もしも、あなたが、ビジネス書や自己啓発書をよく読み、成功を手に入れたいと考えているなら、あるいは何かを成し遂げても、まったく自信が持てず不安にさいなまれているのなら、いずれの場合も1日の終わりに書く「成功記録」が役に立ちます。
成功記録のつけ方やメリット、筆者が実践してみて感じたことなどを紹介しましょう。
1. 自分の成功体験を読んだことある?
産業カウンセラーの飯野哲夫氏は、「成功」についてある鋭い指摘をしています。わたしたちビジネスパーソンはおそらく、
- 問題やトラブルの一部始終を報告する「始末書」や「てん末書」の作成
- 二度と問題やトラブルが起きないよう「再発防止策」を講じる
などの経験を持っていたとしても、
という経験をしたことは、ほとんどないのではないでしょうか。また、
- 他者の成功事例、他者のやり方が書かれた「自己啓発書」
- 他者の成功事例、他者のやり方が書かれた「ビジネス書」
などを熱心に読む機会はあっても、
を読む機会はないはず。
もちろん、他者の成功体験や方法を知ることは重要です。しかし、「他者のやり方」よりも、自分の成功体験を通じて得られた「自分のやり方」で行なうほうが簡単な場合もあると、飯野氏は述べます。
自分の成功体験を記録し、パターンをつくっていくことが、成功体験を生むのだそうです。
2. 自分の成功をしっかりと受け止めている?
せっかく成功しても、その成功には価値がないと考える。自分は、能力もないくせに偽りのキャリアで周囲を欺いている “詐欺師” だと感じ、不安にさいなまれている――
そういった考えや感覚を持っているのは、「詐欺師症候群(Impostor syndrome)」に陥っている証拠。インパクトのある呼び名は、1978年に心理学者のポーリン・R・クランス氏と、スザンヌ・A・アイムス氏によって命名されました。
詐欺師症候群とは、何かを達成しても自分の実力とは考えず、ただ運がよかっただけだと思い込んでしまう、異常に自己評価が低い心理状態です。男女どちらにも起こりますが、特に女性のほうが陥りがちなのだとか。
スピーチコンサルティングなど、さまざまな分野で活躍するCarol Kinsey Goman氏は、詐欺師症候群の罠にはまらない方法として、次のことを全て書き出し、記録していくよう勧めています。
- 大小問わず成功したこと
- 自分が誇りに思えたこと
- うまく対応できたこと
- 他者に褒められたこと
記録された自分の成功体験をあとで読み直すことで、自己評価を高めていけるそうですよ。
3.「成功記録」をやってみる
筆者もさっそく、「成功記録」に挑戦してみます!
まずは準備から。筆者の場合は、常備しているセミB5サイズのノートと、グリーンの水性サインペン、ボールペン、定規を用意しました。だいたい100円ショップで購入可能なアイテムです。
成功記録は継続するのが大事。読み返して自分の成長を実感したり、自分のパターンを見つけたりすることで効果が高まるためです。無理なく継続できるよう、自分が続けやすいかたちを模索してみました。
たとえば順天堂大学医学部・小林弘幸教授推奨の、自律神経が整う「3行日記」をまねてみるのもいいでしょう。1日の終わりに3行だけ書く日記です。
StudyHackerでは、下の画像のように、1ページを「1週間ぶんの日記+フリースペース」にして、2週間単位で比較できるようにした「3行日記」を提案しています。
(※詳しくはこちら『自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。』
ただ、今回は「成功記録」なので、目に見えるかたちで「良かったなぁ」と思えるようにしたいと考えました。そのなかで何度か試しに書いてみたところ、こう強く感じたのです。
自分の成功体験に特化して書くのは、意外に難しい!
そこで、あまりプレッシャーを感じないようにしたいと思い、
- すぐ埋まりそうなスペース
- 埋まらなくてもいいと感じるスペース
- 文字や図解、絵なども自由に書けそうなスペース
となるようレイアウトを組み、なおかつ
- 成功体験を容易に実感できる記録
になるよう工夫してみました。結果がこちら!
左上に1週間ぶんの年月日を書き、片ページを8等分にします。罫線を頼りに、上から8行、9行、9行、9行と横に四分割し、上部と下部にあるドットを頼りにして真ん中で縦に二分割します。
片ページは1週間ぶん。最後のマスには、その週の成功を実感できるささやかな仕掛けをつくります。
1週間ぶんの日付をまとめて書く理由は、「1日1回は成功しなければ」とプレッシャーを感じないようにするため。また、「成功」というテーマにもプレッシャーを感じないよう、年月日と分割線は、安心感を与え、心身のバランスを整えるといわれるグリーンのペンで書きます。
では、「成功記録」をつけ始めてみます。
Goman氏によれば、毎日、1日の終わりに全て書き出すといいのだそう。就寝前、リラックスできるよう間接照明にして、思い浮かぶまま自由に書いてみます。少しでも日々の工程を減らしたかったので、曜日は書き入れませんでした。
日曜日から始めたため、ほとんど仕事とは関係ない内容に。
正直なところ、いざ
- 成功したこと
- 誇りに思えたこと
- うまく対応できたこと
- 他者に褒められたこと
を書こうとしたら、ほとんど浮かんでこなかったので、とりあえず「よかったこと」を書き、スペースが余りそうなので料理の段取りを書いてみた次第です。
でも、こだわらず自由に書いたおかげで、「これくらいでいいなら明日も書こう」と思えました。
自分の心にアクセスして、喜ばしいと感じたことを、そのままアウトプットすることが、「成功記録」を習慣化するコツになりそうです。
そして、味気ない成功記録になることを避けるために、映画の評価でもつけるかのごとく、実感した成功度を星マークで表現してみました。
5つ星を最高得点にして、まったく深く考えず気軽につけます。
ポイントは、こちらも癒し効果があるグリーンのペンでつけること。「気づいていないけれど、じつはいつも、何かしら成功はしているんだよ」と、自分に認識させるためのビジュアルであり、「もっと成功しなければ」とせき立てるものではないからです。
1週間、この方法で書いてみました。
そして週の最後、8分割した一番下右の空きスペースに、以下を書き入れます。
- 1週間のトピックス
- OK文字に2重の下線
1週間のトピックスは、ザッと見て目立ったものを簡単にまとめるだけ。こうすることで、「なるほど、そんな週だったのか」と実感できます。
OK文字に2重の下線は、筆者の家族が、新聞についてくる “間違い探し” の間違いを全て見つけると満足げに書く「よし、やった!」の印です。
ささいなことですが、それを書くことによって満足度を高めている様子なので、筆者も採用してみました。想像以上に気分よく、1週間を締めくくってくれますよ。ぜひお試しください。
4.「成功記録」をやってみた感想
最初のほうは少し時間がかかりましたが、1日ぶんの成功記録をつける平均時間は約5分。1週間の終わりは、トピックスを含めて10分程度です。ほとんど負担にはなりません。
今回初めて「成功記録」を1週間続け、最も強く感じたことは次のことでした。
自分はいつも、自分の至らない点ばかりを探している
1日目、成功記録をつけるのは難しいと感じました。
2日目、思わず最初に「今日できなかったこと」を書きそうになってしまいました。
3日目も同じ。
しかし、4日目あたりから、次第に書くことがあふれ出てきたのです。
自分が自分を誇らしいと思うことを、自分自身が無意識のうちに制限していたと、気がついたからでしょう。制限してしまう理由は、おそらく慢心を恐れ、慢心がもたらす失敗を恐れているからです。また、他人のことは褒められても、自分の褒め方はいまひつとつわからないのも、人間の特徴かもしれません。
そこから、5日目、6日目と、無理なく書けるようになり、7日目には「成功記録」が大きな効果をもたらす理由が、少しだけわかりました。
成功記録は、
- 自分の価値を認めてくれる証人
- 自分の成果を目撃している証人
なのです。
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なお、こちらの記事『夜のノート習慣で “4つの悩み” が解決できる。自己肯定感が低い人に「成功ノート」をおすすめするワケ。』には、「成功記録」以外にも、さまざまな問題解決や目的の達成に役立つ、おすすめの記録法をいくつか紹介しています。ぜひ一緒にご覧くださいね!
(参考)
ボトルボイス|あなたがフェアであるならば、自分の成功も記録して記憶しよう
StudyHacker|夜のノート習慣で “4つの悩み” が解決できる。自己肯定感が低い人に「成功ノート」をおすすめするワケ。
StudyHacker|自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。
Forbes JAPAN|女性に多い「インポスター症候群」 3つの克服方法
一般社団法人色彩心理カウンセリング協会|~Green・Blue・Indigo~
日本の人事部|「インポスター症候群」とは?
Wikipedia|インポスター症候群
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