「人の好き嫌いが激しい」と損するワケ。嫌いな相手にもイラっとしなくなる方法、教えます

嫌いな人にストレスを感じなくなる方法01

職場には、自分と合う「好きな人」もいれば、あまり合わない「嫌いな」人もいるかと思います。あなたは、嫌いな人と接しただけで過剰なストレスを感じたり、露骨に人を差別して周囲から反感を買ったりしてしまうことはありませんか? 

もし「Yes」であるなら、あなたは周囲の人を「好きか嫌いか」「敵か味方か」で極端に区別しすぎているかもしれません。

このような、人間関係における二極化思考は、自分にも他人にも悪影響を及ぼします。具体的にどんなデメリットがあるのか。そして、どうすれば人を極端に区別しないようになれるのか。詳しく解説していきます。

人の好き嫌いが激しいと「毎日がストレスだらけになる」

人の好き嫌いが激しいと、感情が常に大きく揺れ動き、日々がストレスだらけになるこう指摘しているのは、メンタルケア・コンサルタントであり産業カウンセラーの大美賀直子氏です。

大美賀氏いわく、他人のことを好きか嫌いかで極端に考える人は、いつも「良い人」や「良い状況」に囲まれていないと安心できないのだそう。しかし、誰もがいつでも自分のことを肯定してくれるわけではありませんし、常に思い通りの環境が用意されることなどありえません。

そのため、好きだったはずの人のことをふとしたきっかけで嫌いになったり、自分と合わない人とちょっと一緒にいるぐらいでイライラが募ったりして、ストレスがたまってしまうのだとか。

たとえば……

信頼している直属の上司Aが体調不良で欠勤になり、代わりに別の嫌いな上司Bが自分の業務に指示を出すことになったとき。上司Bが嫌いだからとイライラして仕事に身が入らない。それが態度に出てしまい、上司Bから注意されてさらにイライラが募る……。

こうなっては、仕事に支障をきたすレベルですよね。

さらに悪いことに、好き嫌いで人を極端に区別する人は、自分と価値観が同じ人のことを「好き」と考え全面的に信頼するものの、ひとたびその人と考えや価値観がずれ始めると、すぐに「裏切られた」と思い込んでしまうのだそう。そして、結果的に「世の中に信用できることは何もない」という虚無感に苛まれることもあるのだと言います。

極端な好き嫌いだけで人間関係を築こうとすると、かくもストレスだらけになるのです。周囲の人からも「選り好みが激しい人」と警戒され、距離を置かれてしまうでしょう。

嫌いな人にストレスを感じなくなる方法02

人の好き嫌いが激しいと「敵を多く作ってしまう」

組織では、考え方の違いなどにより派閥が生まれることがあります。社会心理学者でモナッシュ大学マレーシア校准教授の渡部幹氏いわく、好き嫌いで人を極端に区別しがちな人は、別の派閥にいる人(=考え方が違う人)に「敵」というレッテルを貼ってしまうとのこと。自分と考えが合う人は「好き」だし「味方」だけれど、そうでない人のことはみな「嫌いだ、敵だ」と考えることになり、いつしか自分の周りが敵だらけになってしまうのです。

人のことを好き嫌い・敵味方で判断してばかりいる人は、たとえばこんな言動をしてしまいます。

  • 新入社員や中立を守る人に「C係長とD係長、どっちが仕事しやすい?」と問いただして、自分の敵か味方かを見極めようとする。
  • 少し意見が食い違っただけで「Eさんは味方だと思ってたけど、もう敵です」と言う。

こんなことをしていては、明らかに周囲を困惑させます。中立を守っている人をも「敵か味方か」で判断していては、味方が増えるどころか、かえって敵を増やしてしまうことにもなりかねないのです。なにも良いことはありませんよね。

嫌いな人にストレスを感じなくなる方法03

人の好き嫌いが激しいと「チャンスを逃す」

行動科学コンサルタントとして240社以上の人材育成に携わった実績を持つ冨山真由氏は、人のことを好きか嫌いか白黒つけようとすると、仕事上のいろいろなチャンスを逃すと指摘しています。自分がやりたいことに気づけなかったり、本当はやってみたいと思っていることなのに挑戦しそびれたりするのだそう。

冨山氏の話では、「あの人のことは好きだから仕事がうまくいく。でもこの人は嫌いだから仕事がうまくいかない」などと考えるのは、「認知のゆがみ」によるもの。認知のゆがみとは、レッテル貼りや拡大解釈などによって誇張された思考に陥り、ネガティブな感情が強くなってしまうことを指します。この状態に陥ると、仕事に対して誤った姿勢で臨んだり、間違った判断をしてしまったりするそうです。

たとえば、こんな例が考えられます。

仕事で、嫌いな人Fと同じプロジェクトチームになった。そのプロジェクト自体にはとてもやりがいを感じるのに、Fがいるためにいまいちやる気が出ない。上司から、プレゼン資料の作成を自分とFの2人に任されたが、Fと一緒にやると思うと気乗りがしない。自分はあまり資料の作成には関わらないようにしよう……。

嫌いな人がいるせいでやる気が出ないのは、まさしく認知のゆがみによるものです。たとえ上司からプロジェクトでの活躍を期待されていたとしても、こんな考え方をしていては、せっかくの活躍のチャンスをものにできないでしょう。それに、嫌いな人とも実際に一緒に仕事をしてみれば、意外にうまく連携できるかもしれませんよね。嫌いだからと避けていたら、そのきっかけすらもつかむことができません。

人を好き嫌いで判別し、嫌いな人に対して必要以上にストレスを感じていると、成果をあげるチャンスも、良き仕事仲間と出会うチャンスも失ってしまうのです。

嫌いな人にストレスを感じなくなる方法04

「好きor嫌い」の極端な思考を改善するにはこうすべき!

人のことを好きか嫌いかだけで区別してしまう人は、嫌いな人に対する考え方や接し方を変えたほうが良いでしょう。なぜなら、嫌いな人に対する否定的な感情を軽減することが、すなわち、二極化思考の改善につながるから。そうすれば、前述したような弊害が生じるのを防ぐことができるのです。そのための方法を2つ紹介します。

方法1「嫌いな人と自分の共通点を見つける」

心理学者の内藤誼人氏の解説によると、アメリカの心理学者マイケル・カニンガム氏が、人の好き嫌いは食物のアレルギー反応と同じであると指摘したそうです。相手を嫌う感情が限界に達してアレルギー反応が完全に構成されてしまうと、その人を嫌う感情に歯止めが効かなくなり、その人にいくら良いところがあってもストレスの元でしかなくなってしまうのです。

内藤氏いわく、アレルギー反応が起きてしまう前に、嫌いな人を好きになる努力をする必要があるとのこと。その方法は、嫌いな相手に関心を持ち、あえてこちらから接していくというものです。

相手の良いところや自分との共通点を探し、できればそれを声に出して相手に伝えましょう。たとえば「僕は洋楽が好きなんだけど、君も好きって本当?」といった具合です。こうすると、相手もこちらにシンパシーを感じてくれるので、お互いに好意的に接することができるようになるのだそう。

また、嫌いな人と一緒に昼食を食べたり飲み会に行ったりして、接する機会を単純に増やすことも有効だとのこと。それによって、嫌いな人に慣れることができるからです。これは、心理学で「コンタクト仮説」と呼ばれるもの。自分が偏見や差別の対象としている相手とでも、コンタクト(接触)を重ねれば、それらのネガティブな感情が軽減されます。

嫌いだからといって避けるより、あえて近づくほうが良いのですね。

嫌いな人にストレスを感じなくなる方法05

方法2「嫌いな人の言葉を『受け止めて、流す』」

嫌いな人とコミュニケーションを取ろうとすると、どうしてもイラッとしてしまうことがありますよね。そんなときは、相手の嫌な言動を「受け止めてから流す」と良いでしょう。

これは、ビジネス作家・エッセイスト・講演家の臼井由妃氏によるアドバイスです。臼井氏の話では、相手の言動に嫌だと感じるところがあっても、「こういう人もいるんだな、学ばせてもらおう」という意識で受け入れれれば、自分の受けるダメージが軽くなるのだそう。相手のことを「嫌いだ」と真っ向から否定してないがしろにしないほうが良いのです。

たとえば、自分が定時で帰ろうとしたときに、嫌いな同僚から「少しは残業したら? いつも定時で帰ってるよね?」と言われても、イラっとしてぶっきらぼうに「いや、帰るよ」などと言ってはいけません。責任感のある人なんだな、と相手の価値観を受けとめてから、気さくな口調で「ごめん! 今日は厳しいんだ。お疲れ!」と返事をして流しましょう。

相手の発言を真っ向から跳ね返すのではなく、理解を示したうえで丁寧に返事をするのです。感情的にならず、相手の考えを受け入れるようにすれば、自分の価値観と異なる他人の言葉に毎回腹を立てなくて済むようになります。相手に悪い印象を与えることもなくなるので、より平和的にコミュニケーションをとれるようになるでしょう。

***
どんなに「嫌い」な相手にも、自分との共通点や、良いと思える部分があるはずです。それを知ろうともせず「100%嫌いだ」と決めつけてしまうと、自分がストレスに悩まされることになりますし、周囲にも悪影響を与えてしまいます。

気持ちを新たに、苦手な人と今一度コミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。

(参考)
All About|「良いか、悪いか」の二極化思考でストレスをためる人
ダイヤモンド・オンライン|人を「敵」「味方」に分けて判別する輩は職場を殺す
東洋経済オンライン|「感情に振り回される人」の残念すぎる考え方 自分を認められないのに相手は動かせない
Wikipedia|認知の歪み
プレジデントオンライン|嫌な人が好きになる練習
小川修平(2010), 「多文化教育実践モデルの社会心理学的分析ーエリン・グルーウェルによる人種間対立を改善する授業実践を事例としてー」, 多言語多文化 : 実践と研究, Vol.3, No.3, pp.103-124.
NIKKEI STYLE|「嫌いな人」との接し方 期待を捨てれば腹も立たない

【ライタープロフィール】
武山和正
Webライター。大学ではメディアについて幅広く学び、その後フリーのWebライターとして活動を開始。現在は個人でもブログを執筆・運営するなど日々多くの記事を執筆している。BUMP OF CHICKENとすみっコぐらしが大好き。

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