新しいことにチャレンジするとき、「失敗するかもしれない」「やり遂げる自信がない」と不安になって踏み出すことができない……。誰かと仲良くなりたいと思っても、「嫌われるかもしれない」「話しかける自信がない」と行動に移せない……。
このように、どうしても自信が持てず不安を抱えている人は、少なくないのではないでしょうか。
今回は、「自信のなさを克服する方法」をご紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
自信がないのは「あなたが価値の低い人間だから」ではありません
自信が持てない人は、自分のことを「情けない」「ダメな人間だ」などとネガティブにとらえているかもしれませんね。しかし、「自信のなさ」というのは誰しも持ちうるものなので、悲観する必要はありません。
イングランド・プレミアリーグのサッカー選手や、大企業のコーチングを請け負い、著書『どんなときも絶対折れない自分になる 自信の秘密50』の筆者であるリチャード・ニュージェント氏によると、社会的な成功を収めて自信があるように見える人たちも、「自分には自信が足りない」と考えているのだそう。世の中の多くの人が、自信不足に悩んでいるのです。
リチャード・ニュージェント氏は著書の中で、脳の構造上、人間が抱くほとんどの感情は、20秒〜2分の間くらいしか持続しないと説明しています。自信というのは、感情の「状態」のことを指し、「自信がある」という状態も、せいぜい2分以下しか持続しないのだとか。
つまり、自信とは、いわば気分の問題。どこかから手に入れられるようなものではなく、自分の心の中にあるものだと言えます。「自信がない」と思ってしまうのは、「自分は何もできない」「自分には価値がない」などと思うから、もしくは周囲からそう思われていると感じてしまうからです。しかし、このような感情は、上記でも述べた通り、社会的に成功している人でさえ抱いてしまうもの。したがって、自信がないのは、自分の価値が低いせいではなく、単に「心の状態や考え方が引き起こしているせい」と考えられるでしょう。
自分の考えを大切にした行動を心がける
前述した通り、自信には心の状態が影響しています。自信を持つことができない人は、まず、自分を大切にする習慣を身につける必要があります。いつも誰かの意見に従い、自分の考えを封じ込めてしまう人は、「自分を大切にしていない人」と言えるかもしれません。
このように、自分の思いよりも社会のルールや目上の人に従う傾向のある人は、脳科学者の中野信子氏によると「新奇探索性」が弱いと言われるそう。「新奇探索性」とは、新しいものごとを知る喜びを指します。
たとえば、新奇探索性が強い人は、新しい店がオープンしたらすぐに行って買い物してみたくなり、新奇探索性が弱い人は、いつもの店で、いつもと同じものを買いたいと考えるのだとか。
中野氏によると、これらの性質は遺伝子で決まっているため、性質は変えられないそう。しかし、自らの意志で「行動」を変えることは可能だと言います。
自分は新奇探索性が弱いと自覚している人は、意識的に新しいことにチャレンジしてみるのがおすすめ。たとえば、いつも同じ店でランチをしている方は、「今日は思い切って、新しくできたあの店に行ってみよう」など自分にとって少しだけハードルが高いことを、行動に移してみてはいかがでしょう。このように、少しずつ行動を積み重ねることによって、自分の気持ちを大切にして生きられるようになっていくでしょう。
今すぐ自信を持ちたいときの対処法
「今日は大事な発表があるのに、どうしても自信が持てず、うまくいく気がしない」
こんなときには、「今すぐに自信を持ちたい」と思うかもしれませんね。このような場合に即席で自信を持つ方法をご紹介しましょう。
社会心理学者のエイミー・カディ氏は、被験者らに、腰に手を当てて仁王立ちをしたり、威張ったように背中を仰け反らしたりといった「力強いポーズ」、もしくは、背を丸めたり、縮こまったりといった「弱いポーズ」を2分間とらせたのちに、ギャンブルをさせました。すると、強いポーズをとったほうの被験者は、自信を持ち、リスクのある行動もとるようになったのだとか。
被験者を検査したところ、力強いポーズをとった被験者はテストステロン(筋肉増大などに関わる男性ホルモン)が増加し、弱いポーズをとった被験者はコルチゾール(ストレスによって分泌が促進されるホルモン)が増加していたのだそう。
「自信に満ちたボディランゲージによって他人から強力に見られる」というのは一般的に知られていますが、上記の実験から、ポーズをとるだけで実際にホルモンに変化がもたらされ、自信を抱いたり、ストレスを抱えたりするということがわかりました。
つまり、ストレスやプレッシャーがある状況下でも、姿勢を正して背中を反らせたり、両手を広げたりするポーズをとることで、自信を持てるのです。大事な発表や、試験などに挑む際は、事前にトイレの個室などで、強いポーズをとってみてはいかがでしょう。自信がついて、リラックスして臨めるかもしれませんよ。
長期的に自信をつけていく方法
心理学者で性格診断のエキスパートであるトマス・チャモロ=プリミュージック博士は、「私たちが思うほど、自信は必要ない」と述べています。博士によると、自信のなさこそ高い成果をもたらす動機になるのだとか。これまで自信のつけ方について述べてきましたが、逆に自信がないのは悪いことではないと認識することも、前に進むためのポイントとなるでしょう。
プリミュージック博士によると、自信とは「自分がいかに賢いと思うか」であり、能力がないのに自信だけあっても意味がないとのこと。自信のある状態は、気分が良いかもしれませんが、自分の持っている実力の程度を知り、足りない部分を努力で補って成果を上げることこそ、私たちの目指すべきところなのではないでしょうか。自信を持てない自分を悲観するのではなく、自分に足りない部分を冷静に分析して、実力をつけていくほうが建設的でしょう。実力をつけることによって、結果的に根拠のある自信もついてきます。
世界をリードする舞台俳優や、アスリートやビジネスリーダーの指導を行なっているボイスコーチ兼リーダーシップコーチのパッツィ・ローデンバーグ氏は、自分がなぜ自信を持てないかわからない場合は、「肉体面」「知性面」「感情面」「精神面」の4つのカテゴリーを使って考えることを推奨しています。自分がいま、どの領域で自信をつける必要があるのか探るのです。
たとえば、精神面を伸ばしたい場合は本を読んだり、ヨガのクラスを受けたりすることで、成長するかもしれません。
あるいは、感情面で満たされていない場合は、身近な人に相談をしたり、カウンセリングを受けたりするのも、ひとつの方法です。
語学力をつけたい場合は、語学学校に通うことで知性面を伸ばし、自分の体型に不満があるのであれば、パーソナルトレーニングに通い肉体面に変化をもたらすのが良いかもしれません。
このように、自分に足りていないものを冷静に分析することで、自信のなさを解消する具体的な方法が浮かんでくるでしょう。
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「自信」という形のないものにとらわれすぎていると、大事な局面で実力を発揮できなかったり、チャレンジする前に足踏みしてしまったりと、さまざまなデメリットを被ってしまうかもしれません。「自信」の実態を把握して、不安な気持ちをコントロールし、「実力」という裏付けのある自信を身につけることをオススメします。
(参考)
TED|ボディランゲージが人を作る
リチャード・ニュージェント(2016), 『どんなときも絶対折れない自分になる 自信の秘密50』, CCCメディアハウス.
中野信子(2019),『自己肯定感が高まる脳の使い方』, セブン&アイ出版.
中野信子(2016),『幸せをつかむ脳の使い方』, KKベストセラーズ.
中野眞由美(2019),『REAL CONFIDENCE 自信がつく本』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。