カネ・モノ・地位で得た幸せは長続きしない。本当の幸せをつかむには “この4つ” が重要だ

幸福学・前野隆司さんインタビュー「幸せを決める4つの因子」01

みなさんは幸せになりたいですか?

おそらく、「ノー」と答える人はいないでしょう。この世に生まれてきた以上、誰だって幸せになりたいものです。では、どうすれば幸せになれるのでしょうか?

「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司(まえの・たかし)先生は、幸せの4つの因子」に注目することが大切だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「よい心の状態」がもたらす、長続きする幸せ

「幸せ」とひと言で言っても、じつは大きくふたつに分けることができます。ひとつは「長続きしない幸せ」で、もうひとつはその反対の「長続きする幸せ」です。

長続きしない幸せをもたらすのは「お金、モノ、地位」といったもの。これらには「他人と比較できる」という共通点があります。

たとえば、ある人が係長から課長に昇進したとしましょう。その直後には幸せを感じられます。でも、1年後にも「課長になった!」と喜び続けているような人はいません。しかも、周囲には部長もいれば社長もいて、上を見ればきりがない。そうして他人と比較してしまうと、当初は感じられていた幸せを感じることができなくなるのです。

一方の、長続きする幸せをもたらすのは、「よい心と体の状態」です。その心の状態に着目してみると、幸せをもたらしてくれる心の状態というのは、数え切れないほどあります。それらを因子分析という手法で整理すると、大きく4つに分けることができました。それが、私が提唱する「幸せの4つの因子」です。

幸福学・前野隆司さんインタビュー「幸せを決める4つの因子」02

仕事に対する意識を変えるだけでも幸せを感じられる

それぞれについて解説してみましょう。

まずは「やってみよう」因子から。これは、「自己実現と成長」の因子です。夢を思い描き、その達成のために自ら「やってみよう!」と努力を続ける人と、何をやるにも「やらされ感」を覚える人を比べると、どちらが幸せかは明白ですよね。

そうは言っても、仕事であれば、やりたくなくてもやらなければいけないこともあるでしょう。でも、「やってみよう」と思えるための努力をしているでしょうか? 仕事内容に不満があれば改善案を提案する、あるいは転職が盛んないまなら勤務先を変えるのもひとつの手です。

また、仕事に対する意識を変えることもできます。「3人のレンガ職人」というイソップ寓話をご存じですか? ある人が旅の途中に、レンガを積んでいる3人の職人に出会いました。旅人が「何をしているのか?」と3人に聞いたところ、「レンガを積んでいるんだ。暑いし大変だし、こりごりだよ」「壁をつくっているんだ。大変だけど金はいいからね」「後世に残る大聖堂をつくっているんだ。こんな仕事ができて光栄だよ」と、同じ作業をしているにもかかわらず、3人の答えはまったく違った。

この中で一番幸せな人は、もちろん「大聖堂をつくっている」と答えた職人です。やらなければならない仕事をただの作業ととらえるのか、その先に目を向けて喜びを見出すのか。同じ仕事をするにも、得られる幸福度は大きく変わってきます

幸福学・前野隆司さんインタビュー「幸せを決める4つの因子」03

苦手な人は変えられなくても、自分の気持ちは変えられる

ふたつ目は「ありがとう」因子。これは、「つながりと感謝」の因子です。誰もがわかることかと思いますが、孤独であることは不幸なのです。人間は、多様な周囲の人とつながりを持つことで幸せを感じる生き物です。そして、周囲の人と強いつながりを持つために必要となるのが、感謝の心――

もちろん、仕事で関わる人の中には、馬が合わない人もいるでしょう。悪口や愚痴のひとつも言いたくなるもの。でも、その気持ちもしっかりコントロールするべきです。相手を変えるのは大変ですが、自分の気持ちなら変えることができる。また、馬が合わない人にだって、いいところも必ずありますよね。そう考えて、感謝の気持ちを持って、周囲の人のいいところに目を向けるのです。その姿勢が、自分を幸せに導いてくれます。

3つ目は「なんとかなる」因子。これは、「前向きと楽観」の因子です。ポジティブで楽観的に「なんとかなる!」と思える人と、いつもネガティブで悲観的な人では、どちらが幸せを感じられるかは言うまでもありません。

しかしながら、ビジネスマンには慎重さも求められます。「なんとかなる!」という気持ちだけで無謀なチャレンジをするのは危険です。でも、石橋を叩いて充分に準備をしたうえで、「よし、行こう!」と最終的には橋を渡る人が成功をつかみ、まったくチャレンジをしない人よりも幸せを感じられるようになるのです。

幸福学・前野隆司さんインタビュー「幸せを決める4つの因子」04

他人にはない独自の強みが力を発揮する「個性の時代」

最後は「ありのままに」因子。「独立と自分らしさ」の因子です。最初にお伝えしたように、お金やモノ、地位など、他人と比較するもので感じられる幸せは長続きしません。つまり、他人と自分を比較することなく、自分らしさを追求して磨いていくことが幸せにつながるのです。

世間で成功者と言われる人は、成功までの過程において、「あいつより成功したい!」というふうに誰かと自分を比較していたと思いますか? おそらく、ほとんどの成功者は、ただ自分の好きなこと、やりたいことに熱中しているうちに、気づいたら成功していたのではないでしょうか。

いまは、それこそ個性の時代だと私は考えています。ただ大企業に勤めていれば安心できるという時代はとっくに終わりました。いま、そしてこれからは、他人が持たない独自の強みが力を発揮する。そう考えて、自分らしさを追求することが大切です。

それは、「幸せの4つの因子」を伸ばすときにも言えることです。4つ全部を同じように伸ばしていくのは難しいでしょう。たとえば、いくら「つながりと感謝」が大切だと言っても、人付き合いが苦手な人もいます。でも、その人は、もともと別の因子が強いということだってある。まずは、もともと強い因子をより伸ばしていく。そうして、その因子によって幸せや成功をつかむことができたなら、自然に人も集まってきて、「つながりと感謝」の因子も伸びることになるのです。

「4つの因子を同時に伸ばさなければならない!」というふうに考えてしまうと、それこそ不幸になってしまいます。自分が伸ばしやすい因子を伸ばしていけば、それが引き金となって、最終的にすべての因子を伸ばすことができるはずです。

幸福学・前野隆司さんインタビュー「幸せを決める4つの因子」05

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【プロフィール】
前野隆司(まえの・たかし)
1962年1月19日生まれ、山口県出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)教授。1984年、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年、東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。同年、キヤノン株式会社に入社。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、幸福学をはじめ、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学、脳科学、心の哲学、倫理学、地域活性化、イノベーション教育学、創造学と幅広い。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間に関わる研究ならなんでもする」というスタンスで、さまざまな研究・教育活動を行っている。『感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方』(講談社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから 広大な潜在能力の世界にアクセスする“フロー”への入り口』(ワニブックス)、『ニコイチ幸福学 研究者夫妻がきわめた最善のパートナーシップ学』(CCCメディアハウス)、『AIが人類を支配する日』(マキノ出版)、『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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