「きっと失敗するだろうな……」
「どうせうまくいかないだろう……」
このように、何事に対しても自信がなくネガティブに考えがちな人は多いのではないでしょうか。いつも悲観的でいては、実際の行動にも差し障りが出てしまうもの。ネガティブ思考に苛まれてなかなか行動に移せないようでは、成功も遠ざかってしまいますよね。
そこで今回は、「自分はできる!」というポジティブな意識をつくるための具体的メソッドを3つご紹介します。
ネガティブ思考は負の連鎖を生む
そもそも、冒頭で述べたようなネガティブな意識が生じる原因は何なのでしょうか。メンタルトレーナーの西田一見氏は、その原因として“過去の経験” を指摘します。
西田氏いわく、人間の脳は “感情を伴った記憶” を特に長期間保持する傾向にあるのだそう。たとえば小学生の頃に、算数のテストが悪くて親にこっぴどく叱られ、「すごく悲しかった」と感じたとします。すると、その体験が「算数は嫌いだ(苦手だ)」という記憶となって脳に残り続けるのだとか。結果、大人になっても算数に対する苦手意識が残ったままになってしまうのです。
そして、こういったネガティブな意識に苛まれ続けることの弊害として挙げられるのが「自己肯定感」の低下です。
自己肯定感とは、良いところも悪いところも含めて自分自身を価値ある存在として認められること。しかし、心理カウンセラーの中島輝氏によれば、自己肯定感が低くなると、自分と他人とを比較しての劣等感が生まれたり、「できない」という思い込みによるやる気の低下が起こったりしやすくなるのだそう。まさに、苦手意識が自己肯定感を下げ、それがさらなる苦手意識を生んでいる状態ですね。
「できない……」を「できる!」に変えるには、何をすればいいのでしょうか?
1.「アプローチシート」で “できる自分” を具体的にイメージする
前出の西田氏がポイントとして挙げているのは、ワクワクするような将来のイメージを考えて自分の脳を「だます」ことです。
「勉強=嫌い・苦手」と条件づけされているなら、「勉強=好き・楽しい」という感情を伴った記憶に塗り替えればいいわけです。
(引用元:東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴 ※太字は筆者が施した)
たとえば、難関資格に合格したい場合、必ず必死で勉強する必要がありますよね。このとき「周囲から『資格を取れ』と強要されたから」といった消極的な理由で勉強すると、勉強に対するネガティブなイメージは拭い取れません。
しかし「資格を取って大幅にキャリアアップした自分」など前向きな未来を想像できれば、勉強は “ワクワクする未来に近づけてくれる楽しい作業” に変わります。結果、脳も勉強を「好き・楽しい」と思い込んでくれるようになると、西田氏は解説します。
このとき、イメージをもっと具体化するためには「紙に書く」のがいいのだとか。西田氏はこれを「アプローチシート」と呼んでいます。目標達成という頂上に向けて山を登っていく自分の姿を想像しながら、以下の質問に対する答えを順番に書いていきます。前向きなイメージを重ねていき、消極的な思考をポジティブに変えていきましょう!
- スタート地点では、自分が目標を達成したときの状態を想像します。自分の気持ちや周囲の反応を予想してみましょう。
・社内で出世して、自分が発案したプロジェクトを実行するぞ!
・家族や知人は、自分の様子を見て尊敬のまなざしを向けてくれるだろう - 山を登り始めます。目標を達成したい理由を考えてみましょう。
・このプロジェクトを実現することは入社当時からの夢だった。
・プロジェクトが開始されれば地域活性化に貢献できる。 - 誰と山を登っているのでしょうか。自分の目的達成を応援してくれる人や、その人がどんな言葉をかけてくれるかを想像してみましょう。
・会社の同僚や家族
・「君ならできる」「諦めなければ夢は必ず実現するよ」 - 山を登っている最中に困難に陥ったとき、自分はどんな表情をしているでしょうか。そして、その困難を克服するためにどんなアクションを起こすでしょうか。
・うつむいて視線を落とし、口を結んでいる。
・絶対にネガティブな言葉を吐かない。 - 頂上まであと少しですが、そこには絶壁(最大の問題)がそびえ立っています。このとき、誰とどんな声をかけ合うでしょうか。
・会社で最も仲のいい同僚A君
・「ここさえ乗り越えれば幸せな未来が待っている」
2. 普段から「ポジティブな言葉」を使う
普段使う言葉に気を配ることも、意識を変えるコツになります。前出の中島氏によれば、普段から肯定的な言葉を使っていると自己肯定感が高まるのだそう。その実例として、中島氏は「声かけの実験」を紹介しています。
小さな子どもに対して、水が入ったコップをテーブルまで運ぶようにお願いするとします。その際、「絶対にこぼしちゃダメだよ」と失敗を想像させるような言葉を投げかけるよりも、「しっかり持てばいいんだよ」と成功をイメージさせるような言葉を投げかけたほうが、きちんと運べる確率が高くなるのだとか。人間の心理や行動は言葉の影響を多分に受けるのです。
そして、これは自分に対しても当てはまります。上司から大事な営業の仕事を任せられたとき、「どうせ失敗してしまう……」と否定的に考えた場合と、「よし、本気で取り組んで成約を取りつけるぞ!」と肯定的に考えた場合とでは、後者のほうが成功に近づけそうなことは容易に想像ができますよね。
中島氏は、書籍『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』において、以下のような “否定語→肯定語の変換” を紹介しています。ついネガティブなことを言いそうになったら、それを前向きな言葉に変換する癖をつけてみましょう。
嫌だ→〇〇だとうれしいな
どうせダメだ→きっとうまくいく
もうダメだ→なんとかなる
緊張するなよ→いつも通りでいいよ
3.「できたことノート」で小さな成功体験を積み上げる
嫌なことに遭遇すると、そればかりに頭を支配されてしまいますよね。でも、仕事がうまくいかなかった日にだって、上司に怒られてしまった日にだって、「よかったこと」や「うまくいったこと」はあるはず。自己肯定感を高めて「自分はできる!」という思いを生み出すには、こういった成功体験に意識を向けてみることもまた大切です。
そこでご紹介したいのが、行動科学専門家の永谷研一氏がすすめる「できたことノート」。これは文字通り、その日「できたこと」や「よかったこと」をノートに3つ書き出すという手法です。
書く内容はどんなに些細なことでも可。「今まで任せてもらえなかった仕事を上司から初めて頼まれた」「営業時に大きな声で挨拶をしたら先方が喜び、その後の商談が弾んだ」「電車で妊婦さんに席を譲ったら『ありがとう』といわれた」といったものでもかまいません。
大事なのは、できたことに着目すること。すると、『もっとできることはない?』と前向きになり、成長につながる行動ができます
(引用元:日経doors|「できたことノート」を始めよう)
実際に「できたことノート(成功記録)」をつけてみたライターも、以下のように感じたと書いています。
・成功記録は「自分の価値を認めてくれる証人」「自分の成果を目撃している証人」である
(『就寝前に「成功記録」を書くメリットがすごい。失敗だけじゃなく成功にも目を向けるべき本当の理由。』より)
嫌なことばかりでなく、ぜひ自分の成功体験に注目する癖をつけましょう。それが少しずつ自信を生み出し、前向きな考え方へと導いてくれるのです。
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いつまでもネガティブでいては何も生まれません。3つの方法で思考をポジティブに転換させ、成功へとつなげていきましょう!
(参考)
THE21オンライン|「自分はできる!」と脳を騙して、資格試験に合格するマインドに
東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴
YouTube|肯定的な言葉を使うと自己肯定感が高まる
中島輝(2019),『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』, SBクリエイティブ.
日経doors|「できたことノート」を始めよう
StudyHacker|就寝前に「成功記録」を書くメリットがすごい。失敗だけじゃなく成功にも目を向けるべき本当の理由。
【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEBで活用することを目標としている。