられれば、柔軟な判断ができ、また味方が批判しても必要以上に落ち込むことはなくなる。
(引用元:日経ビジネス|新人に贈るストレス知らずの思考法とは?)
和田氏はこう述べています。考え方が両極端になっていることに気づいたら、その間の「グレーゾーン」の存在を認め、極端な思考に引っ張られないように気をつけましょう。
「完璧主義思考」の改善方法
前述のとおり、「100点でなければ0点と同じ」と考えるのが完璧主義思考です。たとえば、上司にいくつかの仕事を命じられて「全部を完璧に仕上げないと……(=ちょっとでもダメ出しされたら失敗だ)」と焦ったり、就職や転職をする際に「すべてが自分の希望通りの会社でないと……(=ひとつでも満たさないものがあったら候補から除外)」といった考え方が該当します。
こういった満点主義のワナにはまり、「ひとつダメならばすべてダメ」と考えると、すべてを満たさないものを排斥する癖がついてしまいます。これではストレスもたまりますし、ないもの・できないことを延々と追い続けることにもなりかねません。
和田氏は、解決策として「合格ラインの設定」をすすめています。「前回よりも指摘箇所が少なかったら良しとしよう」「勤務地がよければ、ほかは少々妥協してもいいかな」など、妥協点を探ってみてください。
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思考に歪みが生じるのは当たり前――これぐらい思っておいたほうがいいかもしれませんね。大切なのは、思考の歪みを自覚できるかどうかです。まずは「自分の思考はどんなふうに歪みがち……?」とご自身に問いかけてみてください。
和田秀樹(2007), 『「判断力」の磨き方 常に冷静かつ客観的な選択をする技術』, PHP研究所.
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SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。