かつて、クロスワードパズルや数独などの認知トレーニング(脳トレ)が、記憶力や思考力の改善に役立つと考えられ、一世を風靡(ふうび)したことがありましたね。しかし2018年には一転、脳トレには記憶力・思考力を改善する効果がないという研究が発表されました。
ところが、 2019年5月に再び、「脳トレは脳機能を高める」と発表されることに。脳トレに関する最新研究の詳細と、脳トレの効果、クロスワードパズルや数独以外にもまだまだある脳トレを紹介します。
「脳トレは知力低下に効果 “なし”」(2018)の根拠
イギリスの医学誌『BMJ』に公開された研究(2018年12月10日)は、「クロスワードや数独(ナンバープレース)を解いても知力低下は防げない」と示唆しました。イギリス・グランピアン州国民保健サービス(NHS)およびスコットランド・アバディーン大学などによる、子どものころ知能テストを受けた498人を対象に、およそ64歳から15年間、5回にわたって記憶力と処理能力のテストを行なった研究の結果だそう。ただし、知的な活動を繰り返している人は、年齢を重ねてもある程度は知力が活発であることもわかったそうです。
「脳トレは知力低下に効果 “あり”」(2019)の根拠
そして、前出の研究で示された内容を覆す調査結果が、老年精神医学の学術誌『International Journal of Geriatric Psychiatry』で2019年5月16日に発表されました。イギリスのエクセター大学およびキングス・カレッジ・ロンドンの調査によると、クロスワードパズルや数独などを定期的に行なっている50歳以上の人は、よりシャープな脳を持っているとのことです。
研究者らは19,000人を超える参加者に対し、どのくらいの頻度で言葉と数字のパズルを行なっているかをたずね、認知テストを実施しました。テストの結果、パズルに定期的に取り組んでいる人ほど、注意力・推論力・記憶力を評価するタスクが優れていたのだそう。取り組んでいない人に比べ、平均して8歳若い脳機能を持っているとのことでした。
研究を率いたエクセター大学医学部のAnne Corbett博士は、「単語と数字のパズルで遊ぶ習慣が必ずしも認知症のリスクを減らすとは言えないが、今回の研究は、これらのパズルが脳機能維持を助けると示した過去の発見を裏づけている」と説明しています。
脳トレの効果
サプリメントの企画・開発などを手がける株式会社わかさ生活が運営する情報サイト「あたまナビ」によると、脳トレに期待できる主な効果は、子どもの能力向上、脳の老化予防、認知症予防、認知症の方の能力維持。つまり、脳トレは生涯にわたって役立つわけです。
加齢と脳との関係を研究する東北大学の瀧靖之教授によると、人間の高次認知機能は20代後半をピークに低下するとはいえ、あくまでも「何もしなければ」の話だそう。脳のトレーニングを行えば、学習能力は再び上がりはじめるのだとか。
ただし、脳トレは楽しくなければストレスになり、効果を損ねてしまいます。前向きな研究結果が示されたことですし、自分が楽しめる脳トレを見つけて取り組んでみてはいかがでしょう。
脳トレの種類
「あたまナビ」編集部は、クロスワードパズルと数独のほかにも、さまざまな種類の脳トレをおすすめしています。
- 簡単な計算
- 隙間しりとり
- 間違い探し
- 音読
- 塗り絵
- 折り紙を折る
- 利き手と逆の手を使う
簡単な計算とは、「3+5」などや「14-6」のように小学校低学年で習う足し算や引き算のこと。「簡単な計算では計算機やアプリケーションを使わないようにしよう」と意識するだけで充分です。
隙間しりとりは、言葉と言葉の間に入る言葉を考えていく“しりとり”です。たとえば「たまご」と「オムレツ」の間なら、「ゴマ→マヨネーズ→ズッキーニ→握りずし→しお」が入ります。通勤通学中の車内でも1人で遊べますね。
間違い探しは、一見同じ2つの絵の、違う部分を見つけるゲーム。クロスワードパズルや数独と同様に、新聞の日曜版や雑誌に載っているはずです。
瀧靖之教授いわく、「好奇心」こそ脳トレの効果を引き出す一番の秘けつ。ほかに興味がわく趣味や遊びがあれば、迷わずお楽しみください。
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脳トレあるいは趣味を楽しんで、グーンと脳の健康寿命を延ばしましょう! 脳の活性化については「脳が活性化する方法とは? 食べ物・運動・ゲームを活用しよう!」で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
(参考)
The BMJ|Intellectual engagement and cognitive ability in later life (the “use it or lose it” conjecture): longitudinal, prospective study
BBCニュース|脳トレは知力低下に効果なし? 英研究
University of Exeter|Featured news - Regular crosswords and number puzzles linked to sharper brain in later life
あたまナビ|脳トレはこれがオススメ!脳の活性化につながる脳トレ 9選
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